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1. 憧れの王子様はお嬢様に片想い

初日3話更新します。

嘘じゃありません(4月1日)

 私の憧れの王子様は、騎士である私が護衛するお嬢様に片想いをしている。


 私がお嬢様の護衛として付き従っていると、ご令嬢の甲高い声が幾重も重なるのが聞こえてきた。

 六人ものご令嬢が集まる真ん中で、一人だけ飛び抜けて見える燃えるような赤い髪。

 あのお方こそが私が憧れるバートランド殿下だ。

 

 鋭い瞳を崩さずに、王族らしい気品を放っている。

 今日も周りに集まるご令嬢一人一人に、丁寧に愛想を振りまいていた。

 

「また会いに来てくれたのか? 嬉しいよ」

「そのレースは新作か。よく似合ってる」

「今日の髪型も素晴らしいな。まるで君のためにある髪型のようだ」

 

 見ての通り、タラシ……コホンッ、もとい社交性にとても優れたお方だ。

 

 私がお嬢様と遠巻きにその様子を眺めていると、殿下はすぐにこちらに気づき手を振った。

 殿下は「すまない」と一言でご令嬢たちを交わし、ドレスの合間を抜ける。

 

 

 足早に歩み寄ってきた殿下は、キリリとした目元を優しく細めた。

 少し着崩した胸元からは盛り上がった胸板が見え、それがなんとも言えない色香を放っている。

 大きな輪っかの耳飾りが異国情緒を思わせ、このお方が隣国マクスタットの王子であることを象徴している。

 先ほどのご令嬢に囲まれていた時とは違い、鋭い相好を甘く崩している。

 

「グリーゼル、今日も一段と美しいな。オレに……会いに来てくれたわけではないよな?」

 

 躊躇いがちに聞いたのは、グリーゼルお嬢様がすでに他の方の婚約者だからだ。

 

「いいえ。レオ様がバートランド様も一緒に手合わせはいかがかとおっしゃっていまして」

 

「……そうか。オレも是非やりたいと思っていたところだ」

 

「レオ様」とお嬢様が呼ぶのを聞いて、殿下は一瞬止まった。

 その殿下の表情に切なさが滲んだのは、きっと私の気のせいではないと思う。

 お嬢様が婚約者であるレオポルド殿下を愛称で呼ぶようになったのは、つい最近のことだ。


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