24 御前会議2
今のこの状況だけ見れば、理解のない臣下たちに糾弾される悲劇の王妃とそれを守る国王、といったところだろうか。
広間の中のどこからか、声が上がった。
「国中に乱立する阿銅鑼教の教会、そして由貴妃の提言で建立した"殺施王"について伺いたい。あの建設には莫大な資金が使われましたが、一方で阿銅羅教による労働人口の減少により税収は下がっており、国庫の資金はひっ迫しております。財政難が懸念されている中、一体何のためにあんなものを建設されたのでしょうか。また、資金の回収はいかがされるおつもりですか」
シュッシュと頭から蒸気を上げる国王は、発言者の方を振り返って言った。
「貴様に発言を許可した覚えはないポォン。……だが、答えてやるポォン。殺施王は、我々王政側と民衆を効率よく繋ぐ素晴らしい劇場だポォン。あそこには多数の人間を収容でき、その誰もが中心にある舞台を観ることができる。阿銅羅教の講演をそこで行えば、民に広く理解を深めてもらうことができるポォン」
「一宗教の布教のためだけに、あんなものを作ったというのですか」
「国民全員が阿銅羅教の教えを実践すれば、必ずや国は豊かになるポォン。むしろ今乱れているのは、阿銅羅教に反対する貴様らのせいだポォン。新しい価値観を排除しようという保守的な考えが混乱を生んでいるんだポォン」
「国庫に関するお答えになっておりません」
「税収は下がっていると言ったポォンな? 徴税として見ればそうかもしれないが、阿銅鑼教からの国への献金は莫大なことは知らぬのか。全体で見れば減ってはいないポォン」
「……その献金は、今後も継続されるものかどうかわかりません。また、出処が不明です。信者から巻き上げた金の一部を献金と称して国庫へ渡し、規制を逃れているのではありませんか。労働者たる若者が阿銅鑼教へ流れていくことは、将来的に産業の衰退や税収減を招くことになると、危惧しているのです」
「阿銅鑼教が悪いというポォンか!? 阿銅鑼教は民を救う宗教だポォン! 民なくして国の発展はないポォン! ポォンポォン!」
しんと鎮まり返ったこの広間の人々は、みんなどのようなことを思っているのだろうか。まさか初めて参加した会議でこのような激しい攻防が行われるとは、想像もしていなかった。御前会議と言うから、もっと形式的な淡々としたものだと思っていた。
「私、私は……陛下のため、そしてこの朋央国のためを思って……信じていただけなくて、悲しいです……」
「由貴妃……ポォン……」
由貴妃は人前ということも憚らず、はらはらと涙を零した。か弱そうな、幸薄そうな顔が、より一層彼女の悲壮感を強調した。
「……阿銅羅教、そして由貴妃を侮辱するのは、朋を侮辱するのと同じこと。近衛兵、今すぐ菖将軍と武大臣の首を落とせポォン!」
国王の命により、将軍と、殺施王について苦言を呈した大臣がその場で捕らえられた。
(い、今? 今この場で処刑を行うの……?)
今日一番のざわめきが起きた後、自然としん、と静かになる。その中で、涙を流していた由貴妃が顔を上げ、国王を止めた。
「お待ちください、陛下」
一同が一斉にそちらに注目する。彼女はこそこそと国王に耳打ちし、国王はそれを受けて頷いた。
「処刑は、三日後に行うことにするポォン。由貴妃に感謝することだな。殺施王の記念すべき初舞台は、貴様らの公開処刑だポォン」




