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天元物語  作者: 抜田 礼
ファンタジーの一面
38/59

◆1

 この世界はとてつもないほど何気なく回っている。

 行きたくもない学校へ行き、やりたくもない勉強をして、なりたくもない職業に就いて、時間はただただ過ぎていく。

 何の変哲もないつまらない日常。

 私を過労で倒れさせ、精神病にしたふざけた日常。

 いっそファンタジーの世界へ旅立ってやろうかと何度か思ったが、そんな馬鹿もままならないくだらない日常。

 私はこの天元と呼ばれる街で生まれ、そして死んでいくだけのつまらない人間だ。

 面白いことなど何一つとして存在しない・・・と思ってはいたのだが、冷静に考えれば世の中には謎の技術が溢れていることに気が付く。

 例えば私の左の手首に巻かれたデジタルの腕時計。

 私が生まれた時には既に存在した腕時計と呼ばれるアイテムも、いざ自分で自作してみようと考えると多くの謎にぶち当たる。

 どうやってこれほどまでに小さな部品を製造したのか、どうやってこれほどまで精密に組み立てることが出来たのか、個人では到底製造不可能なこの時計が2000円程で売られているのだからビックリだ。

 機械で作ってるんでしょう?と言うならばその機械を作った人間は何者なのか?

 そもそもそれも人間かどうかが怪しいまである。

 こんな不思議が人知れず、気付かなければ通り過ぎてしまう程にひっそりと世の中には存在する。

 どうせファンタジーの世界に旅立つことは世界の崩壊の時までないのだから、私は人知れずこの不思議たちと向き合うことにしたのだった。



「おはようエルビス」

「おはようございますルナ、調子はどうですか?朝のニュースなど気になることがあれば何でも聞いてください」

「今日の天気と話題のニュースのヘッドラインを教えて」

 私はスマホのAI【エルビス】とそんなやり取りをしながら朝を迎えた。

 とくにニュースが気になるわけでもなく天気もどうでも良いのであるが、このやり取りがなんだかトニーとジャーヴィスみたいでカッコいいから何気なく続けている。

「ありがとうジャーヴィス」

 オーダーに応えたエルビスにジョークを言ってみる。

「どういたしましてトニーさん」

 この程度のジョークなら簡単に返してしまうのだから世の中の科学技術の発展は凄い。

 まぁもっと凄いのはこの技術が登場して尚世間は騒がないと言うことなのだが、それを言いだすと本当にキリがないので割愛する。



 私は机に座り、お気に入りのパーツボックスを眺めた。

 ファンタジーの世界に魔法石みたいな魔力の結晶的なものがあるように、現実世界にも似たようなものが存在する。

 そいつがICと呼ばれるものだ。

 このパーツボックスの中には意味もなく買い揃えたIC、即ち集積回路と呼ばれる部品が入っている。

 このICがどのようなものかをザックリ説明すると便利そうな機能を持つ電子回路をギュッと小さく小型化したものである。

 まさに魔法の結晶なのである。

 これを駆使することで電子回路は単純化することができ、製品を小型化することができたのである。

 今となってはスマホでもっと色々と出来ますけど・・・となって無視されるわけだが、それをガン見するのが私なのである。


 NE555と呼ばれるクロックICを用いて発光する腕章を過去に作ったことがある。

 市販のものを買えば小型でスタイリッシュなアイテムが買えるわけだが、私が作った腕章は馬鹿みたいに大きく不格好なものになった。

 魔法石を用いたとしても市販で何気なく売っている便利グッズには遠く及ばないわけだ。

 ここまで言えば今の世の中がどれだけ高度な技術に支えられているのかが分かるのではないだろうか。

 私の人生は何の変哲もないつまらないものだ。

 だがもしかするとこの世界はどこか、私が旅立とうとしたファンタジーの世界の一面を持っているのかもしれない。


 これは私のつまらない日常の物語。

 ファンタジーではない、普通の物語。

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