特攻系はリスキーだが強くなる
すみません、結構間隔あけての投稿です。実はコロナに罹ってしまっていました。もう今は回復したので大丈夫ですが、活動報告にも更新せずに休んでしまい申し訳ありません。えーりんの治療で元気100倍アンパンマンなので身を粉にして書いていきます。これからも何卒本作をよろしくお願いします。
それでは、本編どうぞ!
「うみゃー!」
「確かに美味しい。華扇って、仙人なのにグルメに精通してるのよね」
「そして、人のお金で食べるからなお美味しい!」
「あ、お金、私が食べてる分しかないから」
「もぐもぐ.......へ?」
「いやー、他人の不幸は蜜の味だわー」
ぐぬぬ.........はぁ。
私たちは今、戦闘後のお茶休憩中。目の前のお団子は美味しいけれど、急に串が重く感じるよ。
「........ずずっ」
はわぁ。やっぱりお茶は日本の伝統文化だよねぇ、侘び寂びね、心が落ち着く。その深い味わいの後にこの三色団子を一口。これがね、美味いのよ。目の前の客が今、「新鮮フルーツ団子で!」とか言ってる。あのね、フルーツ団子なんてきょうび流行んねーんだよ、ボケが。
幸せそうな顔して何が新鮮フルーツ団子で、だ。
あなたは本当にそれを食べたいのかと問いたい。問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。
あなた、流行りが食べたいだけちゃうんかと。
和菓子通の私から言わせてもらえば今、この界隈でのトップはやっぱり、三色団子、これだね。
三色団子二本暖かいお茶付き。これが通の頼み方。
三色団子ってのは、付属ソースとかがない。そん代わり団子自体が甘い。これ。
で、それにもう一本と暖かいお茶(緑茶)。これ最強。しかし、これを頼むと家のご飯が食べれなくなると言う危険も伴う、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。まあ、君たち非甘党勢は、味噌田楽でも食ってなさいってこった。
「なんであの人を睨んでるの?」
「霊夢、団子屋は殺伐として然るべきなんだ。刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんだ」
「そのこだわりはよく分からないけど、お茶冷めるわよ?」
「......ずずっ」
はわぁ。やっぱりお茶は日本の伝統文化だよねぇ、侘び寂びね、心が落ち着く。その深い味わい後に目の前の三色団子を一口。これがね、美味いのよ。目の前の客が今、「新鮮フルーツ団子で!」とか言ってる。あのね──────。
「いや待て待て、そのお茶にはなにか入ってるの?なぜほんわかした顔から殺伐とするの?」
「え、いや。そういうネタですけど」
「.........やっぱり奢りは全体的にナシね。割り勘ならいいと思ってたけど」
「なに!?割り勘するつもりだったの!ふざけなければ良かったー!」
頭を抱えてうあー!と叫ぶ私を放置し、霊夢はそのまま話を続けた。
「そういえば、あんたって中々実力が安定しないわよね」
「ぁー!....え、どゆこと?」
「つまり、私が退治するような妖怪と、さっきの剥がれ者と戦う時とじゃ、強さが違わないかって」
「そーいわれても」
そういうものだよ?私は剥がれ者特攻だし。
剥がれ物キラーなので、普通のやつ相手だと準備無しじゃ場合によっては死ぬしね。
「私は、どっちかと言うと言葉で戦う方だからさ。説得が一番じゃん」
「まあ、レミリアに輝夜、さとりにサグメも言葉て負かしたからねえ。でもさ、なんかぼこぼこにされてたときなかった?物理的に」
「え?あったような.....?なかったかも?」
「あったでしょ。ほら、あんたが2回目の紅霧異変の後、紅魔館に行った時」
─────────五か月前
紬が幻想郷へ来てから一月が経ち、はじめての異変も無事解決した後のこと。
とある事後処理のため、紅魔館に向かっていた最中だった紬は、運動も兼ねて空を飛ばすに、森の中を歩いていた。
「うんうん、やっばり空気が澄んでるね。霧の湖周辺は気分がいいや」
しばらくはそうして森での散歩を楽しんでいたのだが、霧の湖に差しかかる直前で、あるアクシデントに遭遇してしまった。いや、遭遇と言うべきか。
「グルルゥ」
「.......わーお。まさかのご対面が今ー?しかも純粋なパワータイプの四足獣型じゃないですかー」
ガサッ、と揺れた木々の間から、数匹の四足獣型の妖怪が現れたのだ。余裕そうにおどけている紬ではあるが、こういう相手には少し弱いのだ。
「えーと、今までの移動では足りないか。あーもう、しばらく流さなきゃ.....な!」
「ガァァルル!!!」
「うぉう、鳴くな!唾飛ぶでしょ!」
先手必勝とばかりに牙を剥き出しに突進してきた一匹を、紬はまず余裕を持って受け流した。
その妖怪は着地に失敗し、足にダメージを負ったが、妖怪からすれば微々たるものだ。
続け様に二匹目、三匹目が突進や爪撃を繰り出してくる。
「っと、はい、やっ、と。ふうー、『──────程度の能力発動』」
