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あの日夢見た幻想郷~Wanted My Whereabouts  作者: ルーミエル
第9.5作「東方文花帖」
1/8

七夕記念SS〜お雛様と願い事

※注意:この話ではまだ未登場のキャラが出てきます。また、時系列も現在から一、二年程経過している設定です。そのため、今後の物語と矛盾する可能性があるため、一種のifストーリーとして読んでください。それでは、お楽しみください。



今日は七月七日。つまりは七夕の日である。


私が知っている知識と言えば、なんか牛飼いと織物織ってるお姫様がなんやかんやで結ばれたけど、そのせいで仕事をサボりすぎて各々の親に叱られ、罰として一年に一度、天の川をカササギに乗ってしか逢うことが出来ないようにされた、ということ。


ぶっちゃけ、今だとそこまで意味が無い約束に見えるけど、星々を渡らなければ会えないとかいう鬼畜な設定にしたのは誰なんだろうか。これが現代であれば、電車とか飛行機で半日もかからずに会えるのに。


まあ昔話とはそんなものだと納得することにして。そんな今日はもちろん、『和』が主な幻想郷なだけあって、里では大々的に七夕を行っていた。里を歩けばみんなの家に笹と短冊。店を覗けばお餅とか、彦星・織姫の人形や衣装。


ああ、お餅は清蘭(せいらん)鈴瑚(りんご)の所、二人のところで買った。でもやっぱり、清蘭のとこは鈴瑚に一歩及ばない客足だった。


さて、そうして七夕一色の人間の里だけど、毎年、夜になると笹を守矢神社(もりやじんじゃ)に持っていくらしい。そこまでの道のりは魔理沙達やや里の妖怪等の人間に友好な態度を見せる者で守ってくれるらしい。あれ、相互不干渉じゃ.....と思ったけど、なんかいいんだって。お祭りムードってやつかな?


今はまだ夕方前の三時くらい。夏なので、暗くなるのはまだまだ先になりそう。夜までなんか暇なので、里をぶらぶらしている。


「こうして実際に見ると、なんか規模大きいなぁ」


今歩いただけでも笹の数は十を超えてる。それも、笹の数だけじゃなくて短冊も目一杯に下げられてる。何を願っているんだろう。少し見てみよう。


「えー、なになに.....『健康でいられますように』ね。まあ普通、と。次は....」


と、次々と見ていく。

『家族が幸せでありますように』

『仕事が上手く行きますように』

『子供がいい子に育ちますように』

早苗(さなえ)ちゃんが毎日里に演説に来ますように』 『鈴仙(れいせん)ちゃんが毎日薬屋として来ますように』


......あれ、なんか雲行きが怪しくなってきたぞ?


『団子が腹いっぱい食べられますように』

『違ぇだろ。ここは清蘭ちゃんに会えますようにだ』

『いやいや鈴瑚ちゃんでしょう。ほら、胸に着いたふたつのお餅が....』

『おま、ロングヘア舐めんなよ。しかも青髪だぞ』

『ショートカットを愚弄するか!』


......とりあえず三枚目からは処分した。流石に。というか、ここは議論の場じゃないでしょうが!え、まさかここから先ずっと議論じゃないよね?そんなので紙無駄に使わないでね?


と心配したけど大丈夫だった。え?なんでかって?よく思い出してみれば、二人の店の横に何か転がってるなぁって思ってたの、あれ人間の男2人だ。.....なむあみだぶつ。


それから先はちゃんと最初のような物が下げられていた。たまに妖怪らしきものも見受けられて、感覚がおかしいのもあるので夢中になって見てしまった。すると、団子屋(前に霊夢といったとこ)あたりでおばあちゃんが、余程楽しそうに見えてたんだろう、私に声をかけてきた。


「ほぇー......」

「ね、紬ちゃんや」

「ん......あ、おばあちゃん。どしたの」

「いやあね、短冊、楽しそうに見てたから。良かったら、あんたも書くかい?」

「え、あー、そういえばまだ書いてなかったなぁ.....うん、書いてもいい?」

「もちろん。ついでに団子、食べてっておくれ」

「ありがと、おばあちゃん」


というわけで、お団子持ってきてくれてる間に書いてしまおう。んー、願い事かぁ。正直、もうこの世界に来た時点で願い叶ってるんだよね。だから、ベタにお金欲しいとか、健康でいたいとか、必要ないだろうけど勉強上手く行きますように、もかな?


