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おねえな私と金髪なあの子

作者: tani

ほおずき団地の今日のお話。

 

 緊張したぁぁぁ・・・


 悠人は401号室の扉を閉め、そのまま玄関に座り込んだ。心臓がまだバクバクと音を立てているのがわかった。


 遡ること10分前のこと。

 悠人の住む団地の広場を部屋から眺めていると、ドウダンツツジの木々の間に座り込んでいる少女の姿を見つけた。ちょうど真下の部屋に住んでいる高校生で、軽くあいさつするくらいの関係である。あの場所で本を読んでいる姿を、あの子が幼いころから知っている。

 幼かったあの子ももう高校生になった。自由な校風の高校らしく、入学を機に髪を金髪に染めてみたらしい。初めて見たときは、グレてしまったのかと一瞬考えたが、あいさつをすると今まで通り礼儀正しい子でなぜか安心した。自分自身も金髪なくせに。

 前々から話してみたいと思っており、今日、ついさっき、持っている勇気を全て絞り出して、話しかけに行ったのであった。


  私、変なこと言ってなかったかしら


 そう、悠人はいわゆるおねえである。かわいいものが好きだし、趣味はお菓子作りだが、恋愛対象は女の子だ。初対面でいきなりおねえっぽい言葉遣いで話したら引かれるのではと思い、気を付けてめちゃくちゃ敬語で話しかけてきたのであった。


  気になる子の前ではかっこつけたいじゃない


 話したのはものの数分であったが、あの子も自分と話してみたかったということが分かり、それだけで今の悠人には十分すぎるほどうれしかった。


  でも、本当の私を知ったらあの子はがっかりするわよね…


 悠人にはそれが気がかりだった。純粋なあの子のことだ。軽蔑こそしないだろうが気を使わせてしまうかもしれない。せっかくあの子が自分に憧れてくれていたことを聞けたのだ。失うにはまだ早すぎる。


  私もあの子みたいに真っすぐ気持ちを伝えないと


 年上のくせして情けないと自分でも思うが、あの子の気持ちに正面から向き合いたい。勇気を出して話してくれた、少し引っ込み思案なあの子に。

 君のことを見つけたときに、君に僕も見つけてもらったから。


ほおずき団地という名前の架空の団地を舞台に、そこに住む人々のさまざまな日常を描いています。一話完結の物語ではありますが、この話に出てきた人物が別の話にちょこっと登場することもあります。ぜひ、ほかの小説も読んでいただけると嬉しいです。

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