29 公開処刑3
※本来のストーリーはR18指定です。
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由貴妃の独壇場だった。
ふとある疑問が私の頭を掠めた。
「国王陛下は、この状況はお怒りにならないの?」
彼が最も大切にしている愛妃が、他の男の身体に触れているのだ。処刑のため?とはいえ、許せるようなものなのだろうか。その疑問が思わず口を突いて出てしまうと、黎がボソッとそれに対する答えを返した。
「大丈夫です。これが国王陛下のご趣味ですので」
……趣味。妃が他の男と何かをしているのを見るのが趣味、ということだろうか。黎はこれ以上は語らない、というように、視線を前に戻した。
その下にいる殿下を見ると、顔が真っ白だった。
「殿下、大丈夫ですか」
「ぁ、ぁぁ……なんとか……」
処刑を見ること自体、慣れてはいないだろう。その上、こんなことが行われていれば、血の気が引くのも無理はない。
「あらあらぁ、困ったわ」
由貴妃の声が、再び響く。
「こんなんなっちゃったら、手術ができないわねぇ」
由貴妃は師団長の状態を見て、わざとらしく嘆いてみせた。そして台車から板ごと彼を地面に降ろさせ、その側に座り込む。
「これはもう、一旦昂った気を抜かなくちゃダメよね。ふふ、失礼するわ」
ここから先は、言葉にするのも憚られる。まさに鬼畜以外に表しようのない、普通に生きてきた人間では到底理解の及ばないおぞましい所業が行われた。
涙を流しながらきつく睨む奥さんが、抵抗しすぎて縛られた縄のあたりから出血しているのを見るのは息が詰まりそうだった。
「……ぅ、だめ……吐く……」
隣にいた殿下が、袖で口元を押さえて小さく言った。付き添おうかと思ったが、私も行ったら菖蒲もそれに付いてこなくてはならなくなる。
「菖蒲、まだ、見る?」
「私は……最後まで見届けたいです」
その答えを確認し、殿下の退席の付き添いは黎に任せることにした。
「み、見るな……見ないで、くれ。ごめん……ごめん」
消え入りそうな師団長の声が、うなだれた奥さんの頭に弱々しくかかる。その世にも悲壮な様に、誰も何も言うことができなかった。
「ふふ、ごちそうさま! さぁて、次の演目に行くわよぉ! お待ちかね、宦官公開手術でーす」
由貴妃がパンパンと手を叩くと、医師達が続々と入ってきた。彼らは手際良く彼の身体と周辺を清拭してから一部を紐で縛り、湯をかけて消毒を始めた。
師団長はもう何も抵抗せずぐったりと、ただ虚空を見つめていた。
「奥様奥様、下を向くのはまだ早いわ。今からほら、切っちゃうから。ついてる最後の姿、見とかないとぉ」
そう言って既にボロボロに乱れていた彼女の前髪を片手で掴んで、上を向かせた。ギリギリと猿轡を噛み締める音が聞こえてきそうな、激しい表情をした奥さんが由貴妃を睨みつける。由貴妃は満足そうに微笑み、将軍の方を振り返った。
「菖将軍、お待たせぇ。前座はいかがだったかしら? 貴方の大事な大事な息子さん……美味しかったわ。もうこれだけでお腹いっぱいって程よねぇ。でもね、本番はこれからなのぉ」
「この……悪鬼が……」
医師の一人が、小さな鎌のようなものを構える。
由貴妃は観衆に向かって、再び注目を促すよう呼びかけた。
日の光が鎌に反射し、ギラリと周囲を照らす。
そして静かに、執刀は行われた。
師団長が小さくうめいたが、彼の下半身には数人が群がって何か処置をしており、その中までは見えなかった。
私は震える菖蒲の手を、もう一度きつく握りしめた。
由貴妃は、彼らから何かを受け取って、奥さんの目の前へそれをボトッと雑に落とした。
「はい奥様。ご主人の、男の部分よぉ。大事にしてね! 死んだらお家に返してあげるから、一緒に埋葬してあげるといいわ」
「……ぅっ……ぐっ……」
楽しそうに嬉しそうに、それこそ舞台上で歌い踊るような由貴妃を引き立てるように、菖李師団長と奥さんの低いうめき声が、虚しく響いた。
「あら? あらあらあら」
由貴妃が、驚いたような声を上げた。
奥さんの脚の間から血が滴り、みるみるうちに血溜まりを作っていく。
「……もしかして、妊娠してたのかしら? それで、師団長もあんなに反応が良かったのねぇ。……ふふっ、ふふっ。あーはははっ!」
切除後の苦しみに悶える師団長と出血してしまった奥さんは、それぞれ静かに舞台から運び出されていった。




