48 妹
私達はしゃがみ込んだ青年を立たせ、少し場所を移した。
出入り口で立ち止まって会話していては、何かと怪しまれることを恐れたためだ。
「いきなり話しかけてごめん。でもほんと、どうしたらいいかわからなくて……」
「えっと、とりあえず、事情を聞かせていただけますか? お願いを聞けるかどうかは、話を聞いてから考えます」
青年の話を聞くのも、ちょっとした賭けだった。
もしかしたらこれからの調査の手掛かりになるかもしれないし、逆に罠である可能性もある。
私達は、阿銅羅教に関心を持って教会を訪れた、街に住む一般市民を装うことを忘れないようにしなくてはと、コソコソと念を押し合った。
「妹が、ここにいるかもしれないんだ。もう長いこと家に帰ってきてなくて。俺、ここの教会にしつこくして出禁食らってて入れないから」
私と殿下は、顔を見合わせた。
「妹さんは、いなくなる前に何か言ってた?」
「……阿銅羅教仲間とだけで暮らしたいって。でも婚約も決まってたし、何言ってんだって周りもあんま相手にしなくて」
武大臣の言っていた、「寺院で集まって生活する」というやつだろうか。私達は、彼に話の続きを促した。
「阿銅羅教の教会に通い出した初めの頃は、元々塞ぎがちだった妹が明るくなって良かったなって思ってたんだ。でもだんだん、自分の考えを理解しない周りに対してイライラするようになってきて。で、仲間と~って言い出すようになったから、絶対ここにいるって思ってるんだけど」
「さっき、『教会にしつこくして』って言ってたわよね? 最初訪ねた時は、どういう回答だったの?」
「名前と特徴を伝えても、そんな人は知らない、いないの一点張りだった。中を見せて欲しいって言ったけど当然断られて、これ以上粘るなら警吏呼ぶって」
「……気にせず突破しちゃえば良かったのに」
私の発言に、青年は顔を起こした。
「できるなら、そうしてる。俺さ、この国の王城で兵士として働いてるんだ。そんな問題起こしたらクビになっちゃうよ……。家族にも迷惑かかるし、それは」
「そう、ごめん」
想像力のない自分を恥ずかしく思った。
誰もが思うがままに行動できるわけではないのだ。
「妹さんの、名前と特徴を教えて」
「見てきてくれるの!?」
「うん……でも。私達も、ここへ来るのは初めてなの。えっと、阿銅羅教に興味があって、話を聞いてみたくて来たから、その。もしかしたら入れて貰えない可能性だってあるし、それは許して」
青年は私の手を両側から握りしめ、ありがとうありがとう、と繰り返した。
「妹の名は、琉花。歳は18で、顔は俺とそっくり、このまんま女にした感じ。とりあえず、似た人間がいるかいないかだけでも見てきてくれたら助かる」
「わかった」
彼とは後ほど落ち合う約束をして、私は晃栄と教会へ向かった。




