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巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった  作者: ノラクラ
第一部 王国に召喚された魂約者

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30/79

30.白の世界で出会った謎の存在!未確認アルファとは!?

「ここは……どこだ?」


気がつくと、俺は真っ白な空間に立っていた。

上も下も、右も左も――すべてが“白”。

地平も境界も存在せず、ただ光に満たされた静寂の世界。


唯一、自分の足元にだけ“地面らしきもの”があり、そこに映る俺の姿が波紋のように揺れている。

まるで水面の上に立っているようだった。


「うわぁ……真理の扉でも出てきそうな場所だな」


思わずそんな感想が漏れた。

頭の片隅で、どこかの国家錬金術師が遭遇した“白い部屋”が再生される。

……いや、今そんなこと考えてる場合じゃない。


「えっと、もしかして……俺、死んだ?」


率直すぎる感想がそのまま口から出た。

その瞬間――


「カーハッハッハッハッ!!!」


空間全体が震えるほどの高笑いが響き渡った。

反響もないのに、まるで天と地の両方から聞こえてくるような不思議な響きだ。


「なんだよ今度は!?」


声の方を探して見回すが、誰もいない。

ただ“声”だけが、空から降ってくるように響いていた。


「あぁ〜すまんすまん! 突然なにかが現れたかと思い、様子を見ておったのだがな。

 いきなりお前が妙なことを言い出すものだから、つい吹き出してしまったわ!」


低いようで高い、不思議な響きの声。

どこか愉快そうで、けれど圧がある。

まるで“声そのもの”が、この空間を支配しているかのようだ。


「アンタ……誰だよ? どこにいるんだ?」


俺の問いは、距離という概念のないこの空間に吸い込まれていく。

少しの沈黙のあと、声だけが再び響いた。


「ふむ……そっちへ行くのは面倒だ。気にするな。

 それに、久々に懐かしい夢を見ていたところを、お前に起こされたのだぞ?」


どこか拗ねたような言い方だ。

俺だって来たくて来たわけじゃないんだけど。

どうやらこの声の主は、意外と精神年齢が低いらしい。


「……寝てたのかよ」

「当然だ。せっかくの心地よい眠りを邪魔しおって。

 まったく、このまま寝続けて大ごとになれば、我が怒られてしまうではないか!」


“誰に怒られるのか”突っ込みたいが、たぶん聞いても答えてくれないだろう。


「……悪かったな。で、俺がここに来た理由は知ってるか?」

「うむ――知らん!」

「即答かよ!」


思わず全力でツッコむ。


「まあ、放っておいてもそのうち戻れるだろう」

「“そのうち”っていつだよ」


声の主は、まるで時を計るように少し唸ってから、のんびりと答える。


「二日ほどだな。ここと向こうでは時間の流れが大して変わらんようだ。良かったではないか!」

「……いや、それ全然良くないから」


つまり――俺がここで二日過ごす間、現実でも同じだけ時間が経つということらしい。


≪いや、普通にヤバいって。シアたち絶対探しまくってるだろ……≫


そう考えて頭を抱える。

どうにかして早く戻る方法を見つけなきゃいけない。

……とはいえ、手がかりはこの声の主――未確認α(アルファ)に聞くしかなさそうだけど、教えてはくれそうにないんだよなぁ。


「ほう……自分のことより、あの子の心配とは殊勝なやつだ」

「そりゃあ、いろいろ世話になってるしな……」


そう返したところで、ふと違和感に気づく。

……今、こいつ、俺の心の中を読んだ?


「……アンタまさか、心を読めるのか?」


確認するように尋ねると、未確認αの声が少しムッとした。


「質問しかできんのかお前は!? それと“未確認α”とはなんだ!」


理不尽に怒られた件について文句を言ってもよいでしょうか?

いいえ――


「仕方ないだろ、名前がわかんないんだから!」


こういう理不尽には正論をぶつけてやる!


“名前を名乗らないほうが悪い”という俺の心の声が届いたのか、

この未確認αは、しばらく黙りこんでから言った。


「むぅ……ならば“アルファ”と呼ぶことを許してやろう。特別だぞ?」

「発音が変わっただけじゃね?」

「お前たちの言語に変換するのは難しいのだ!」


しぶしぶ言いながらも、やたら誇らしげにそう言ってくる。

とりあえずツッコんでおいたら、案の定また怒られた。


「で、なんでシアのことを知ってるんだ?」


尋ねると、アルファは「ふむ……」と少し考え、間を置いてから――


「暇だから、お前に稽古をつけてやろう!」


突拍子もない提案が飛び出した。


「は……?」


いや、なんでそうなるの!?


