call
昔は電話が好きだった。友達とするのも、恋人とするのも、好きだった。
電話の声はなんだか普段の声とは違う。ちょっと低かったり、高かったり。優しかったり。
顔は見えないけど、声の色でどんな顔か想像する。それが楽しかった。
今日のことを話して、昨日のことを話して、明日の話をする。
デートの前夜は待ち合わせの時間を確認して、どこにいこうか話す。
なんとも幸せな時間。そんな電話が好きだった。
でも、今は違う。
会いたいって伝えると、電話しよっかと言われ、電話をする。
はじめは声がきけてすごくうれしい。やっぱりすきだなあ、この声って思う。
優しい声。小さな声。彼の重みできしむ椅子の音。遠くからきこえる救急車。
電話をするとつながる。彼と。
今日はなにしてた? という会話からはじまり、お互いのことを話す。
彼の一日をきくのが楽しい。幸せ。
そこに自分がいれたらもっと幸せ。
そうしだいに思ううちにつらくなる。苦しくなる。
会いたくなってしまう。
抱きしめてほしくなってしまう。抱きしめたい。
でも彼はそばにいない。
すぐ会える距離じゃない。
なんとかドアがほしい。はやく開発してほしい。
彼に会いたい。
電話をすると会いたくなる。
昔はそうじゃなかった。
電話をしたら満たされて、いい夢がみれた。
今は彼のことを思って寝れない。
だからこうしてわたしは文字を打つ。
あなたへの思いを綴る。
だいすきよ。はやく明日になあれ。
明日でもあなたに会えないけど。会えるのはあさってだけど、
おはようの文字が読みたい。
だからはやく、朝になあれ。