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☆銀連TIPS:『宇宙クラゲ』

〈宇宙クラゲ〉。宇宙探査艦の外殻を構成する、ゾル状のコロイド分散体で形作られた人工生物。その俗称。または単に外殻推進機関などとも。


内部に充填された〈サブヒッグス粒子〉によって自在に生み出される質量(重力)を推進力とする。

船体を覆い包むように展開される特殊な場は、境界の内側を一般的な物理則から隔離する。至極単純に言えばそんな、ある種の()()()()によって、〈宇宙クラゲ〉は内部に質量を蓄えながらも、光速の近似値──実に97.85%の速さにまで達することを可能としているのである。

また、その途方もなく巨大な被膜は、亜光速で衝突してくる宇宙塵や星間ガス、それに人体にとって有害な宇宙線などから艦本体や居住者を保護する役割も担う。そのため、どれほど小型の艦でも平均の全長は最低でも50㎞。中型以上の艦の場合、内殻居住区の10倍から15倍のサイズを持つのが一般的である。


〈サブヒッグス粒子〉と同じく、体内の隅々にまで充填されたナノマシンにより、中央の制御なしに半自動で機能し続けることのできる堅牢な自律性が生物と形容される所以ゆえん。艦中枢にあるコンピューターや操舵技師は、馬車を操る御者のような関係で捉えるとよい。

乗員の一部には〈宇宙クラゲ〉が既に十分な知性と自意識を獲得しているのではと考え、崇敬に近い感情を抱く者もおり、中には結社化する動きもあるが、他の多くの者たちにとってそれはオカルトの類である。連盟政府は主に保安上の理由からそれを実証するための試みの全てを公式に禁じている。


紫色の原形質は化学反応の過程で自ら発光している。しかしその光量はごく僅かで、仮に全体を俯瞰ふかんできる位置まで遠ざかって眺めたとしても、肉眼では宇宙空間の深淵に溶け込み、ほとんど目視は叶わないはずである。

それでも適切な手段を講じてその動きを観測したならば、彼女が体の一部を触手のように伸ばして次々と前方へと送り、クロールで掻き進むような運動を行っていることに気付くことだろう。

〈サブヒッグス〉の働きにより、触手の先端部に生み出された巨大な質量(重力)に、自らの体を落ち込ませることによって──わばスイングバイの要領で──狙った方向へと推進しているのである。

進行方向に生み出された触手のこぶは、内部にたたえた仮初めの質量とともに、艦本体がそれを追い越すより前に縮んで霧散し、内部での対流を繰り返すことになる。


その悠然とした動きから想像されるとおり、〈宇宙クラゲ〉は加速や減速、軌道変更をかなり緩やかにしか行うことができない。ただそれは、探査船団の性質上、特別急ぐ必要のない旅であるがゆえ、設計段階からそうされているに過ぎない。それをもって〈宇宙クラゲ〉の性能をおとしめるのははなはだ不当である。

理論上数万年に及ぶ耐用年数の長さと、エネルギー効率に関しては抜きん出た性能を誇る。限定された目的、実際的な運用面においては、〈宇宙クラゲ〉は間違いなく探査船団のためにあつらえられた最適な乗り物で、統一銀河連盟の科学力の結晶、最高傑作とも呼ぶべきものであろう。


船団全体に多様性という強靭きょうじんさを与える観点から編成されたごく少数の例外を除き、こんにちでは探査艦のほぼ全てがこの巨大有機生命体を用いた恣意しい重力管制航法を採用している。

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