第9話 真に倒すべきモノ
なぜ、誰が、何のためにこんなことを…
向かう先々で壊滅したクニの残骸を目にする。
「一体世界中のクニグニを壊滅させてどうするつもりなんだ?」
「…もうこの世界には僕らと、ゲジ兄の所にいる子供達しかいないのですね」
「そんな中豊饒の地にのみ誰かの気配を感じます。それも特別強力で凶悪なモノをです」
「ですね。これはフツーじゃない」
「みんなを弔うには…真相を突き止めてワルモノをこてんぱんに倒さないと!」
「良きです笑 行くです!」
豊饒の地、今はその名と裏腹に閑散としていた。
中央に巨大なクニがあり、世界の王となったモノはそこに住まう。
今の王は確か…「セ=イフ」と言う名だったはず。
幹部として「イ=シカイチョウ」「セイヤ=クガイシャ」、外交を担当しているのが「マス=ゴミール」であり、彼が例の念波器を各クニへ配布していた。どう考えても彼らが怪しい。
「まずは話を聞きに行くです!」
石造りの玄室に彼らはいた。
「良くおいでましたね、ささ、お茶でも…スッー旦」
マス=ゴミールはそつなくすすっとお茶を差し出す。
「!?そのお茶だしスキル…?」
ゲジ兄は驚いて警戒を強める。
「まぁまぁそちらへおかけ下さい…私の計算ではみなさんに適切な角度に背もたれが調整されているはずです」
これまたどこかで聞いたような分析と計算ぷり。
「これは…一体どうなっているのですかー?」
ゼットンもその聞き覚えのある計算ぷりに仰天する。
「諸君等のクニの臣民達は実に世界へ貢献してくれている。おかげで見ての通り、世界の常識を超越できた」
「若いエナジーはすばらしいのう~」
イ=シカイチョウと呼ばれし老人が感慨深く述べる。
おかしい。一体どうなっているのか?
ただ、確実に言えるのは…彼らも何らかの理由で尋常ならざる強さを得ていることである。
「オマエ達は格別に美味そうだのう~♪こっちのガキ二人はちっともだがのうw」
(くやしいけどそのとおり…。完全に場違いなレベル…せめて足を引っ張らないように…)
「ゼットン君のように有能な場合は丁重に死んでもらうのだが、な」
(明らかに役不足と言いたげですね…)
「有能なモノは…死んでもらうだって?」
「その為にあなた達同士争うように、亡くなって頂くように色々と仕掛けさせていただきましたからね♪」
「僕たちのクニ同士の諍いも、仕組まれていました…?」
「強い諸君等が互いに殺し合ってくれると助かるからな…ハハハ」
「セ=イフ様、お戯れはその辺りにされてそろそろ…」
「左様であるな…小奴等を纏えば完璧となるであろうからな」
それぞれ体内エナジーを高めだした。凄まじい勢いで吹き上がり上昇していく。
同時に何やら何とも言えない懐かしい気配が…?
「宴の始まりじゃのう♪」
そう言って飛びかかってきた小柄な老人をゼットンは片手で受け止めようとするも受けきれず片膝をつく。
「よくぞ死ななかったのう。これは極上の獲物じゃのう♪」
受け止めた手に得も言われぬ違和感が。
「…?この感触…エナジーの気配…?」
「おお、何やら感づきましたね。感覚も申し分ないです。すばらしい臨床検体ですね」
「…検体…何だってオデたちゃ実験されているのか?」
「いえいえ…何も気になさらなくて良いですよ…」
「よけいなモノを取り除くだけじゃからのう」
「…ま、まさかです…ありえないですー!」
「そ奴は本当に賢いモノであるな。余が直々に使役してやろうぞ」
「とくとご覧下され!これがみなさんの行く末でございます!」
4体の身体がぼんやり光り出し何かが浮かび上がってくる…。
「…外道め!何て事しやがるんでい!」
ゲジ兄はいつになく激昂した。それもそのはず…浮かび上がってきたのは…
先日亡くなったはずの我が同胞たちであったのである!
「こんな…これでは攻撃も倒すこともできないですー!」
「みんな…ごめんなさい…!めーしゅ…守り切れませんでした」
「もしかして…みんなが浮かんでいない顔を狙えばイケるんじゃ?」
その言葉を聞くや否や瞬時にエナジーを高めた拳をセ=イフと呼ばれた存在に打ち込む!
辺りにもの凄い風が巻きあがる。打撃音は…ない。
「はぁ…はぁ…危なかったですー!だまされたですー!」
頭部も全て兜の如く盟友達で覆われていた。
「多少は抵抗してくれた方が楽しめるが、な。…参るぞ…!」
反射的にセ=イフの打ち込みを受け止めるとそこから悲鳴が上がる。
「…ご、ごめんみんなー!こ、これでは防御すら出来ないです!」
「…チッオデの素早さで全てかわしまくる!(それからどう手を打つ?)」
防戦一方となり、必死に二人はかわし続ける。
(マズイです…マズイですー!)
(こりゃスタミナ切れと共にヤバイぞ!)
