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☆銀連TIPS:『ノイテニア族』

公式に統一銀河連盟の名の下に参集した知的生命体は現時点で524種。

最初期の百年の間に既に百種族余りが。その後は新たな遭遇ケースを徐々に漸減させつつも、千年期を迎えた頃には早くも三百種を数えるまでになっていた。

未知との遭遇という壮大なイベントも、立て続けに起きればその価値も目減りして感じられるというものだ(連盟と遭遇した当の星系種族にとってはその限りではないだろうが)。

ここで紹介するノイテニア族は、連盟がそんな物憂い倦怠感に包まれた時代に遭遇した種族である。


当初この種族は他に比べて特別目立つ特徴を有していないかに見えた。

部分的にはマダグ族に似た柔軟さを持ち合わせながらも、そこまでの奔放さはなく、言ってしまえばより常識的で、穏当で、地味であった(もっともマダグ族相手にそれは、比較対象が悪かったとしか言いようがないわけだが)。

そのためノイテニア族は一般的にはあまり注目されることもないまま、他の種族の先例にならい、その姿形を標準的な人型へと変え、つつがなく探査船団社会に溶け込ませていった。

だが、しばらく時を置いてのち、彼らの特異な生態に注目が集まるようになる。


ヒューマノイド化された彼らの子孫は、地球人種とほとんど見分けが付かない洗練された容姿をしていた。そのことは、もともと親和性の高い遺伝子構造をしていたことと、種族元来の外見に対し、あまり頓着を見せない彼らの気風が影響してのことだろうと思われる。

問題となったのは船団での社会生活の一幕だ。

昨日まで男子生徒のように振舞っていた思春期の子供が、次の日にはグラマラスな女性の姿となって登校してくる。あるいはその逆で、女子たちに混じり仲睦まじくしていたものがたくましい筋肉を蓄えた男性となって子供たちを戸惑わせる、という事例が度々報告されるようになったのだ。

そう。彼らノイテニア族の特異な生態とは、生殖適齢期になるまで性別の分化を保留する点にあった。


多種多様な星系種族のるつぼ。元来、雌雄同体すら許容される探査船団社会である。

ノイテニア族のそんな生態は、どこをどう切り取っても憲章から逸脱するものではなかったのだが、思春期の多感な時期に、級友たちの肉体の変化を目の当たりにした子供たちへの影響は計り知れなかった。

いや、どちらかと言えば当事者である子供たちよりも、その親たちが問題視したのだが(なまじ規格化後のノイテニア族が、地球人好みの美形揃いであったことが当時の人々を過敏にさせたのだ)。

とにかく、彼らの生態が広く知れ渡るにつれ、ノイテニア族のヒューマノイド化のやり方に関する風当りが強くなり、以降、彼らが船団に乗船する際の遺伝子操作のドグマが見直されることになる。

これは『連盟が定める条件(寿命、体格、交雑受容性)以外の、種族元々の特徴は極力維持すること』と定めた銀河連盟の憲章を考えれば極めて異例なことであった。


くして、ノイテニア族独自の弁別性は遺伝情報から念入りに削除された上で、改めて探査船団社会に組み込まれることとなる。

それから数千年の歳月が流れ、当時の世相や、ノイテニア族本来の生態は忘却されて久しいが、最近になって各所で報告されるようになった興味深い事例があるという。

様々な種族の血が入り混じり、複雑に影響し合った帰結として、性別を持たずに生まれてくる、ノイテニアの先祖返りと思われる事例が。



ああ。そう言えばもう一つ。

ノイテニア族に関するほんの些細な特徴を書き添えて置こう。

これは彼らがヒューマノイド化を始めた初期からの共通した特徴であるが、彼らノイテニア族は皆、目を奪われるほどに鮮やかな赤色の頭髪をしていた。

当時、連盟政府内のいち下部組織から「赤色は不味い。どうにかならないか」と打診があったが、どういうわけか髪を赤くする表現型だけはしぶとく生き残り、遂に遺伝情報からの削除を完全に諦めねばならなかったという真偽不明の噂がある。


尤もこれは、ある特殊な界隈での噂──あのミリィ・クアットに関する膨大な陰謀論の断片の一つなので、どうか話半分に聞き流していただきたい。

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