まあ健康とかは耐性とかで毒とか効かないし、お金は.....紫さんからのお小遣いが毎回多いので足りてるし。毎回六ケタだよ、お金。もらいすぎてるよね、これ。普通、私ぐらいの年齢だと五千円くらいだよ、たぶん。


うーん、.......あ、そうだ。

そしたら、パパっと書いて....できた、私の願い事は─────。


「はい、お団子」

「ありがと!いただきます!」


お団子が来たので食べます。うん、美味しい。美味しいから何本でも食べれちゃう。でも、そうバクバク食べると今日の夜ご飯の五目ちらし寿司が食べれないのでやめておく。今日はあれにししゃもとちくわ、それののり塩揚げが出るし。


「ご馳走様でした。おばあちゃん、これお勘定ね。ばいばい、また来るね」

「はいよ」



ふう、お団子も食べたので、先に守矢神社にでも行ってみようかな?










と、言うわけで早速やってきました妖怪の山。ここは元々富士山より高かった頃の八ヶ岳とか何とか。



そんな妖怪の山を進んでいく私。本来なら直ぐ天狗....(もみじ)たち、見廻りの白狼天狗に見つかって里に返されるけど、私はまあ天狗の長的な立場の天魔ちゃんと友達なので、フリーパス持ってるようなもの。気づかれても特に何も言われません。


川の近くを進んでいると、上流から何が流れてきた。なんだなんだと見てみれば、それはよく旧暦の三月三日に使われる、流し雛だった。


.......え、流し雛?この夏の時期に、しかも七夕に?


「あ、紬じゃない!」

「その声は.....雛?」

「そうよー!今日は七夕でしょー!だから流し雛してるの!」

「......いやどうしたらそうなるん?」


奥の方で雛────厄神である、鍵山雛(かぎやまひな)が笑顔でこちらに手を振りながら、流し雛をしていた。


え、なぜ流し雛?せめて笹舟とか、そういうのじゃない?


「雛、なんで流し雛してんの?」

「だって、今日は願いを叶える日なんでしょ?だから!」

「....なんでそこで順接の接続詞(だから)になるのか」

「ふぇ?だって、この前映画で見たじゃない。流し雛.....とはなんか違うけど、こういう行燈を川に流して願い事をするの!あれ、七夕じゃなの?」

「いや違います」

「そうなのー!?」


それはまた違う行事だよ、雛......。それは眠り流しという、ちょっと古い行事なんだ.....。

まあ、どちらも人形を使った厄祓いだから、似合ってはいるけど。


雛が驚いていると、今度はもう少し上の方から、バァァァン!と爆裂音が聞こえた。

ちょっとビックリして雛の抱き合って震えていると。あいや震えてないし。そういう気分。


「あ。紬、それに雛も!」

「にとり....それ、なに?」

「これ、機械?またなんか作ったの?」

「あ、気づいちゃう?やっぱり?ふっふっふ、聞いて驚け、見て驚け」


そう言って、にとりは後方にある巨大な機会を指さして、得意そうに言った。


「名付けて彦星と織姫をもう一度会わせてあげようマシーン!」

「.......え、ダサい」

「ひどい!え、でもかっこいいでしょ?機械は」

「うん、機械は」


名前から連想するに、これは......ダメだ、名前はそのままなのに内容がわかんない!なんだこれ!


「一応聞くけど、これなに?名前じゃなくて」

「この彦星と織姫をもう一度会わせてあげようマシーン君は、名の通り二人を七夕でなくとも毎日会えるようにするマッスィーンだ!」

「......ちなみに、どうやって?」

「え?そんなの当たり前でしょ、みんなの短冊ってそういう用途でしょ?ほら、二人を会わせたげるための」

「いや、違うけど」

「そうなのー!?」


あれ、なんかデジャヴ。雛もこんな反応してたような。って、二人とも七夕分かってなかったんかい!まあ、雛は一人を拗らせてたから仕方ないとしても、にとりは里に下ることもたまにでもあるでしょうに。


そんな二人に七夕の説明や、二人の話を聞いているうちに、もう黄昏時も終わろうとする頃だった。......あれ、なんか忘れてない?


