11.皇女さまと魂約して貰った能力がヤバすぎた
◆ 竜族特有の力
【天竜燐:3】
「まずはこれじゃな。物理的な攻撃やあらゆる属性への耐性は言うまでもない。さらに呪いを含む状態異常まで高い耐性を誇る。
加えて、鑑定さえ無効化する。妾の竜眼でさえ見抜けなんだのは、このせいじゃ」
「……いや、もう最強の鎧じゃん……」
「横の数字はレベルだと思ってもらって構わん。天竜燐の場合はレベルに応じて枚数が増えるぞ」
「俺の場合三枚も重ね着してるってこと!?」
俺の心の叫びは無視され、ヴェルミナさんの説明は続く。
【竜力】
「竜族に固有の力であり、魔力と身体能力を大幅に底上げするものじゃな。
全属性に対する特攻を持ち、人化しておる状態なら竜爪や竜翼を顕現できる。精神攻撃も通じん。
ブレスも使えるが、これは魔力に竜力を混ぜて放つものじゃな」
「えっと……俺、口からブレスとかちょっと抵抗あるんですけど」
「ならば手から出せばよい。無理に口から吐く必要もなかろう」
え、そんなカスタマイズ可能なの!?
【竜眼:2】
「次は竜眼じゃ。遠視、先見、鑑定、看破、魔力視――これらを一つにまとめた能力よ。
シアと魂約した影響で、通常の竜族では持たぬ観察眼までも備わっておるようじゃ」
「スキルてんこ盛りパッケージってやつですか……」
【竜人化】
「人の姿と竜の姿の中間を取る状態じゃ。竜の力を凝縮してすることですべてのステータスを大幅に上げる。
扱う者によっては竜装と言う武具や鎧にする者もおるな。
ただし未熟なうちは力に呑まれ、暴走する。いわゆるバーサーク状態じゃな。お主の場合は慣れるまで使用を禁ずるぞ」
「……バーサークってゲームでしか聞いたことないんですが」
「案ずるな。修行を重ねれば精神が追いつき、安定するようになる。万が一暴走しても、シアや妾たちが止めてやる」
なんか安心していいのか余計に怖がるべきなのか分からん……。
【超回復:2】
「これは竜族に限らず持つ者はおるが……竜力がある妾たちの場合は普通とは違う。
体力や魔力の回復だけでなく、欠損した部位の再生さえ可能よ」
……もう人間やめてる気しかしない。
「さて、ここまでが竜族特有のものじゃな。それ以外にも――多重障壁、思考超加速、覇気なども備わっておるが、これらは今はいいじゃろ」
「……はい、もうお腹いっぱいです」
俺の内心はキャパオーバーです。誰か助けてください……。
ちなみにエリオスさんはというと、「まあうん、ここまでは予想通りではあるね」と苦笑している。
余裕そうなのが逆に腹立つ。
◆ 魂約による共有スキル
「では次じゃ。魂約によってシアとの繋がりから生まれた力について話そう」
【竜力供給】
「本来の魂約は互いに魔力を循環させるものじゃが……シアが一方的に結んだせいで、今はシアからお主へ一方的に竜力を供給する形になっておる。
言ってしまえば、シアの竜力が尽きぬ限り、お主は無尽蔵に使えるのじゃ」
「それってシアへの負担はどうなんですか?」
「結論から言えば使い過ぎれば負担も出る。しかし、お主は気にせんでよい」
「えっと、どう言う事でしょうか……?」
俺が疑問を口にするが、「また機会があれば話してやるから次にいくぞ」とはぐらかされてしまった。
【思考伝達】
「距離を問わず思念を届けられる。魂の回廊で繋がっておるがゆえの特権じゃな」
「それって俺が考えていることも全部筒抜けってこと?」
ちょっと待って!結構失礼なこと考えてた気がするんだけど……
と言う俺の不安は、「本人が意識せねば出来ぬから安心してよいぞ」と言うヴェルミナさんの言葉で杞憂だったことに安堵した。
【召喚】