少しでも時間を稼ぐために、自らが獲得した能力を使っていく。それは、一見すると何も起きていないように見えた。当然だ。彼女にとっては、これはただの強化する能力に過ぎない。
その十数秒の間にも、既に攻撃を捌いた最初の一匹が背後から攻撃を入れた。
「いっ....!...たく、ない、し。っはーい、あっぱーかっ!」
身体が外部からの衝撃により硬直するが、気を取り直して飛びかかった反動で無防備な妖怪の顎にアッパーを食い込ませ、気絶させた。
残るは同型が二匹。仲間がやられたことで、モデルの動物よりは多少賢い頭で危機感を覚えるが、数の有利で両サイドから攻める。
今度は低所からの噛みつきだ。
「おっと!あぶなっ!」
ダブルダッチの要領で素早く避けた紬は、先程のタックルで十分な準備、蓄積ができたことを認識した。
避けられた二匹はすぐさま方向を変えて噛み付いてくるが、頭を踏んでさらに上へと跳ぶ。
「えいえい、おー高い高い」
「『循環』、蓄積量は足りてる。そろそろ仕舞いだね」
紬の周りで空気が揺れる。衝撃が身体中を循環し、鳴動していく。鼓動に合わせてさらに空気は揺れていく。
「んじゃ、またね」
「グッ......ガルルルルァ!」
妖怪は抵抗を試みたが、空気の振動のせいで上手く体が動かせなかった。
─────そして。
「─────『鬼角流:一角・掌底ver』」
戦闘での衝撃、つまり運動エネルギーを出来る限りに押し付けられた二匹は、為す術なく、その頭を砕かれるのだった。
「っはー!久しぶりに構えたなぁ、鬼角流」
───『鬼角流』。天綺家に伝わる三大武術の一つ。技の主な動きは格闘術、徒手空拳。つまりは素手で行う体術である。掲げる信念は『あらゆるものを捩じ伏せる』、ただその一点のみ。
空高くに居座る神であろうと、昏い深淵に巣食う怪物であろうと、その身一つで叩き潰す。ある時は全てを貫くその拳を。ある時は死地を踏み抜くその足を。流れるような動きで全てを受け止め、自然な動作で万物を循環させ、より効果的に、捩じ伏せる。
究極の護身術。究極の合気道。それが鬼角流である。これも現代武術からすれば規格外なものだが.........他二つもまあ酷いものだ。
一つ言っておくと、彼女はこれで普通なのだということ。というか、この基礎が出来ないと天綺家では剥がれ者に対抗できないのだ。
「ブランクがあったから一か八かだったけど、まだまだ現役で通るね」
二ー.....引きこもり生活だったせいか、幻想郷来訪まで運動していなかった紬はスッキリしたようで、先程より幾分か足取りが軽い。
やはり、適度な運動は生物には必要なのだ。
そして、鼻歌(もちろん東方)を唄いつつ、紅魔館へと再び歩を進めて行ったのであった。
そして。ここまでの一部始終を目撃していたのが。
「.......え、今のまじ?」
「たぶん、マジじゃないか?」
どろぼ........本を借りに来ていた魔理沙と、魔理沙にに連れてこられた霊夢の二名なのであった。
───────現在
「って感じのことよ」
「あー、あーあー!あったね、うん。いい運動になったよ、あれは」
「いい運動ってあんた....」
なぜ勝手に過去話言われて呆れられなきゃならんのだ。恥ずかしくともなんともないけども。
「私の使う魔術的なのはさ、剥がれ者を研究して作られたものなんだよね。だから、それ以外に作用するようなコードがないんだよ。まあ、生み出した物理現象は切り離せば作用するけど」
「へぇ.....まあ、武術使えるなら美鈴ともやり合えるかもね」
「いや、それはちょっと.......。噂では、地獄らしいじゃん、訓練。ド、Mではないからさ」
あと、霊夢ならわかってくれるだろうけど、修行とか、めんどくさいからやだ。妹ちゃんたちがいればぐーたらしても怒られず、むしろ楽しいんだけどね。そういう系の人はここにはいないし、ね。
─────『ねぇ、聞いた?甘やかして欲しいらしいよ』
「まー、面倒臭いのは同感ね。華扇と同等くらい面倒いわ」
「ね。食べ終わったし、もう帰る?」
「あ......まって、んぐ。買い物したいから」
お金あるじゃん!........いや、生活費まで使えないか。まあ、今日はラノベ買うために多めにお金もってきてるから別にいいか。
「今日は何がいい?」
「んー、洋食がいいから.......オムライスかな」
──────『..........良い味覚、してる、ね』
──────『だね!オムライス好きに悪い人は多分居ないよ!あはは!』
「.......? あれ、なんか言った?」
「いや?お茶飲んでるの見てたでしょ?」
「うん......だよ、ねぇ」
気のせいかな?なんか笑い声が聞こえたような。
まあ、ぜんぜん感情籠ってなかったけど。
──────『..........そっか』
そんなことより、今日はオムライスだ!
ふはははは、我が家のご飯をくらい尽くしてやろうー!
「あ、言っとくけどご飯は二合までね」
「くっ、ふせがれたぁ!」
そんなこんなで、意外と楽しめたお団子屋さんなのでした。