距離感とか言う目に見えないヤツについて
以下は、最近あった出来事についてです。
自分の中でちょっと引っかかったので整理のために文にしてみました。
実家を出て、半年が経った。現在弟と二人暮らし。
最初は「ちゃんと暮らせるの? 貯金はしっかりするのよ」と口うるさかった母も、私が家計簿もつけてしっかり生活ができているのを見て、今は自分だけの時間を伸び伸びと暮らしている。
元々一人が好きだった母は、会うたび何か新しいことに挑戦している。
家を出たことで私は、母の偉大さを改めて痛感。
そんな中、2ヶ月ほど前に姉が横浜から帰ってきた。
姉は横浜で婚約者と同棲中だったが、「一緒にいると新鮮さがなくなるから程よい距離感がいいね」、となったそうで実家の方へと帰ってきたのだ。
最初の一ヶ月は母と姉は仲良くやっていた。
けれどニヶ月目に入ると、どうにも2人の様子がぎこちない。
私は母に尋ねた。
「お姉ちゃんのこと、心配?」
「そりゃあね。だって、仕事もしてなければ家にお金を入れることもしないし、婚約者の彼と結婚する訳でもなければ、いつまで実家にいるのかも分からないんだもん」
確かに同意だった。
姉は半年以上前に婚約している。けど、婚約者の彼の方が結婚をする気がないそうで、子どもに関してもはぐらかすそう。それでも姉は彼がいいのだと言って、自分の夢だった"母親になること"も、最悪諦めると言っていた。それほど婚約者と一緒に居たいようだった。
当然母も、もちろん私もそれは心配になる。
続けて母は言った。
「このまま実家に居るようだったら、最悪家を追い出すことも考えないといけないかなって思ってる…」
う〜む、そうか…。と心の中で呟く。
姉の婚約者はいわゆるお金持ちで、姉が仕事をしなくても婚約者からブラックカードを渡されているためお金の心配がない。
最初は生で初めて見る高級感とラスボス感溢れるそのカードに家族一同興奮したものだが、そのカードのおかげで姉は日夜何もせずとも暮らしていけるのだ。
私もお母さんも朝から夕方まで働いてお金を稼いで生活をしているのに、姉は仕事もせずともお金がある。
正直羨まし過ぎるし、若干の妬みも生まれる。
けどそれと同時に、婚約者がいなくなってしまったら姉は一体どうするんだろうかと家族として心配になった。
仕事もなければ、貯金もない。今は婚約者のお金で生きていると言っても過言じゃない。
お節介と言われればそれまで。
けど血の繋がった家族だ。姉の将来が心配になってしまうのも、仕方ないと思うのだ。
けど姉は私にこう言った。
「余計な心配をしないでも、ほっておいてくれればそれでいい。私は家事を手伝ってあげてるのに、お母さんは何がそんなに不満なの?」
私はうんうんと悩んだ。
(どこまで言っていい? 姉はどこまでを望んでる?)