「相手の同意があれば、傍らに呼び寄せられるスキルじゃな。召喚方法としては、竜力や魔力で依代を作り意識だけ宿らせる擬似召喚と、本人そのものを呼び出す完全召喚があるぞ」
「これって、つまり……」
「えへへっ! いっぱいお話できるし、いつでもユウトのところに行けるんだよ!」
……俺の心の平穏が死ぬ。
◆ シアと魂約したことで得た固有スキル
【模倣】
「これはシア固有の能力じゃな。見た相手の技や技術を解析して自分のものにできるぞ。
これは観察する時間がが長ければ長いほど精度は増すし、習得も早い。
お主が力を学ぶ際にも、大いに助けとなるじゃろう」
まあ自分が使える範囲でしか効果がないがなと笑うヴェルミナさんだけど、十分にチートですよこれ……
このスキルの保持者であるシアからは、「私の固有スキルがユウトの手助けになるなんて!」と顔を赤くしながら嬉しそうだ。
こう嬉しそうにされると、頑張んないとって思ってしまう俺はチョロいんだろうなぁ……
◆ 魔力適性
「さて、最後に魔力適性の話をしておこうかの」
「そう言えば俺、召喚時に何ももらえなかったんですよね」
「うむ。本来この世界の住人は魔力を持ち、火や氷といった属性適性を宿す。 しかしお主の場合は異例じゃからのう。 なにせ魔力をまったく持たず、純粋な竜力のみが満たされておる」
この世界の住人ではまずありえんことじゃ……
「つまり……どういうことになるんだい姉さん?」
エリオスさんの問いに、俺もシアもごくりと息をのむ。
「妾の推測ではあるが……お主固有の魔力適性、“竜属性”が生まれたと見ておる」
「りゅ、竜属性……?」
まあ妾がさっき付けたのじゃがなとヴェルミナさんは紅茶を飲みながら、頭が混乱している俺にさらなる爆弾を投下する。
「純粋すぎる竜力ゆえに制御は難しい。じゃが、その威力は常の竜族すら凌駕するじゃろう。扱い方を誤らぬよう、肝に銘じておけ」
……あ、どうやら爆弾は俺自身だったらしい。笑えない。
そんな風に落ち込んでいたら、シアが頭をなでながら――
「大丈夫!私がユウトの練習に付き合うから一緒にがんばろ!」
と言ってくれ、俺は「お願いします」と頭を下げる。
すると、バチンと言う音がしたので顔を上げたら額を押さえているシアと、デコピンをしたであろう体制のヴェルミナさんがいた。
どうやら、彼女が下げた俺の頭を抱きしめようとして制裁をもらったらしい……
ヴェルミナさんがデコピンをした指を反対の手で握るとそこから光が漏れだす
これってシアがヴェルミナさんに何かしてたときに見た光だよなぁと思っていると、エリオスさんが「まったく姉さんは……」呆れたようにため息を吐きながらと言う。
しかしヴェルミナさんはそんな俺たちをスルーして話を続けるようだ。
「まとめるとじゃな……お主は既に竜族の力を宿しておる。それを制御できるか否かで、ただの暴れ牛にも、真の勇者にもなれるということじゃ。 妾やシアがおる間なら命を落とすことはあるまいが……慢心はするでないぞ?」
ヴェルミナさんは、まるで師匠が弟子を見るような表情で俺を見つめる。
俺は……もう口を開けてポカーンとするしかなかった。
だってさ、召喚された時点では「まったく力をもらえなかった残念勇者」だったんだぞ?
まあ少しすれば魔法やスキルが使えるらしいから、一般人よりは強くなるとしても……他の勇者より弱いのは確実みたいだし。
そんな俺が――ヒロインに抱き着かれたらあら不思議!
コイの王様が家系図通りに進化したなんて生易しいもんじゃない。
どこをどう間違えたのか、天空竜に進化したようなもんだろ……
これからの俺の異世界生活は、一体どうなっていくんだろう――。
紅茶を口に含みながら、答えの出ない問いを胸の奥で繰り返すしかなかった。




