◆6
「おはようございます!」
元気のよい挨拶でナナが事務所に入って来た。
「おはようベンリウーマン。元気が良くて大変よろしい」
「あれ?タケノリ君はまだですか?」
「みたいだね、あいつ結構シャイな所あるからな、文句は言うけど悩みは打ち明けてくれないし」
「それはなかなかのシャイボーイですね!」
「はっはっは、あいつに聞かせたらどんな顔するだろうな」
そんな感じで事務所で談笑していると電話がなりだした。
「はい、便利屋ベンリマンです」
はじめてなのに慣れた感じで電話に出るナナ。
「はい、え?えぇと・・・すいません少々お待ちください」
そう言ってナナは電話を保留にして困った顔で俺を見た。
「社長、タケノリ君が・・・」
俺は車を走らせてミユキさんのアパートを訪れた。
玄関前で土下座している馬鹿を発見して俺は頭を抱えた。
「よう、シャイボーイ、せっかく俺が恋のキューピットになってやったのにさっそくミユキさんに浮気する気か?」
「うるせえな、それとこれとは話が違うだろ」
珍しく困った顔をするタケノリを見て、俺は少し機嫌を直した。
「とりあえず立てお前、往来の邪魔だ。」
恥ずかしそうに立つタケノリ。
それを見ていたのかドアが開いて中からミユキさんが出てきた。
「あっ、すいませんねミユキさん。」
「困りますよノリオさん」
「まったくですね!新人はすぐ感情に任せて突っ走っちゃうところありますからね。でも反省あってのこの行動ですから大目に見てやってください。それじゃ俺たちこれで帰りますんで、本当にご迷惑おかけしました!」
車にタケノリを乗せて俺も乗り込んで一息つく。
「俺はじめて見た気がする・・・生土下座」
「そうか、鑑賞料が払いたいなら受け取ってやるぞ」
「大袈裟に謝って筋を通した気になりたかったのか?考えが甘いなお前は」
「そんなんじゃねえ」
「じゃあ土下座して、仕事を取り戻したかったのか?やっぱり考えが甘いな。俺がミユキさん口説くのにどれくらい苦労したと思ってるんだ」
「あんな死にぞこないが好みなのか?」
「うるせえな、俺たちは生まれるタイミングを間違えただけなんだよ」
「は?」
「ん?」
「お前・・・口説くって比喩じゃないのか?」
「あ?ああ、もちろん比喩だ、定期的な仕事を得るために頑張ったって意味だよ」
「・・・本当に?」
「当たり前だろ、まぁ一緒に過ごす夜は多かったのは確かだが・・・」
「おぇぇぇえええええええええええええええええ!」
「なんだ!その反応は!」
「お前正気か?40歳くらいの年の差あるんじゃねえのか?」
「愛に年齢なんて関係ねえだろ、未成年じゃあるまいし」
「・・・・・・お前・・・何かすげえな」
「あ?おう、まぁ俺はすげえよ、今更だけどな。お前もモテたいなら俺みたいな男を目指せよ」
「それは遠慮しとく」
事務所にタケノリを戻して3人で改めて会議をすることにした。
「はい、と言うわけでタケノリ君はナナちゃんの前でカッコつけるためにこの前のヘマを何とかしようとした結果、ヘマを重ねて一件落着ということになりました」
俺は事の経緯を簡潔に説明した。
「愛される乙女は罪ですね!」
「ねー」
そう言って俺とナナは笑った。
「うるせえよお前ら!」
しびれを切らしてタケノリが怒った。
「まぁ、冗談はさておき、このタケノリが定期利用の案件をオシャカにしてしまったために経営は打撃を受け、おまけに従業員が増えた分、出費も増える。便利屋ベンリマンは大きく経営を改革していかなければならないわけだ。その辺に関して何か良いアイデアがある人!挙手!」
俺がそう言うとタケノリは難しそうな顔をした。
「はい!タケノリ君のアニメ制作を使ってCMを作り大々的に宣伝してみるのはどうでしょう?」
ナナがずっと考えていたかのように勢いよくそう答えた。
俺とナナは笑顔でタケノリを見た。
「マジか?」
タケノリは難しそうな顔をしていた。




