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巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった  作者: ノラクラ
第一部 王国に召喚された魂約者

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1.帰宅直前に異世界召喚へ巻き込まれる

俺、霧島悠斗は、学校からの帰宅途中に――とんでもなく危険な現場に遭遇してしまった。


「だからテメェには関係ねぇだろ! すっこんでろよ、王子様!」


人通りのない夕暮れの住宅街に怒声が響き渡る。

視線を向けるとそこには「学園の暴君」と恐れられている赤城獅童が、同学年の男子生徒の胸倉をつかんで叫んでいた。

その男子生徒は、赤城と同じくらいかそれ以上の有名人であり真逆の存在が対峙していた。


「そういう訳にはいかない! 奏や友莉を怖がらせて……彼女たちに謝れ!」


彼は誰もが認める才色兼備の王子様系イケメン、天条院義孝。

学園内画にファンクラブなんてものがある人気者で、俺の天敵だ。


「もういいよ、義孝君!」

「そうよ! 誰も怪我してないんだから、これ以上はもめる必要ないわよ!」


その二人を、清楚系美少女として名高い柊奏と、その親友・羽里友莉が止めようとしていた。


夕暮れの住宅街。人通りはなく、響き渡るのはただ激しい口論の声だけ。

俺? もちろん速攻で物陰に身を潜めた。で、ちょっとだけ顔を出して様子をうかがう。


――こういう時に突っ込むのはヒーローか、無謀なバカだけだ。陰キャ代表の俺が混ざる理由なんて、どこにもない。触らぬ神に祟りなし、ってな!


……おいおい、なんだこの顔ぶれ。学園トップスター集合ですか。

よりにもよって俺が知る限り、最悪の組み合わせが近所で大乱闘って……「あぁ~もう勘弁してくれよなぁ~」と、思わずため息が漏れる。


耳を澄ますと、原因はほんの小さなトラブルだった。赤城にぶつかったご老人が倒れたが、彼はフンと一瞥しただけで謝りもせず立ち去ろうとした。そこで柊が真っ向から謝罪を要求。羽里は老人を助け起こして「早く逃げてください」と促したらしく、当の本人はもうこの場にいない。

そして通りかかった天条院が見過ごせず参戦――はい、現在に至ります。


……いやいやいや、こんなドラマみたいな展開が俺の帰宅ルートで繰り広げられてるとか、どういう因果だよ。


「はぁ~……早く終わってどっか行ってくれないかなぁ。こっちはゲームの攻略を進めたいんだよ」


俺は小声でぼやいた。もちろん誰にも聞かれてないはず。いや、聞かれてたら恥ずかしすぎてメンタルブレイク間違いなしだが・・・。


そう、俺は自他ともに認める陰キャ。

陰キャカーストがあったら確実に上位入賞できるレベルだ。

休日にボウリングやカラオケで遊ぶより、家でゲームやマンガを楽しむ方が圧倒的に幸せ。まぁ一応、ボウリングは好きだし、カラオケだってアニソン限定なら高得点を叩き出せる自信はある。


けど――大勢でワイワイする空気が肌に合わない。だから俺は「教室の一番後ろの陰キャ席」を守り抜くモブ人生を貫いている。

まぁその陰キャ席はくじ運に左右されるから守り抜けるかは神のみぞ知るだが・・・


そんな今の俺の楽しみは、昨日買ったばかりの新作ゲーム。

パッケージを破る瞬間のワクワク感。ディスクをセットしロード画面が立ち上がるドキドキ感、コントローラーを握った時の高揚感。俺はただそれを存分に味わいたかっただけなのに……。


「なんでよりによって俺の家の前で修羅場が開幕してんだよ!?」


玄関まであと数メートル。にもかかわらず、俺の帰宅ルートは完全に封鎖状態。

……気づかれずに家に入れる? いやいや、そんなスニーキングスキルあったら女子の着替えを覗きに行ってるわ!


「こっちとら健康な思春期男子なんだぞ!?」

――って、つい声が漏れかけ、慌てて口を押さえる。アホか俺は…。


へたに目立てば今後の学園生活に支障が出かねないし…。

それに何より……赤城にだけは、家を知られるわけにはいかない。


あの男は陰キャを標的にカツアゲやら恐喝を繰り返しているって噂されているし。実際に被害に遭った上級生の話も聞いたことがある。


もし俺がここで顔を覚えられでもしたら……。想像するだけで背筋が凍る。金を巻き上げられるくらいならまだマシだ。殴られる、いや、それ以上のことをされる可能性だってあるよな。


≪……あー、神様。俺は別に贅沢なんて言わない。友達百人とか彼女が欲しいとか、そんなの望んでないんだよ。ただ、平和にゲームさせてください。それだけでいいんです≫


心の中で神頼み。しかし返事なんてあるわけもない。むしろこの状況そのものが、神様のイタズラにしか思えない。楽しいですか?俺はもう泣きたいです……


ちらりと顔を覗かせると、赤城と天条院の言い争いはますますヒートアップしていた。そんな二人を柊と羽里は必死になだめようとしているが、まあ効果は薄い。

……こりゃ長引きそうだな。


ていうか天条院よ・・・お前が引けばそれで終わるんじゃないの?

