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天元物語  作者: 抜田 礼
あうと おぶ ばーちゃる
26/59

◆12

 人はそんな簡単に変われるものではない。

 世の中に自殺してしまう人がいるように、頑張ってもどうにもならない人間と言うものは存在する。

 楽して豪遊する人間がいる一方で、生きていくだけで精一杯とゆう人間がいるなんてことは誰もが知っている。

 俺のように落ちぶれた人間が生きていけるほどこの世の中は甘くはない。

 まして一人の人間が付き人を携えて世界を一周してくるなど無茶苦茶な話と言えるだろう。

 だけどその無茶苦茶な話に合わせて俺の人生はカスタマイズされつつある。

 ゲームをしていればそれでいいだけの人生。

 まぁそんな生活も一生送れるわけではなかったわけだが、意味不明ながらも目標が出来たと言うことは、俺が俺なりに人生の歩みを始めたと言うことなのだろう。

 正直社会を回す歯車など反吐が出る。

 いずれこうして世の中に使いつぶされ、侮辱され、惨めにこの世の中から退場するのが予め敷かれた俺のレールだ。

 歩みを進めれば破滅しか待っていないのだからゲームをしながら最後の抵抗をしていたというのに、まさか俺が馬鹿な他人のために動くことになろうとは誰が予想したであろう。

 人生はどのような道を辿っても等しく死に辿り着く。

 遅いか早いかだけの違いだと言うのならば、先に動く俺を同類の人間どもはきっと笑うだろう。


 その日ハローワークからの帰り道で俺はいつかの神社の前で立ち止まった。

 全てはこの場所から狂いだした。

 あの日何気なく出かけた散歩の行く先がここでなかったならば、スズカがフラれたのが別の日だったならば、あらゆる行動のタイミングが少しでもズレていたならば、今の俺は無かった。

 仕事を探すこともなければ、ハローワーク担当者に嫌味を言われて帰ってくることも無かった。

 俺は全て正しいはずだった。

 仕事をはじめればきっと役立たずはいらないと罵られることだろう、邪魔だからいらないと言われるに違いない。

 頑張ってみてもその頑張りが認められることはない。

 だから世の中には自ら命を絶つ人間がいるんだ。

 そんな愚かな道に自らの意思で歩むと言うことは自殺をすると言うことに等しい。

 世間の大人どもはニートに対して頑張れと応援している。

 頑張って死ねと応援しているのだ。

 そんな馬鹿な声援に答えるのにも等しい行いをどうして俺がしているのか。

 何もかもが不合理すぎて吐き気がする。


「ユウタ」

 声の方を見るとスズカがいた。

「ハローワークの帰り?私も今から行くとこだったんだ」

「あっそ」

 俺はつまらなさそうにそう答えたがスズカは嬉しそうだった。

「何だよ」

 俺がそう聞くとスズカはクスクスと笑った。

「私が綺麗になったってことなんだよね?」

「調子にのんなクソババア」

「ひっどい!何でそんなこと言うの?」

「うっせえわ」


 俺とスズカは何だかんだで仲良くやっている。

 ただ一つ変わったことは、俺がスズカに対して死ねと言わなくなったこと。

 何度か死を感じる場面に出くわしてその意味を知ったからなのだと思う。

 この世界にはクソみたいなヤツしかいない。

 全員が俺の敵で、全員が俺にとっての不都合を運んでくる。

 これが現実の世界、これがバーチャルの外側。


「まったく、ユウタは私がいないと本当にダメなんだから」

「うるせえよ調子にのんな」


「あっはっは、大好きだよユウタ」

 スズカはそう言って俺を抱きしめた。


 これが俺が生きていくクソでまみれた世界。


 不合理と暴論で動く世界だ。


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