≪いやいやいや! 脈絡なさすぎだろ!? ちゃんと答えられないのか、このオヤジは!?≫


心の中で全力ツッコミ。どうやってこの話を修正するか考えていると――


「お前は学ばんのか!? それから誰がオヤジだ! 誰が!」


……あ、やっぱり聞こえてる。


≪これじゃ簡単に文句も言えないじゃないか!≫

「お手軽感覚で言うものではなかろう!?」


完全に漫才状態だ。

しかもこの声の主は「まったくお前ら異世界人と言うヤツはどうしてこうなのだ」とか、ちょいちょい気になる単語を混ぜてくる。


「本当にアルファって何者だよ?」


問いかけても、案の定、返事はない。

ため息をひとつ吐いて、気を取り直して別の質問を投げる。


「それで、どうしても帰してくれないのか?」

「む? なぜそこまで帰りたい?」


「シアたちを心配させてるからだよ。ここがどこかも分からないけど、今ごろ絶対探してると思う」

「お前はアホなのか、それとも鈍いのか。もう察しはついておろうに……」


アルファの呆れ声に、俺はしかめ面になる。


「あぁ~……やっぱりそうか」


明確な答えがない限り信じたくなかったが、多分ここは――


「精神の世界……もしくは、魂の世界ってことか」


そんな言葉を口にしても、アルファは特に反応を示さない。

たぶん、当たらずとも遠からずだろう。


「つまり、俺って二日間眠りっぱなしってこと?」

「さっきからそう言っておろう」

「どうしてこうなった!?」

「どうでもよかろう!」


「いや、どうでもよくないからな!?」と言う魂の叫びは華麗にスルーされてしまった。


「どうせ我も、お前がここに居てはおちおち眠ることができんのだ。

 だから暇つぶしに、お前を鍛えてやる!」


「さっきも言ってたけど、“鍛える”ってどうやってやるんだよ?」


ここが精神世界だと仮定しても、その方法が想像できない。

ちなみに魂の世界と考えないのは、単に怖いからだ。

チキンハート? 臆病は陰キャのデフォルト装備だよ。


「お前は口に出すことを覚えたらどうだ?」

「アルファは、人の心を読まないでくれませんかね?」

「勝手に聞こえてくるのだ、馬鹿者!」


……どうやら意外と世話焼きらしい。

思わず笑ってしまう自分に、少しだけ余裕が戻った。


最初はどうなるか分からず不安だったが、

アルファの言葉が本当なら、どうあっても二日間はこのままなのだろう。

それなら――やるしかない。


「で、俺は結局どうすればいいんだよ?」

「なに、簡単なことよ! お前はまだ“あの子”から流れてきた力――竜力の扱いがなっておらん。

 そのせいで余計なものまで見えておるのだろう?」


なぜそこまで知ってるんだよ、という言葉は飲み込んで頷く。


「なら、ここで竜力の循環を習得すればよい。……見ててやる!」


その声からは「ほれ、早くやれ」と言いたげな空気が漂っている。


「なんかやけに楽しそうじゃないか?」

「当たり前だろう? 未熟なお前が右往左往する姿など、酒の肴にちょうど良いではないか!」

「せ、性格悪ぃなぁ……」


どうやら本当に、暇つぶしのオモチャ扱いらしい。

だが竜力の練習を見てくれるなら、それは俺にとってむしろ好都合だ。


≪……この調子だと、高みの見物で酒でも飲んでそうだな≫


思わずそんな光景が浮かんで、湧き上がる文句をグッと飲み込む。


「ふん! 気持ちよく寝ていたのを起こした罰だ!」

「不可抗力だろ!」

「だから妥協案として“見ていてやる”と言っておるだろう? 安心せい、ヒントはやらん!」

「そこはくれよ!」

「ほれほれ、さっさと始めよ!」

「こ、このヤロォ……!」


俺はアルファに促されるまま、竜力の循環の練習を始めた。


≪循環って……どうやるんだよ。

 ラノベだと“魔力”を血液みたいに体内で巡らせるんだっけ?

 俺の場合は“魔力”じゃなく“竜力”だから……それで合ってるのか?≫


とりあえず試してみるか。

身体の中にある竜力を意識し、身体の隅々へと流れるように――ゆっくりと巡らせていく。


≪まず、自分の竜力を認識して……あ、これか。

 そこからこの竜力を体の隅々まで行き渡らせるように……血液が巡るみたいに――≫


そう思いながら集中していると、突然、別の“声”が響いた。


『【竜力感知Lv1】【竜力循環Lv1】を取得しました』


機械的な声。まるでシステムメッセージみたいだ。

驚いていると、それは続けざまに告げた。


『【竜力感知Lv1】は周囲のエネルギーを吸収。

 【万能感知Lv1】へと進化しました。

 また、魂の回路の損傷を修復――拡張に伴い、ユウト・キリシマの存在進化が進行しました』


……ツッコミどころが多すぎる。


≪いやいや、どういうこと!?≫


思考が止まりかけたそのとき――


「カーハッハッハ! これはあの子の影響か! まったくもって面白い!」


アルファが愉快そうに笑い声をあげる。


「なにやら楽しそうだな……俺にも分かりやすく説明してくれませんかね?」

「ん? 面倒だから断る!」

「いや、そこは教えろよ!」

「それに、別のことをやらねばならんからな!」


「おい待て、それどういう――」


言い終える前に、視界が急激に暗転した。


「まさか……こやつが“あの子”の番とはな。……仕方ない、少しだけ力を貸してやるか」


その呟きは、誰にも聞こえなかった。

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