川が近くにあるホテル
私は山道を車で走っていた。
道路は舗装こそされているものの時折デコボコで、そのたびに車はガタガタ揺れた。
真っ直ぐ垂直に生えた木を横目に見ていると、前方に、いや正確に言えば左前辺りから木製の建物が見えた。
少し暗めな色の木材はシックな雰囲気を漂わせていた。
「いい雰囲気だ」
心を踊らせながら、早速中に入った。
旅館特有の独特な香りが、私の心をさらにくすぐる。これはいい。
チェックインまで少し時間があったので、ロビーでくつろぐことにした。
自由に飲み物が飲めるらしいので、私は林檎ジュースをコップに注いだ。芳醇な香りでおいしそうだった。
それを持って適当な椅子に座ると、窓から地響きのような音が聞こえた。
一口飲み、窓に近づくと、そこは川だった。
少し下の方に、川が流れているのだ。
「豪快だ」
少し緑がかった川は、力強く流れていた。これが自然か。
チェックインの時間になると早速部屋の鍵を受け取り、部屋へ向かっていった。
綺麗なエレベーターに乗って上へ上がり、部屋の階に到着した。
待ちきれず扉を開けると、確かふかふかのベッドがあったような…?覚えがある。
ここからの記憶は正直曖昧であるが、唯一、食事がべらぼうに旨かったのを覚えている。そうだ、そういえばピアノの生演奏もしていた!
あのホテルは良かった。と、今更ながら思うのである。