「.....あ!守矢神社!」

「紬、どこか行くの?」

「うん。七夕最後のイベントに行く」

「「七夕最後のイベント.....!」」

「さあ行こう!今すぐ行こう!」

「そうね!みんなに会えるし!」


そういう訳で、私たち三人は急ぎ足で七夕の締めの会場である守矢神社に向かっていった。







守矢神社に着くと、周りにはもう大勢の参加者がいた。ここでお祭りを開くのは、ここに奇跡を操る能力者がいるからだ。それも、ここの巫女さん。


「あ、そうだ。あれを....」

「みなさん、お待たせしました!守矢神社巫女、東風谷早苗(こちやさなえ)です!これより、第七十七回目の七夕祭りを始めます!」

「「「「ウォォォォォォ!!!!!」」」」

「.....それでは早速、本日の短冊、ベストテンを発表したいと思います!」


よし、いい感じ。.....ん、ベストテン?

なんだろ、私の入らないだろうけど、けっこうきになる。


.......第四位まで発表されたけど、大体見たもので、面白みに欠けた。せめてベストスリーは新鮮なのがみたい.....。


「それでは、続いて第三位の発表です!だららららららら、らん!第三位は小野塚小町(おのづかこまち)さん!願いは『バレずにサボりたい』!.....あれ、これ言っていいんでしょうか」

「なんで言っちゃうんだよ!」

「ほう.....これはお説教ですね」

四季(しき)様!?いや、これは、あの、ちがっ」

「そこに直りなさい!」

「きゃん!」


「.....え、えっと、続いて第二位です!第二位は.....チルノさんで、これなんて読むんでしょう....あ、『さいきょーになりたい!』です!」

「.....え、チルノちゃん、そんなこと書いてたの?」

「だめ?大ちゃん。霊夢の奴に負けるから、明日にでも勝ってやるんだよ!」

「既に最強って言ってたよね!?」


「なんとも微笑ましい理由でした。えー、次はいよいよ第一位の発表です!だららららららら、らん!第一位は鍵山雛さん!願い事は.....『みんなと一緒に幸せになりたい』.....です!」

「え、私、一位?やった!」

「ここにいる皆さんは多分ご存知かと思いますが、雛さんはずっと孤独でした。なので、この願いごとはそういう意味もあって、皆さんが叶えたいと思うに至ったんだと思います。では!」


そういうと、早苗はマイクの代わりにお祓い棒を持った。雛があたふたしていたので、手を引いて壇上に連れていく。さあ、奇跡を見てみよう。



「うぅー.....んん.....えい!」

「.......光って、る?」


早苗が能力を使用したと同時に、壇上の台に置かれていた雛の短冊の文字が光を発する。

これは、早苗の程度の能力、『奇跡を起こす程度の能力』の効果だ。毎年、一位の短冊の願いごとをこうして叶えられるようにしている。

ただ、早苗はまだ、この力を十分に扱えないので、手助け程度しかできないが。


「ふぅ....雛さん、私もあなたの友達です。だから、こうして少しくらい、手助けさせてくださいね」

「.......ぅん!」


明かりは祭り提灯とこの場で光る短冊だけで、雛の顔は良くは見えなかった。でも、聞こえた声は涙ぐんでいて、多分泣いてた。だから、私はそっと雛を抱きしめて、声をかけた。


「これから、よろしくね、雛」

「ぅ、ん。よろしくね!紬、みんな!」

「「「「ウワァァァァァ!!!!!」」」」


祭り会場は、今日この日、過去最高の盛り上がりを見せた。


ちなみに、今日食べた五目ちらし寿司は本当に美味しくて、一人で大きいお皿半分くらい食べてしまった。あと、ししゃもとちくわも美味だった。

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