☆銀連TIPS:『統一銀河連盟』
原生地球種族が天の川銀河系の軛から抜け出して深宇宙へと繰り出し始めてから、僅か百年余りのうちに、彼らが遭遇した地球外知的生命体の数は軽く百種を超えていた。
まるで見えない何かに操られたか、事前の示し合わせでもあったかのように、文明レベル的に近しい、しかし、文化・生態的には違い過ぎる知的生命体が、次々に互いを発見し、会合したのである(※1)。
その間、意思疎通の不全や疑心暗鬼から、星間戦争に発展しかねない危機を何度も潜り抜けたのち、各星系の代表団は安全保障のための合意を実現する。
互いをよく知り、信頼すること──。
口にすることは容易いが、同種族間においてすら難しいその難事を成し遂げるために彼らが採用した手段は、かび臭い、昔ながらの手法であった。
即ちそれは、血縁を結び、同胞となることである。
当時外宇宙に進出する程の科学力を有した地球人類においても、それは途方もない挑戦であった。なにしろ、地球人種で言うところの遺伝子という枠組み(コドンを用いた複製の仕組み)にしてからが、この宇宙に存在する生命に共通する原則ではなかったからである。
しかし、彼らは懸命に互いの生命の理を探り、遺伝子らしき振る舞いをする分子叢との共通項を見極め、遂には他星系種族との交雑(※2)が可能な子供たちを産み落とすことに成功する。
こんにち探査船団に乗り込み、広大な深宇宙を彷徨い続ける銀河連盟人の多くは、その手法で生み出された多星系種族のアイノコたちである。
彼ら彼女らは、それぞれの種族の特色を残しつつも、同じ言語で語り、同じ言語で考え、共通の価値観を育み、ときには混血し、一部は下船して自らのルーツである母星系へと還っていく。
そうして、彼や彼女らが持ち帰る文化や価値観、遺伝子が、ゆっくりと宇宙全体に浸透し、攪拌され、銀河連盟人という新たな種を形作っていくことになる。途方もなく長大な時間を掛けたそれが、彼らが選んだ融和への道筋であった。
探査船団とは、異なる文化を混じり合わせるための実験的な土壌であり、パートナーを見つけるための社交の場であり、前哨基地である。
多くの歴史家や人文科学者により繰り返し指摘されるように、集う目的やお題目は、本当は何でも良かったのだろう。
三世代を跨がぬうちに、まるで最初からそれが真の目的であったかのように、探査そのものよりも、探査船団という場を維持し、拡大することが重要な意味を占めるようになっていた。
その壮大な試みが成功を収めていることは、それから数千年の長きに渡って連盟加盟星系同士での武力衝突が一度も起こらず、こんにちまで繁栄と共存を続けている事実からも明らかであろう(※3)。
※1:
多くの場合は宇宙開拓の先駆者である地球人類による一方的な発見。そうでない場合も、地球人類による大規模人工天体活動を異性系種族が観測・発見した事例が殆どであるが、高度な政治的配慮により互いに発見したと記されることとなった。
これは連盟加盟種族同士で合意された所謂〈教科書的な〉声明である。
※2:
実際の受精の過程は人工・自然を問わない、という定義の広さには目を瞑っていただこう。
※3:
外部から見た彼らの〈融和〉政策については別項にて補記する。