セ=イフの攻撃はかなり凶悪で、当たれば今のゼットンですらただではすまない。
「みんなを…自分の力に利用しています…!その力…最低でも1000万以上!」
めーしゅが偵察してそう叫ぶ。
「ちょっと待て!いくら何でもそんなのどうしようも…うわ!…桑原桑原!」
(今の僕の全力でもどうにかなるかどうか…!)
背筋に冷たい汗を流しながらゼットンは考える。
「…みなさま!ヌプ…霊力を目に集中して下さいませ!」
(…?今のは…?)
声に従い行うと…ゼットンの得た力とは全く違い何やら紐のようなモノで無理矢理束縛されているのが見えた!
「…アレが…呪いか…!」
ヤチホコはスセリにスピリット…霊力を吹き込む…エナジー…氣力と霊力が融合し…
邪悪なヲモヒを断ち切る光輪に!
「破邪光子輪(悪神を祓う光の輪)!」
瞬く間に束縛が断ち切られ皆が解放されていく。
「…ゲジ兄!オレ等も力を貸すぜ!」
ア=ナーゴとtoraが半ば無理矢理ゲジ兄に戦霊兵装していく!
「イ=シカイチョウ…97%の確率で右季肋部に上方45度の角度で攻撃です!」
ユーリが高速演算で弱点を解析する。
「…了解ですー♪この感じかなー!」
ゼットンは大きく身体を傾け腕を回転させて渾身の一撃を放つ!
「…どうやら…セ=イフとやらから他のモノに対し指令が出ているな。ヤツを先に叩け!」
ヤブ師匠は敵の因果を見抜く。
「…なんか…緋徒となった今、もの凄いエナジーが溢れています!でも武術とか知らないしどうやって当てれば…」
「オレにまかせて下さい。一呼吸ですまします。」
「なるほど…今のめーしゅには完全に戦霊兵装出来ないが…十分だ!」
「何をしたところで大差ない!所詮ウヌ等は我々王族の糧よ!」
セ=イフは全力を込めた拳をめーしゅに向けて振り下ろす!
「きゃぁっ!」
めーしゅは反射的に目をつぶってしまったが兵装してきたみーくんの力によりオートモードで高速に体が動かされていく!
「回し受け…正拳正中五段!」
降りかかる凶悪な一撃を華麗に受け流し、カウンターで人中から丹田まで正中の急所に全力のエナジーを込めた突きを5発同時にたたき込む!
打ち込んだ五ヶ所が大きく膨らみ、あり得ない痙攣をしながらセ=イフは粉々に吹き飛んでしまった。
同時にイ=シカイチョウへゼットンの一撃が放たれた!
第7~10肋骨部より左鎖骨部まで衝撃が貫通した後、全身がはじけ飛びイ=シカイチョウは爆散した。
ゲジ兄は無理矢理戦霊兵装されて能力暴走状態で全ての手足を使い熱帯のスコールのような勢いで捻りを加えた鋭い手刀を凄まじい連打で浴びせまくる!
「うわわ!さ、千連螺旋貫通突!手がちぎれるわ~!!!」
蜂の巣状態に穴だらけとなりセイヤ=クガイシャはゆっくりとその場に崩れ落ちる。
三人が完全に沈黙すると…ゆっくりと皆の戦霊が離れていく…。
「みんな待って!いかないでぇ!」
めーしゅが叫ぶと微笑みながら皆が言う。
「大丈夫ですよ♪ 我々の還る所は…一つしかありませんよw」
破壊の女王の戦霊兵装がとけ元の姿に戻ったtoraが言う。
「私は…私も今回で卒業だったようです…迎えも来ています…次なる世界へ旅立ちます…めーしゅ、みんな…ごきげんよう」
「…toraさん…お疲れさま…ごきげんようです!次の世界でも頑張って下さい笑」
「…あぁ!まこち…ぱるえぼ…YuA…!そう…もう…苦しくも辛くもないのですね…アルマジリディアントも…そうですか…toraさんのこと…よろしくです…」
迎えに導かれてtoraは光の中へ去っていった。
残ったマス=ゴミールは…もう抵抗する意志もなかった。
まず、各クニの玉座を打ち抜いて封印している念波器を解放し玉座を回復させることを命じた。
今後は皆の為になるようなモノを放送すること、各クニの間で共生出来るように尽力することを誓わせた。
もともと強いモノに媚びを打って体勢が不利になるや否や糾弾するような輩であるので、ゼットンのエナジー全開の突きを寸止めでお見舞いし、脳裏に二度と消えない恐怖を刻んだ。
その瞬間恐怖の余り全身の体毛が抜け落ちてしまったらしい。
期待など全く出来ずに皆と共に崩れ去ってしまった我がクニへの帰路につく。
めーしゅもゼットンもゲジ兄もその足取りはとても重かった。
引退や退会をこんな感じで(^-^;
現在のリアルな世の中のすべての問題は黒幕のこの方たちのせいです(笑)
なので景気良く爆散してもらいました(^-^;
用語解説です。
ポタラ=悪神祓い
メル=光、輝く
アカム=(狩猟につかう)輪
これらはすべてアイヌ語です(^-^)
スセリ、つい自分たちの言葉で技名言ってます(^-^;