23.陰キャ勇者の明かされたチートスキル!
友莉はシアとの格差を知って、やけくそ気味にワイングラスの中身を一気に飲み干した。
ちなみに中身は本物のワインではなく普通の葡萄ジュースだ。
≪飲酒なんて普段しないからこの配慮はありがたいよな!≫
奏も少し元気をなくし、ちびちびとジュースを飲んでいる。シアは二人が落ち込んでいる理由が分からず不思議そうだ。
しかし、そんな微妙な空気の中――
「そういえば悠斗のスキル構成ってどうなってるの?」と友莉が軽い調子で切り込んできた。
この空気を換えてくれるのはありがたいけど、≪前置きゼロなのね≫と思いながら俺は疑問に思ったことを口にする。
「あれ、俺のスキル見たんじゃないの?」
「見ようとしたけど、見られなかったのよ……」
「なぜに……?」
俺が首を傾げていると、ふわりと香ばしい匂いが漂ってきた。
振り向くと、いつの間にかシアが料理を盛った皿を軽く浮かせながら歩いてくる。
「とりあえず、料理を食べながらお話ししようよ!」と俺たちに渡してくれた。
「そう言えばまだ食べてなかったわね……」と友莉がいい、俺たちはシアにお礼を言って受け取り一口……。
≪めっちゃ美味い!朝食と違って、立食形式だといろんな料理を少しずつ食べられるのがまたいいな!≫
俺は美味しい料理を食べながら、友莉の質問についてシアに聞いてみた。
「あ、それはね! ユリの【鑑定】だと、ユウトの持ってる【天竜燐】を突破して見ることができないんだよ!」
その一言に友莉がため息をつく。
「なるほどね……シンシアのスキルも全く見られなかったのも納得だわ」
「本当にシンシアちゃんにも鑑定スキル使ってたんだ……」と奏がぽつり。
その瞬間、友莉がぴくりと反応して、バツが悪そうに視線を逸らした。
「か、奏? アタシ、ちゃんと謝ったわよね?」
「うん……分かってるけど、今度からは気を付けてね!」
「大丈夫よ! シンシアにも注意されたし、もうむやみに使ったりしないわ!」
そのやり取りを見ていると、ほんとこの二人は仲良しコンビだよなと思う。
シンシアも同じ感想を持ったのか「仲いいよね、二人とも!」と、楽しそうにする。
「まぁ昔からの付き合いだしね。それで、教えてくれるんでしょ?」
「うん! あ、でも……ユウトはいいかな? 二人に教えても」
シアが急に不安そうな表情になった。瑠璃色の瞳が一瞬だけ揺れる。
俺はその理由がわからなかったが、「ん?友莉と奏になら別にいいんじゃないかな?」と答える。
すると、さらに「んーー……」と少し考え込むシア。
俺は、「何かまずいことでもあるの?」と聞くと、シアは首を振って――
『えっとね……ユウトのスキルってお姉さまに渡された“隠蔽の指輪”で一部隠されているのは覚えてる?』
突然、頭の中にシアの声が響いた――「うわっ!?」と、思わず変な声が出る。。
シアは慌てて「ごめんねユウト!」と言って俺に近づき、小声で話しかけてきた。
「今使ったのは、【思考伝達】って言うスキルでね、考えてることを相手に伝えることができるの!」
「ビ、ビックリしたぁ……」
「えっと、内緒話するのにちょうど良くて……」
「いいよ、大丈夫だから! でも俺、使い方が分からないんだけど……」
「そこは私が調整するから、ユウトは考えるだけで大丈夫!」
そんなやり取りを見ていた友莉が、「アンタたち、イチャつくのは後にしてくれない?」と呆れた表情で文句を言ってきた。
奏は「ゆ、友莉ちゃん!」とたしなめてくれる。
「ゴメンゴメン、ちょっとな……」
そう言いながら、どう誤魔化すか考えているとシアから『ここは私に任せてユウト!』という声が届いた。
「ごめんね二人とも。ユウトのスキルって、私のと似てるところがあるから――説明するの、少し恥ずかしいねって話してたの!」
「えへへ」と照れ笑いを浮かべるシア。
しかし俺の頭の中には、また声が届いていた。
『どこまで話していいかな?』
二人に話している内容とは別の内容に脳がバグりそうになるが、とりあえずシアとの【思考伝達】に集中することにした。
『とりあえず全部話していいと思うけど、シアは?』
『ユウトがいいなら、私もいいよ! それに、私も今のユウトのスキルを見てみたいし!』
『……というと?』
『隠す内容はお姉さまが決めてるから、私も知らないの。竜眼でも見られないんだ』
『え、シアでも?』
『たぶん何の準備もなく覗ける人はいないと思うよ? 方法としては、お姉さまみたいに魔力を通して調べたり、私みたいに魂の繋がりがないと難しいと思う』
だけど、その場合は本来のスキルを見ることしかできないらしい。“隠蔽の指輪”は、あくまでステータスボードや鑑定時の表示内容を隠すためのものみたいだ。
