47 教会へ
蛋撻を十分に堪能してお腹と気持ちを満たした私達は、いよいよ本来の行動に移ることした。
「やっぱ、まずは教会よね」
「え、いきなり?」
御前会議の時に、武大臣が言っていたはずだ。「教会の乱立と殺施王の建立によって、財政が逼迫している」と。つまり、国中に阿銅羅教の教会が作られているということで、最も人の集まるこの城下町にないはずがない。
阿銅羅教と失踪者の関係は想像に過ぎない、ということだったが、要はその事実を捕まえてくればいいのだ。仮説はできているのだから、その二つを結びつける場を調べるのが手っ取り早い。
「すいませーん、阿銅羅教の教会ってどこかわかります?」
「ちょ、香香……」
道行く人に尋ねると、その人は少し先に見える建物を指さした。てっぺんに金ピカの狸のような飾りが日の光を浴びて煌々と輝いており、この街中で一際目立つ存在だった。
教えてくれた人に礼を告げ別れた後、殿下がボソッと呟いた。
「お、お前さ……ほんと躊躇いってもんが、ないのな」
「そうかな。ま、早速見つかったんだし、いいじゃん? 行こ行こっ」
そうは言いつつも、歩きながら今殿下に言われたことを考えてみた。ーー躊躇いがない、か。確かに、最近は何か行動をする時にあまり物事を立ち止まって考えていないかもしれない、と思った。
元の名と立場を失い、そこから二転三転して今の、殿下の妃という立場に収まった。予定していたわけでもなく、望んだわけでもなく、ただただ流されるように着いた居場所だ。おそらく今の私には、この立場を守らなければ、という意識がないのだろう。なるようになれ、とでも言おうか。
だから「こうしなければならない」という規範意識のようなものは持ち合わせていないし、これからもそれに縛られるつもりはなかった。今まで、自分の意思を持たず、常に規範にがんじがらめになって行動していた反動なのかもしれない。
今の私は、無鉄砲で好き勝手しているだけかもしれない。
ただ、誰からも、自分自身からも、ああしろこうしろと言われることがないのは、こんなにも楽で楽しいものなのかと、改めて思った。
ーーこれが、本来の自分の姿だったのだろうか?
例の金ピカ狸を塔の頂上に据えた建物の入口が見えてきて、ひとつ深呼吸をした。
「よし、ここね。行くわよ」
「いきなり行って、入れてくれるかなぁ……」
「あ、あの! すみません!!」
私達が教会の敷地に足を踏み入れようとすると、突然背後から声をかけられた。
咄嗟に、王太子殿下を庇う位置に身を構える。
目の前には、私達より少し上くらいの年齢と思われる青年が立っていた。
「君たち、今から阿銅羅教の教会へ行くの?」
答えるべきかそうでないか、一瞬判断に迷った。
だが、行こうとしてたのは明らかであるし、そこを取り繕っても仕方がないかと素直に答えることにした。
「ええ、そうですけど」
「お願いが、あるんだ。中で人を探してきてもらえないかな」
青年は悲痛な面持ちでそう頼み、地面に膝をついた。




