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聖女ではなくただの凝り性

「ちょっと…何を…言っているかわかりかね…ます」


失礼かと思ったが、ゲフゲフと咳き込み過ぎて涙目になりながら返答した。


あ、鼻が…ハンカチ、ハンカチはどこに。


手で鼻あたりを隠しながらキョロキョロしていたら、心配したリタリィナ様がハンカチを手渡してくれた。

いい香りがします。ありがとうございます。

家宝にします。



「だって、わたくしは幼い頃貴方に傷を治していただいたのを覚えています。いつ聖女だと名乗り出るのかと思っていたのですが、一向に名乗り出ませんし…」


リタリィナ様は不思議そうな顔をして私を見る。



そう、私は前世の記憶が戻って半年後ぐらいに彼女に会いに行った。

子供のうちに仲良くなっておこうと考えたからだ。


すると早めに転生したヒロインもどきに庭で襲われてるリタリィナ様を見つけ、救出した。


もう必死。

リタリィナ様に馬乗りになっているヒロインを木の棒で叩きまくりましたよ。



その騒ぎに気がついた警備が駆けつけてくれたからよかった。



ナイフで切り付けられ顔も腕も傷だらけになって泣きじゃくるリタリィナ様を見て、どうにかしてあげなければと謎の使命感から死ぬ気で聖珠を探し出た。


そして、幼いながらに頑張って深夜のリタリィナ様の屋敷に忍び込み秘密裏に彼女を癒した。



その後、聖珠が人の手に渡ることを恐れてある場所に隠し、それきり使っていない。


その時はリタリィナ様が寝ているのを確認して癒したし、子供の頃だから記憶が曖昧になっているはずだし、会った時に何も言われなかったから安心していたら…



ご存じでしたか。



「…きっとリタリィナ様がお優しいから、女神様からの加護ですよ」


鼻を拭きながら、焦りを顔に出さないようにとにかく誤魔化した。


じっと見つめられる。


多分わかってらっしゃるんだろうけど、それ以上は追求しないでくれた。


優しいなぁ。



そこから数ヶ月。



いつも通りに攻略対象に近づくヒロインもどきはいたものの、衛兵たちが排除してくれて無事にリタリィナ様の卒業の日を迎えた。


ちなみに私はリタリィナ様より一つ下なのであと一年通う予定。


卒業パーティーで第二皇子と踊るリタリィナ様はとても美しく、スチルではなく生で見れて幸せを噛み締めた。

他の攻略対象達も婚約者と仲良くしているので、無事にハッピーエンドを迎えそうだ。


マジで頑張った甲斐があった。



ただ、これで満足はしない。





>>>>>>

僕は乙女ゲームはやらない。


FPSや戦略シミュレーション、格闘ゲームやハンティングするゲームが好きだ。


ある日、妹が積みゲーになってしまっているゲームのスチルやストーリーだけ見たいからクリアして欲しいと、何本かの乙女ゲームを持ってきた。



お兄ちゃんなら簡単でしょ?


と、言い依頼費として一万円を置いて行った。



やるからには徹底する派なので、色々調べて全てのエンディングをだした。



乙女ゲームに触れたのはそれが最初で最後だった。



置いてかれたゲームのエンディングを全て出し、妹に届けに行く日。



道の途中で唐突にトラックにはねられた。


人通りの少ない桜並木。


走り去るトラックの後ろには、五つ葉のクローバーを3本くわえた赤い陸亀のマーク。



…なんだあのトラック。



いやそれより事故った場合って、鞄の中身警察にみられるのか?


地球にダイレクトハグをしながら考える。


チラリと視界に入るのは鞄からこんにちはしている、たくさんの乙女ゲーム。


鞄に財布と乙女ゲームだけ入った状態で事故って…


ふと、この後の展開を考える。



警察の死体安置室。


「息子さんの荷物かどうか確認して下さい」


鞄の中を見た両親は

「あの子は乙女ゲームが好きだったのね。私全然あの子をわかってあげられなかった」


「母さん、自分を責めるものではない」


「だってあの子は歴史好きだと思っていたから」


「私だってそう思っていたよ」


ひしと抱き合う両親。



って、なるのか?


…はっっず!恥ずかしいぞ!


絶対妹は何もフォローしない。

「私が預かっておくね」

って、ゲームだけもっていくはず。

そして、愉快な兄だと笑うはずだ。



早く起き上がらなければ!!



遠くに救急車のサイレンを聞きながら体に力を込めた。





そこからの記憶がない。

多分、間に合わなかったのだろう。



何故、乙女ゲームの世界に転生したかはわからない。


…鞄にたくさん入れてたからとか、そう言う理由だったらやだな。



ただ、転生したからには徹底したい。






>>>>>>

このゲームのエンディングについてだが

通常エンドは

 第二皇子 結婚エンド

 宰相の息子 結婚エンド

 騎士見習い 結婚エンド

 伯爵の息子 結婚エンド

 先生 恋人エンド

 魔法省の人 恋人エンド

 不細工商人と結婚 バッドエンド


隠しエンドは

 隣国の偉い人 結婚エンド

 卒業 ハッピーエンド

 修道院 バッドエンド


高難易度隠しエンドは

 ハーレムエンド

 聖女エンド

 処刑 バッドエンド


さらにもう一つ

…難易度激高のトゥルーエンドがある。



僕はそれを目指している。

聖女はいても聖男は居ない不思議。


閲覧ありがとうございます!

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