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タケノリは夢など見ていないと言ったがそれは一体どういう意味か・・・は正直どうでも良かった。
俺も色々な人間と関わって来たし、俺自身色々あった、こういうヤツは一度抱えている物を吐き出す機会ってのが結構大事だと俺は思っている。
「俺はここを出ていく」
タケノリは面倒くさいことを言いだしたが、まぁ想定していない内容ではない。
「お前カッコ悪いな」
「なに?」
「カッコいいと思ったんだろ、悩みを誰にも言わずに孤独に生きる俺、かっちょい~・・・とか思ったんだろ?」
「お前の惨めな思考だとそう思うのか、お前の有難迷惑に付き合わされるのはもう懲り懲りってだけだ。じゃあな負け犬」
「救いようがない馬鹿とはお前の事だな、自分がどれだけ多くのものに支えられてるかも分からず悲劇のヒーロー気取って独りよがりがしたいなら勝手にしろ」
「・・・・・・」
何か言いたそうだったが、タケノリは荷物も持たずに部屋から出て行った。
「・・・って言うことがありましてね」
その日俺はタケノリのことを親父さんに報告しにタケノリの家に来ていた。
「息子がご迷惑をおかけしました。しかし、その後息子は大丈夫なのでしょうか?」
「心配いりません、こう見えて探偵業を請け負うこともありますので、息子さんの行動は把握しています。今は近所の公園でふてくされてますよ。大丈夫、もしもの時は私が責任を持って迎えに行きますよ」
「そうですか・・・。」
「それよりお尋ねしたいことがいくつかありまして」
「何でしょう?」
「息子さんの交友関係について何か知らないですか?」
「交友関係?」
「ええ、これは僕の勘ですが、息子さんの交友関係が自暴自棄のキッカケだと思うんですよ」
「交友関係ですか?いじめや嫌いなことではなくてですか?・・・そうですね・・・いや、お恥ずかしい話ですが、息子とマトモに話をしたのはもう何年も前の話で、交友関係など聞いたこともないですね、中学生くらいの頃までは家に友達を連れて来てはいたのですが・・・」
「そうですか、もしよかったら部屋を見せてもらっても良いですか?」
翌朝、公園で虚ろに空を眺めているタケノリを見つけた。
俺は近所のスーパーで買い揃えた食糧を持ってタケノリの隣に座った。
「その後どうだ?一人でやっていけそうか?」
「うるせえな、何の用だ?」
「ああ、親父さんに頼まれて食事を持ってきたんだよ」
俺は買い物袋を差し出した。
「・・・・・・」
「もらうまで付きまとうぞ」
「ちっ・・・」
舌打ちをしてタケノリはそれを受け取り、飲み物を勢いよく飲み始めた。
「俺は夢なんて見てないだっけ?いやぁ健気だよなぁ、自分の恩人のために人知れず努力を積み重ねてたなんてな」
「は?お前何言ってんだ」
俺は一枚の写真を取り出した。
「昨日彼女に会ってきたよ」
「なっ!何でお前!」
「中学時代にお前をいじめてた奴に立ち向かった女の子が居たって話を聞いてな、近しいものを感じて会ってみたくなったんだよ」
「・・・・・・」
「皮肉なもんで女の子に助けられた自分が惨めでお前は引きこもりになった。女の子の方はずっと気にしてたらしいぞ」
写真を見つめるタケノリの目には涙が浮かんでいた。
「彼女の夢はアニメの声優だったんだってな?・・・お前の目的はそれだったんだろ?自分の一生をアニメ制作に費やして彼女の夢を叶えたかったんだろう?」
タケノリは鼻水をすすりながら写真をながめていたが、写真が汚れると思ったのか写真を俺に返した。
「・・・俺の人生ってのはゴミだ。何の価値もない。そんなゴミ同然の俺の人生も棒に振れば恩人の夢を叶えられると思った」
「まったく・・・馬鹿だと思うぜ、それが出来たとして彼女が喜ぶと思ったのなら本当に大馬鹿だ。この子はいじめられてる男を救っちまうヒーローなんだぜ?」
「まぁ、今更何も関係ねえ、結局お前の言う通り俺は馬鹿で無価値なゴミなまま人生を終えるんだ」
「いつか俺に言った言葉を覚えているか?お前は自分に出来ないことは無いって言ってた」
「・・・・・・」
「俺と一緒に仕事して、立派になって、立ち直ってみせろ。あの時の言葉はただのハッタリか?」
「・・・・・・お前・・・本当にムカつくな」
「よし、そろそろ帰ろうか?」
俺はタケノリに手を差し出した。
タケノリは何か言いたげだったが手を取って立ち上がった。
車で事務所に戻る俺とタケノリ。
「あっ、お帰り!待ってたよ!」
一人の女性が俺たちを出迎える。
「ただいま、いやぁ、俺の推理ドンピシャだったよね」
「本当に!?」
喜ぶ女性、俺がタケノリの方を見ると幽霊でも見たかのように硬直していた。
「な、な・・・ナナちゃん?どうして?」
「あ、この写真昨日の面接時に撮影したやつ、彼女もここで働くから」
「お帰り、タケノリ君」
感動の再開イェーイ。