被害者のご老人はもう居ないし、柊も羽里もなだめるのに必死だし

赤城に関してはすっこんでろってさっき言ってたし・・・

俺は早くゲームライフを満喫したいんだよ・・・。



そんなことを脳内討論していたら、とうとう殴り合いに発展しかけ。赤城の拳が宙を切る寸前――空気が急に変わったのだ。


夕日に染まって赤く照らされていた街並みが、ふっと色を失う。代わりに、青みがかった薄闇がじわりと広がっていく。


耳にまとわりついていた日常の音が吸い込まれるように消え、淡い光の粒がゆらゆらと漂い始めた。それはまるで蛍の群れ。幻想的で、現実味なんてまるでない。


「な、なんだこれ!?」


そんな驚きの声が離れている俺の耳にまで届いた。

全員かなり慌てているようだが仕方ないよなと思う

俺だって心臓バクバクだが、いざ目の前にこんな光景を突きつけられると頭の中が真っ白で見ているだけだ


……人間、常識を超えた現象に出くわすと案外ボーっとするんだなぁ。


直後、足元が眩い光を放つ。天条院たちが見下ろすと、そこには円形の模様――複雑に絡み合った図形や見たこともない文字列がびっしりと刻まれている。アニメやラノベで何度も見てきた、あの“魔法陣”そのものだった。


中心に立っていたクラスメイトたち――赤城、天条院、柊、羽里の身体が、ゆっくりと宙に浮かび始める。髪が重力を忘れたかのようにふわりと舞い、驚愕に目を見開く彼らの姿は幻想的ですらあった。


「あ~、知ってる知ってる! 異世界召喚ですね!」


気付けば口から勝手に言葉が漏れていた。こんな非現実的な現象を目の当たりにしてなお、まず出てくるのがアニメ脳な感想ってどうなんだ、と思うがまあよしとしよう。

しかし本当にあるんだなぁ、異世界召喚って。いやぁ~人生何が起こるかわからんね。


そう他人事のように考えていたら、不意に羽里と目が合った。どうやら興奮のあまり、物陰から半身を乗り出してしまっていたらしい。


……ってか、この騒動の真っ只中でよく気付いたな!?視力いくつだよ!?


まあ気付かれたからには仕方ない。俺は場違いにも軽く手を振ってみせた。羽里は何か必死に叫んでいたが、結界みたいなのに阻まれているのかまるで聞きこえない。


その直後。

光の渦がさらに激しくなり、目も開けられないほどの閃光が炸裂――。


光が収まり目を開けると、あの場にいた四人の姿は消え去っていた。


残されたのは、校章入りのカバンや教科書が入ったトートバッグ、そしてスマホ。

人の気配だけがすっぽりと消え去った住宅街は、不気味なほど静まり返っていた。


……とりあえず。


「さて、召喚されていったクラスメイトを無事に見送ったことだし。俺のやることは一つだな!」


ぐっと背伸びをして宣言する。


「よ~し、珍しいもんも見れたってことで、帰ってゲームすっか!」


――ヒドイ? 人でなし?

いやいやいや! 俺にどうにかしろって方が無理ゲーだろ!?

俺は勇者じゃなくて陰キャ高校生なんだぞ!


スマホもカバンも落ちてるけど、俺は知らない。拾って警察に届けたりしたら最後、軟禁生活しながらの事情聴取、お世話係は厳ついオッサンって状況を想像してみ?

俺は断固として拒否するね!

しかも下手すれば「共犯か?」なんて周りから疑われた日には人間不信になること間違いないだろ。


……いや、もし美人婦警さんが担当してくれるんだったら話は別かもしれないけどな。

ワンチャン親身に相談にのってくれるかもしれないだろ?

そんなの幻想だって?見たっていいだろ!


「にしても……召喚って、服以外は持ってけない仕様なのか? 妙にハイテクだなぁ……」


などと呑気に考えていたその時、ふと異変に気付いた。


光る魔法陣はすでに消えたはずなのに、周囲の雰囲気が戻っていない。空の色も、漂う光の粒も、先ほどの異常現象のままだ。


「……あっれれ~? いや~な予感がするんだが?」


次の瞬間。


俺の足元に新たな魔法陣が出現した。視界が真っ白になるほどの光。身体がふわりと浮き、重力が消えていく。


「ちょ、待て待て待て! 俺が何をしたってんだよぉぉぉぉ!!!」


そんな絶叫もむなしく、俺の身体は光に呑まれていった。


――そして俺が消えた後、街は何事もなかったかのように元の夕暮れへと戻っていった。


余談だが、あの場に残された荷物やスマホは、やがて光に溶けるようにして消滅するのだそうだ。まるで初めから存在しなかったかのように。

人々の記憶からも、俺たちの存在はすっぽりと抜け落ち、空白の部分は自然に別の出来事で埋められるのだとか。


――それが良いことなのか、悪いことなのか。

誰にも悲しまれずに済むのは救いかもしれない。だが、自分の足跡が跡形もなく消されるというのは、果たして幸福なのか。

それを知るのは、この先の俺……いや、“異世界の俺たち”だけなのだろう。

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