思ったことをそのまま言うのでは、配慮もクソもあったもんじゃない。
家族と言えど、相手の気持ちを考えて発言したいと私は常日頃から考えている。
傷付けないように、でも厳しく、時には注意だって必要だ。
私は意を決して口を開く。
「家族なんだから心配になるのは当然だよ。お母さんはお姉ちゃんが婚約者と別れた後のことや、結婚どうするのかとか、色々心配なんだよ」
「そんなの分かってるし、私の気持ちはもう伝えてある。働いてないのが心配なのも良くわかってる。だから来月からはバイトだって始めるし、お金を家に入れようとも思ってる。これ以上何か不満あるの?」
私は口を閉じた。姉は続けた。
「私は彼と別れてからもちゃんとやっていける自信もあるし、どこでも雇ってもらえる自信もある。恋人だってすぐできると思うし、正直お母さんが何をそんなに心配してるのかわからない」
確かに姉は昔から優秀だったし、顔も可愛くて男性からもモテた。人当たりもいいし子供も大好きな姉は、大人子供問わずに好かれる。
姉の自信は小さい頃から積み上げられてきた堅固なもので、一朝一夕でできたものじゃない。
対して私はいつも姉と比べらる人生だった。
別にそれで良かった。姉が私より優れていることは誰よりも分かっていたし、そんな姉が自慢でもあったし大好きだった。
けど、ふと思う。
確かに姉のように昔から何でも出来ているのなら、私たちの気持ちは分からないだろう。
でも、「そう言うところじゃない?」なんて口が裂けても言えない。
姉は怒ったら恐ろしいのだ。だから昔は家族から"裏番長"と呼ばれていた。
怒られるのが分かっていて発言をするやつは、馬鹿じゃなくて確信犯だ。私はそこまでMじゃない。
姉は頬杖をついて溜め息を吐いた。
「思ってることがあるような顔してるのにお母さん私に何も言ってくれないから、私もう考えるの疲れちゃった……。やっぱり家を出た方がいいのかな…?」
何も言ってくれない、か。
「じゃあ今思ってること、そのままお母さんに話せばいいんじゃない? だって自分の気持ちを晒してくれないような人に、思ってること話そうって思わないでしょ? …あっ、もしかしてもう言ってたりする…?」
「……いや、言ってない。でも、確かにそうだね。今夜にでも、言ってみようかな…」
姉はそう言って力なく笑った。
「…私ね、家族ってもっと、距離が近いものだと思ってた。……でも、家族にも距離感って必要なんだね。一緒に居れば居るほど、自分の想像してた家族像と離れていって、なんか悲しい」
徐にそんなことを言う。
「お姉ちゃんが想像してた家族像って何なの?」
「ん〜…、何だったかな。忘れちゃった。でも、ずっと一緒に居ても関係は変わらないものだとは、思ってたかな」
何だか寂しさを覚えつつも、不思議と納得した。
確かに私もそうだからだ。
お母さんとは元々仲が良かったけれど、お父さんとは関係がイマイチだった。
両親は実家でカフェを営業しているため、私が実家にいた頃は常に一緒にいる状態。
お母さんとは別に何もなかったが、お父さんとは言い合いをすることもあった。
けれど家を出たことで距離ができ、私のお父さんに対しての気持ちにも変化があり、今では冗談も言える仲だ。
対して弟とは、実家にいた頃は仲が良かったのに、一緒に暮らすようになってからはよく喧嘩をするようになった。
実家にいた頃は弟と私の生活リズムが違い、一週間近く会わない日もある程度には距離があった。
けれど一緒に暮らすようになって、その生活リズムを合わせたことで毎日顔を見る。
そうすると互いに相手に対して嫌に思うことは出てくるわけで、細々したものだけれど積み重なれば争いの原因になる。
しまいに言われた弟からの言葉は、「俺たちそもそも性格が合わないと思う」、だった。
まあそれでも何とか現状仲良くやっていけているのでいいのだが、これには私も強く思うところがあった。
家族でなければ、いや家族だからこそ、仲良くやれてる部分は大いにあるのだろうなと。
同じ血が流れているからと言って、全てが全く同じなわけではない。
当然性格も違えば、物事を捉える感性も違う。
好きなことも嫌いなことも、やりたいこともやりたくないことも違うのだ。
似ることはあっても、完全に一緒になることはない。
他人との距離を測るように、家族にだって距離は必要だろうし、親しき中にも礼儀あり、のように家族にだって配慮はいる。
結論を言えば人それぞれ、家族それぞれなのだが、少なくとも私たち家族には距離が必要だった。
けれど、距離があることで相手を尊ぶことができると思うのだ。
相手との関係で悩むことがあるのなら、一度距離を置くのはいい手段かもしれない。
結局は、近過ぎず遠過ぎずが一番。
まあそれが私には難しいのだけれどね(笑)
皆さんはどうやって相手と距離を測りますか?
良ければ教えて下さると嬉しいなと思う、今日この頃です。
ここまで読んでくださり感謝感謝です!