改めて、自分のヤバさを実感する。
なんてったって、こっちは相手の情報を覗けるのに、向こうは覗けない――アドバンテージが大きすぎる。
そうこうしている間も、友莉と奏と楽しく談笑しているシアが「ごめん!脱線しすぎちゃった!」と話題を戻した。
「別にいいわよ。それで内緒話は終わり?」
唐突な友莉の指摘に、俺はビクッとしてしまった。
≪……気づかれてた!?≫
別に悪いことしてるわけじゃないのに、頬を冷たい汗がつっと流れた。
……まるで母親にイタズラを見破られた子供の気分だ。
俺は、シアに視線を向けると「やっぱりユリにはバレちゃうかぁ……」と苦笑いを浮かべていた。
奏は状況についていけず首をかしげ、俺も何でバレたのかが分からない。
そんな俺たち二人にシアが答えてくれる。
「ユリはね……【超感覚】スキルがあるのもそうなんだけど、観察力もすごいんだよ」
「アタシのことを高く評価してくれてありがとうシンシア!」
得意げに胸を張る友莉。
どうやら俺が突然シアに【思考伝達】されて驚いた瞬間、そこで小さな違和感を覚えたらしい。
≪異世界なら【念話】とかあっても不思議じゃないわよね≫――そう考え、確認の意味も込めてブラフをかけてきたんだとか。
女の勘ってやつは、ほんと恐ろしいな……。
≪よし! 友莉を絶対に敵に回すのはやめよう!≫
そう固く誓ったのは言うまでもない。
「ま、まあいいや。とりあえず、俺のスキルを見せればいいんだよな?」
気を取り直し、ステータスボードを開く。
淡い光が浮かび上がり、半透明の板が空中に展開された。
シアの提案で、まずは“隠蔽の指輪あり”の状態から。
――ステータス――
名前:霧島 悠斗
年齢:16歳
性別:男
魔力量:F-
魔力適性:なし
〔通常スキル〕
剣術Lv2 / 射撃Lv3 / 投擲Lv3 / 命中Lv4 / 回避Lv3
〔特殊スキル〕
天竜燐Lv3 / 竜力Lv6 / 竜眼Lv2
〔魂約スキル:シンシア〕
竜力供給 / 思考伝達 / 擬似召喚 / 完全召喚
――。
え?なにこれ……と俺は自分のステータスを見て間抜けな顔をしていることだろう……。
なにせヴェルミナさんにあらかじめ聞いていたからスキルが多いだろうというのは分かっていた。だから自分のステータスは後で確認すればいっかって思っていたんだが……。
「すごいすごい!ユウトってスキルたくさん持ってるんだね!」
「うん!私もスゴイと思う!」
「アンタのこの【射撃】って、ゲームとかが原因なんじゃないの……?」
「言うな……俺だって驚いてる……」
三者三様の反応。
シアは拍手しながらキラキラしてるし、奏は純粋に感心している。
友莉だけがジト目で「陰キャの特技ってやつ?」って顔をしている。
≪やめてくれ……なんか恥ずかしくなってくるから!≫
俺がそんな風に思っていると、シアが笑顔で――
「じゃあ次は“本当のステータス”を見せてほしいな!」
シアの一言で空気が止まる。
……そうだ。これ、まだ“隠蔽版”なんだった。
「……そう言えばこれで全部じゃないんだよね」
「完全に忘れてたわ……」
「俺もだ……」
俺は少し深呼吸してから指輪を外す。
すると、ステータスボードが再び光を放った。
――ステータス――
名前:霧島 悠斗
年齢:16歳
性別:男
魔力量:F-
竜力量:S+
魔力適性:なし
〔通常スキル〕
剣術Lv2 / 射撃Lv3 / 投擲Lv3 / 命中Lv4 / 回避Lv3 / 多重障壁Lv4 / 思考超加速Lv3
〔特殊スキル〕
天竜燐Lv3(属性耐性・状態異常耐性・鉄壁・干渉耐性)
竜力Lv6(属性特効・スキル強化・身体強化・耐性強化・竜装具現化)
竜眼Lv2(遠視・先見・鑑定・看破・魔力視・観察)
竜人化Lv3(全ステータス強化・全スキル強化・竜力強化・超速再生)
超回復Lv2(体力回復速度上昇・竜力回復速度上昇・状態異常回復速度上昇)
覇気Lv2(威圧・恐慌誘発・精神支配)
〔魂約スキル:シンシア〕
竜力供給 / 思考伝達 / 擬似召喚 / 完全召喚
〔継承スキル〕
模倣Lv4
――。
「おお~!」
「……」
シアは目をさらに輝かせ感嘆の声を上げるが、きっと俺たちの目は点になってるだろう……。
そのわずかな沈黙は、友莉が呆れたため息とともに破られ……。
「アンタ、もう魔王でいいんじゃない?」
「よくねぇよ! ……でも正直、俺もそう思ってる」
「す、すごいね……悠斗君……」
いや最初は少し違和感があったんだよ。ヴェルミナさんから聞いてたのと少し違うからさ……
魔力検査前にヴェルミナさんが俺に隠蔽の指輪を渡した意味を初めて実感するのだった。




