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あの日夢見た幻想郷~Wanted My Whereabouts  作者: ルーミエル
第1作「東方靈異伝」
6/8

ヒーローは遅れやってくる。悪役は十分前行動



紬が里の西側に向かうその少し前。


赤と白の少し変わった巫女服を着た少女......博麗霊夢は、真新しいガラケーをしまって、言葉を吐いた。彼女がいるのは、周りに人っ子一人いやしない、空気の張りつめた戦場だ。


昔は彼女も隅で膝を抱えて怯えていただろうが、今の彼女は博麗の巫女である。幻想郷を守るのは、彼女だ。



「んー......まだ里は無事ね」


彼女の追う敵は未知なもので、まだその能力の全容が知れない。どんな効果か。範囲か。


手探りな分、通常の妖怪退治よりも手間がかかるのは仕方の無いことだった。


今も、近くにいるはずの敵の気配が感じられない。この辺りの妖怪には見られないものだ。


そも、妖怪が暴れる要因の大半は遊びか単純な暴走であり、気配を消す、という無駄な手間はあまりかけない。遊び相手や暴走をぶつける相手に見つけられないからである。


「─────在らせよ。在らせよ。在らせよ。我らが根源、その混沌。在らせよ。在らせよ。在らせよ」

「相変わらず不気味ね.....」


気づけば、里の上空には墨のような黒い躰をした異形がいた。躰の周りは不定形で、何かがこの世界と違う、まるで世界に存在が合っていないような、そんな不安定さを感じた。


そんな邪神のような姿を見ても巫女は狼狽えることなく立ち向かう。


「あなたが居ると、落ち着いてお茶も飲めやしない。さっさと死に絶えなさい」


そんな口上と共に、空を飛び接近し、手にしたお祓い棒から色とりどりの弾幕を照射。敵の動きは鈍く、また図体も大きいため、容易に命中した。最も─────。


「......在らせよ、在らせよ。我が深淵の願い、その覇号。在らせよ」

「........やっぱり、効かないのよね。はぁ、嫌になるわ」


当たったところで、あまり効かなければ意味は無いが。六本ある二対の腕のうち、左側を狙った攻撃は少し体積が減ったものの動きを止めるには至らない。


もっと。もっと、攻撃を。


”スペルカード発動“


「霊符『夢想封印』」


虹色に輝き、相手を縛る球形の弾幕は確実に相手を包みながらダメージを入れていく。


そして、ダメージが入ると、相手はもちろん反撃をするわけで。


「『lagravite12ausgang8000』」

「......へ?」


霊夢は異形がどんどん高度を上げていくことに、否。自らが落ちていくことに困惑する。


能力が無効化、もしくは相殺された。その事実を理解した時には、もう地面は目と鼻の先に見えた。


さて、王道な物語ならここでヒーローが駆けつけて颯爽と彼女を救うだろう。でも、それは夢見に過ぎない。なぜなら彼女がこの幻想郷におけるヒーローだから。


ああ、なんと可哀想な。ヒーローは助けて貰えないなんて。......なんて、そんなことはお構い無しに異形は力を振るう。確実に障害を潰すためめ。



「『lagravite700,ausgang890』!」


“スペルカード発動”


「憧憬『マスタースパーク・博麗』」


瞬間、声がしたかと思うと目の前を一筋のビームが.....いや、激しい熱線(マスタースパーク)が迸る。


嗚呼。確かに、ここのヒーローは彼女しかいないだろう。でも、それはここ(幻想郷)の話で。



─────人助けができるのが、ヒーローだけだと、誰が言っただろうか。彼女は救世主(ヒーロー)ではなく、ましてや悪役(ヒール)でもなく。


ならば何か。


『さあね』


「えー、ここで負けちゃうの?だから私達は歴代東方で苦労するんだよ....まあ、実力のせいだけど」

「くっ......ぁっ───」

「やあやあ、博麗の巫女の霊夢ちゃん。霊夢は普通のやつだけしてればいいの。ここはね───」


現れた正体不明(はくばのおうじさま)は、少し皮肉った窘めを言いながら、腕をもがれて尚蠢く異形に向かう。


「私の独擅場なんだから、さ」


さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。今宵始まるは異形と異形(いぶつ)の死闘にてございます。

完膚無きまでの蹂躙劇をぜひ、この機会に。



─────:紬side


「終わったぁ......」

「紬、あんたやっぱぶっ壊れよ」

「何だ、起きてたの」

「そりゃあ、痛いしうるさいしね」

「あはは、それはごめん」


あいつを倒して霊夢のもとへ向かうと、少しボロ姿になりつつもジト目を向けてくる霊夢の姿があった。


「それで、里の被害は?」

「来る時に見たでしょうけど、なしよ。ま、私が怪我したことくらいかしら」

「そう。最近いなかったのにね、『剥がれ者』」


剥がれ者。もともと幻想郷じゃなくて、私の世界にいた怪物。まあ、世間には知らされてない私の家が代々抱えてきた代物なんだけど。


そいつらを殺し尽くすのが天綺家の使命。剥がれ者は、大抵は何か不安定な不定形が多い。


それがレベル一とすると、レベル二は何らかの生物の形を象る。能力も強化、追加される。先はまだまだあるけど、今はいいや。


で、その剥がれ者が生まれる原因はまだ分かっていなくて、それを探るのも役割だったりする。


なので、一部なら判明している。有力な一説では、世界線から剥がれ落ちた可能性がどうのこうのらしい。詳しくは分からないけど。


「そんな頻繁に来るわけじゃないし、放置でいいと思うけどね。私強いし!」

「未だに紬しか倒したの見た事ないし.....こいつらなんなのよ、本当に」

「だから、外来生物だとでも思えばいいんだよ。在来生物を喰らい尽くす、外来生物」

「よく分からない例えね」

「私もそこまで真面目に取り組んでなかったからよくは知らないんだよね」

「それでも、警戒はするからね。出現が続いているのは事実だし」

「うん。当分はそれでいいと思うよ」


それにしても、久しぶりに戦ったから緊張したなー。ある意味、戦い慣れてる剥がれ者が相手でよかった。私、あいつら特攻だから妖怪とかだとちょっと手間かかるんだよね。


「ね、霊夢」

「なに?」

「幸いなことに、お団子屋さんの方に被害はないし.....行こうよ?」

「あなた、意外と肝が据わってるわよね」

「霊夢に言われたくないけどなあ。妖怪に異様に当たり強いし」

「あれは.....忘れなさい」

「あ、じゃあ奢りね?二本、いや三本で!」

「魔理沙並に図々しくなってきたわ」

「何か言った?」

「......別に?」

「じゃあ早く行こうよ!あそこはね、前に華扇と二人で行った─────」


私達は無事退治が終わったことを連絡してから、その場を後にした。お団子.....みたらし?あんこ?それともあんみつ?んー、全部食べよ!

近々、人物紹介を入れます。そうですね、十話超えたら入れることにします。

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