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◆3-11:イザベル 通用路(1)

 裸のユフィとアキラのニアミスに慌て、ヘルハリリエの苦情を受け流し、タウネル=バッハの奇妙な恨みつらみに付き合ったあと、最後にイザベルの前に立ちはだかったのは、珍しく目をパッチリと開いたネムリだった。

 その功労により、女子の中で一番にシャワーを使う恩恵に浴した彼女である。

 それから他の女子たちが順にシャワーを使っている間に眠っていたにしてもほんの2時間程度のこと。とても丸一日の貫徹を補うほど十分な睡眠が取れたとは思えないのだが、イザベルの進路を塞ぐようにして現れた彼女の瞳は爛々《らんらん》と輝いて見えた。


「気付いたことがあるんだけど、ちょっといい?」

「できれば後にしてくれる? っていうかユフィ見なかった? 迷子なの」


 返事も聞かずネムリの脇をすり抜けようとするイザベルだったが、対するネムリは的確に身体の位置を変えイザベルの進路を妨害する。

 仕方がない。聞くだけ聞いてやろうじゃない。

 と、イザベルは腰に手を当て、受けて立つ構えで向き直る。

 そのときになって、ネムリが上下一枚ずつの肌着しか身に着けていないことに気が付いた。


「やけに寒そうな格好ね」

「それはイザベルも同じ」


 言われて自分の首から下を眺めると、確かに薄着という点では大差がなかった。

 ユフィの心配をしてる場合じゃなかった。

 アキラやタウネル=バッハにサービスし過ぎたかしらと、先ほど話していたときの彼らの視線がどこにあったかを思い出そうとする。


「……私はシャワー室から飛び出して来たばかりだからしょうがないの」

「私も……。私もあの子に貸してあげたからしょうがない……」


 ネムリが身体の向きを変え、イザベルが進もうとしていた方を振り返る。

 一旦話題が逸れたせいか、ネムリの気配がいつもの眠たそうな感じに戻っていた。

 チャンスだ。通り抜ける隙ができた。


「──って、あの子って? ユフィのこと?」


 ネムリの背中側から回り込み、前に出ようとしたイザベルの身体が何かにつまずいたようにつんのめって止まる。


「……そう。裸だったから。私のネグリジェ着せてあげたの」


 イザベルはその場にへたり込んでしまいそうな脱力感に見舞われた。

 重い身体を支えるように、両手をネムリの細い肩の上に置いてうな垂れる。

 そういえば裸のユフィを捕まえたとしても、上から羽織らせるものを何も持ってきていないのだった。そんな自分の迂闊さに今さら気付くとは。


「あ、ありがとねー。助かったわ。どうせならそのまま捕まえといてくれるともっと助かったんだけど」

「無理。すぐ走って行っちゃったから。私じゃとても追い付けない」

「そ、そう。じゃあ、やっぱり私が行って捕まえなきゃ」


 ネグリジェ一枚羽織ったとは言え、この辺は少し空調が効き過ぎていて薄ら寒い。

 放っておいたら湯冷めして風邪を引かせてしまう。


「捕まえるなら、私も行く」


 それで二人は肩を並べて歩くことになった。

 早歩きではあるが、心配事が減ったおかげで先ほどよりは心に余裕ができていた。

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