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4 下克上


フワリフワリ--あれだけ苦労して登った山も、落ちれば一瞬の距離。


スタッ 着地した所で(今戻って来るのを分かってたかのように)待っていたのは、


「おかえりなさいませ」


『ご主人様』って最後に付ければメイドさんみたいだけど、現実は見た目こそ若いだけのババア。


「なんですの? そのガッカリしたような顔は。普通、わたくしを見た者は『美しさに見惚れる』か『恐れ慄く』というのに」

「見慣れてるし僕の方が可愛いし末恐ろしいからな」

「頼もしい孫で」


そんなわけで、入り口まで戻って来たのだ。


車に乗り、来た道を戻る。


「それで、どうでした? 『可愛い子』は居たでしょう?」

「居たねぇ。デカイムカデと自分を神様と自称するイタイ子が」

「ふふ……まぁ今はそういう認識でも構いませんわ」

「あの子、おばぁとはどういう関係なの?」

「大分昔からわたくしが世話になっている方、ですわ。なので、あの方が困っていた際は絡新が手を貸す事で恩を返す事にしています。貴方の母も貴方と同じ頃、あの方の頼みを訊きに山を登ったのですよ」

「ふぅん。絡新の跡取りとしての力量を測るチュートリアルクエスト、って感じなのね」

「あの方は今回、どのような依頼を?」


僕は話す。

中身の無いあのフワッとした依頼内容を。


「ふむ……この町に危機、ですか。あの方の治めるこの町もウチ(絡新)のシマ……見過ごせませんわね」

「ならもうおばぁ達でやってくれない? 恩があるならヒトに丸投げしちゃダメでしょ」

「何をおっしゃって。貴方も立派な絡新。この件は貴方が一番適任とわたくしが判断したのです」

「適当な事言いやがって……」

良いように使われるのもしゃくだな。

「ああ、そうだ。仕事済んだら『欲しいモノ何でもくれる』って言ってたよね」

「用意出来るものに限りますが、何です?」


「おばぁの『ポスト』」


「オホホホ」


おばぁは笑う。

別にそれは、小馬鹿にしてるとか、キレてるとか、そういう類いのでは無くって。


「……! ……! (ガブガブ!)」

「ちょっと膝丸ー、人の頭齧んないでよー」


大方、『カアラ様を怒らせる事言うな!』という僕の身を案じての抗議だろう。

ビビるんじゃねぇ。


「ふふ、待っていれば確実に手に入るモノなのに、今すぐ欲しいとは、本当に頼もしいですわ。理由を訊ねてもよろしくって?」

「だってー、昔からおばぁを見てると『楽そう』だしぃ?」

「うーん、そう見られてたのならわたくしにも落ち度がありますわね」

「えー、でもフカフカの座布団に座ってふんぞりかえってればいいポストでしょお?」

「ある意味では間違ってないのがまた。そも、全体的にどんな仕事内容かぐらい把握しているでしょう?」

「ヤのつく自由業でしょ?」

「それも間違って無いのが……いえ、ウチは健全な宿泊業ですわよ。側で見ていたなら分かるでしょう?」

「健全なんて嘘だいっ。女の子はみんなエッチな着物着てたもん! エッチなお店だいっ」

「ぐぬぬ……」

「ほっほっほ、『冥府の女郎蜘蛛』も、坊ちゃんには敵いませんな」


と。

運転席の方からジジイの笑う声。

品のある白髪ヘアーとダンディな白髭が似合う、おばぁの専属運転手だ。


「ひと月振りだねシゲさん」

「ほっほっ。挨拶が遅れて申し訳ございません、坊ちゃん」

「お孫さんは元気かい? つっても、まだ見た事ないけど」

「へいっ、今は絡新でお世話になってます。『いつか』頭を引っ叩いて挨拶に向かわせますので」

「ま、それは急ぎじゃ無いよ。っと脱線したな。おばぁ、はよ引退せえ」

「良い感じに逸らせたと思ったのですが……本気、なのですね」


おばぁは顎に手をやり、少し真剣な顔になって、


「本人がこれだけやる気を見せているなら、逆に良い機会かもですわね。わたくしも、貴方と同じ歳の頃には既に前身の組織を作っていましたし……分かりました。考えておきましょう」

「わぁい。これで不労所得がガッポガッポだぁ」

「……言っておきますが、暇では無いですからね?」

「そこは『働き方改革』よ。おばぁは部下を信頼してもっと効率良く使わなきゃ」

「……頼もしい限りですわ」



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