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☆銀連TIPS:『船団ネットワーク』

確かに〈宇宙クラゲ〉は芸術とも呼べる優れた宇宙航行手段であるが、それは光速を超えない巡航速度に限っての話だ。


光速を超えて目的の座標に到達したい理由がある場合には(例えば希望者を入退艦させるために各所の母星系に寄港する場合などだ)、使い捨てのワームホール発生装置を用いる必要がある。

完成度については脇に置くとして、ワープ航法技術そのものは遥かな昔、原生地球人が天の川銀河系の外へ飛び立って〈大会合時代〉を迎えるより前に実現されている。

こんにちでは特にホットな研究分野でもなく、十分に陳腐化された技術の一つと言えるだろう。


ただし、〈宇宙クラゲ〉自体にその機能はなく、探査船団は主に各艦隊の旗艦クラスに積み込まれた専用の装置を用い、艦隊の進行方向にゲートを投射することによってこれを行う。

無味乾燥の宇宙空間を果てしなく漂っている状況の割に、そこにボートピープル的な悲壮感が存在しないのは、望めばいつでも帰還が叶い、てんでバラバラの向きに飛び交っている探査船団同士も、ある意味ではゼロ距離で接しているとみなせる精神的な安寧があるためであろう。


ワープ航法が実現する即応性は物理的な安全面でも彼らを支援している。

探査船団自体は最低限の兵装しか持ち合わせていないが、ひとたび有事となれば、宇宙の各所より統一銀河連盟の武装艦隊が瞬時に駆け付ける取り決めとなっているのだ。


一方で、日常的な情報のやり取りには幾らかの不便も付きまとう。

何百、何千、何億光年も離れた者同士、そして、あらゆる方向に揺らめきながら亜光速で突き進む艦同士を、ピンポイントで接続し、交信を図ることは彼らの科学力をもってしても存外な難事であった。

そのため、母星系との連絡は〈宇宙クラゲ〉の体内からフンのように吐き出され、道中に置き去りにする小型のポッドを中継点とする方式で行われている。

それでもなお限られた時間しか連絡が確保できないため、通常はリアルタイム通話という贅沢は許されず、パッケージ化されたデータでやり取りをするのが主流である。

連盟標準時で三十日毎に排出されるポッドには、毎回、個人間のビデオレターや公のニュース、論文、エンタメ素材などがぎゅうぎゅうに詰め込まれている。


同じ船団で編隊を組む艦同士の交信はそれよりももう少し親密だ。

相対速度が近付き、同期するタイミングで自動的に接続される協調短距離パルス通信がそれである(短距離とは言っても有効半径は軽く1光年の距離に及ぶ)。

〈ハンザ艦隊〉ほどの規模であれば、ほぼ常時、いずれかの艦とは回線が繋がっているのが一般的だ。

劇中で〈ベルゲン〉の艦長フリードマンが亜光速航行を続けるように指示したのは、仮に減速に転じれば、当面艦隊内の協調通信が回復する見込みがなくなる点も考慮していたのだろう。ただし、残念ながら初期段階での彼の判断は裏目と出てしまった。


通常航行中の船団間の交通と、緊急時の離脱の違いについても少し補足をしておこう。

通常、同じ船団内の艦は多い場合で数日に一回、少ない場合で数カ月に一回程度の頻度で互いに接続し、人や物を行き来させている。

その際は、相対速度を合わせるのは勿論、物理的な距離においても、ほとんど重なるほどの近距離まで近付き、互いの触手を伸ばして一時的な連絡通路を設けることが一般的だ。

人や貨物が乗ったカプセルバスは別の艦に乗り移るまでの間、数十分から一時間程度、触手でできたトンネル内を移動することになるのだが、言ってみればそれは地続きの移動であり、〈宇宙クラゲ〉を分裂させるシークエンスを含まない。


滅多に行われない特殊な事例であったことが、亜光速航行中のベルゲンからの離艦を困難にした要因として挙げられる。

尤もそれは、技術的側面だけを見れば不可能というほど至難な試みではなく、離艦を試みた避難艇がことごとく失敗の憂き目に遭ったのは、やはり銀連の科学の域を超えた未知の技術による妨害があった可能性が否めない。

もしも、〈宇宙クラゲ〉の仕組みに精通した技術者が避難艇崩壊の瞬間を観測したならば、サブヒッグス粒子を制御するナノマシン群が、本来意図されない干渉縞を形成させていた点を指摘したことだろう。

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