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天元物語  作者: 抜田 礼
ファンタジーの一面
44/59

◆7

 3Dプリンターで出力したプロペラをモーターに取り付けて、電源に繋ぐ。

 プロペラが勢いよく回転して風を起こす。

 現代では当たり前すぎて退屈なこの現象も冷静に考えれば感慨深いものがある。

 電動モーターと言う見えないエネルギーを動力に変換する技術は言うなれば超能力に等しいだろう。

 見えざる力を動力に変えた瞬間、我々は忠実なる下部を味方につけることが出来るのである。

 私は今扇風機で涼んでいるのではない。

 風の精霊に仕事をさせているのである。

 動力に繋ぐパーツによって精霊はその性質を変える。

 世の中には数多の個性を持った精霊で溢れているわけで。

 その精霊の個性を司るパーツにはそれぞれ人の歴史と物語があるのである。


 例えばこのプロペラ、始まりは諸説あるが太古の昔に名も無き古代人が金属の精錬のために木片と泥で送風機を作ったという説もあり、かの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチがヘリコプターの概念を描いたりもして、ライト兄弟が世界初の有人飛行を成功させたその機体にも言うまでもなく使われていて、このプロペラと言うものは人類を空へと導いたりもしたわけだ。

 本来ならば神聖なものとして崇められてもよさそうであるが、真に偉大なものはそうあるものなのかもしれない。

 偉大なる老子の言葉を借りるならば


 賢者は、人の上に立たんと欲すれば、人の下に身を置き、人の前に立たんと欲すれば、人の後ろに身を置く。


 と言った所だろう。

 何にしてもそんな偉大なものが世に溢れぞんざいに扱われるのも現実ならではなのかもしれない。

 人は特別なものに惹かれる生き物だ。

 何なら自身が特別になりたいと心底思っている。

 多くの助けを得て、いつまでも不毛な願いを抱き続ける世の人間たち。

 それが愚かだとは言わないが、ちょっとばかし謙虚になった方が世界は美しく見えることに気付いても良いのではないかと私は思う。


 私はパソコンに向き合いエルビスにラズベリーパイのプログラムの詳細な内容を記入して送信ボタンを押した。

 例の如く一瞬で完璧なプログラムを書き出すエルビス。

 それをコピペしてラズベリーパイに書き込む。

 ブレッドボードを使って動作確認をした後、はんだ付けを行い、3Dプリンターで出力したパーツ等で組み立てる。

 電子部品とパーツをボンドでくっつけたり、ネジで固定したり、塗装などをして色々とやった後、出力調整可能な小型扇風機が出来た。

「この程度ならラズベリーパイじゃなくても作れたかな」

 とか思ったが、結果的に作りたいものが出来上がったのならば細かいことは気にしないことにした。

 私は電源をつけて風を吹かせた。

 これがファンタジーの世界ならば私は風の魔術師だ。

 だけどここは現実で誰も私を特別だなんて思ったりはしない。

 言うなればそれがつまらないのだろう。

 伝説の勇者になりたくて、或いは前代未聞の偉業を成し遂げたくて、そして誰かの特別になりたくて、多くの人は生きているのだから、それが出来ないからファンタジーの世界に夢を見るのである。


 私は作った扇風機をスマホで撮影した。

 古代文明をイメージしてデザインしたその造形は我ながら素晴らしいと思った。

 機能面では市販のものに遠く及ばないが、外見や色彩に拘ればなかなかに愛着がわくものだ。

 私は色々な角度から撮影した後、扇風機を手に取って自撮りをはじめた。

「風の魔術師爆誕の巻」

 とかほざいてシャッターを切る。

 何だか絵面が気に食わなかったので、扇風機を顔の下に持ってきて前髪を風でなびかせながら写真を撮ってみた。

 我ながら馬鹿っぽくて気に入ったのでそれを保存して再びパソコンに向かう。


 ブログをに写真を掲載して一息つく私。

「明日クギヒコさんに見せに行こうかな」

 ブログの画像を眺めながら私は呟いた。

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