4.婚約者候補
拙い文章ですが、楽しんで頂けると嬉しいです。
エマ・フォスター嬢に初めてあったあの日から、ダリウス王子の食事量は二倍に増えていた。
少しでも外見がマシになるように、少しでも好かれるようにとの思いからだった。
そしてダリウス王子は今日も騎士団の練習場へ来ていた。
「クレート、今日も付き合ってくれ」
「構いませんよ。しかしダリウス王子…少し身体が大きくなりましたか?」
「ほんとうか!」
騎士団長の言葉に喜んでいるダリウス王子だったが、
大きくなる=太ることに成功した
ではなかった。
「はい、筋肉が大きくなりました」
「…肉はついていないか?」
「まったく付いていない訳ではありませんが、王のような美しい脂肪のつき方では……申し訳ありません」
「謝るな…俺もそう思っていた」
「兄上!」
ダリウス王子とクレートが模擬戦をしようとした所にイーノス王子が声をかけた
「イーノス?珍しいなこんな所に」
「父上が兄上の事を呼んでこいと」
「父上が?」
「はい、何でも婚約者が来てるとか」
「婚約者?」
「ダリウス王子、急ぎ支度を整えましょう」
「緑の間でお待ちですよ!」
イーノス王子と共にやってきたメイドとクレートに急かされる形でダリウス王子は練習場を後にした。
練習場にはニマニマと笑うイーノス王子が残っていた。
◆
「ダリウス、急に呼び出してすまなかったな」
「いえ、私の婚約者が来ているとか」
「初めまして、わたくしルミーヌ・シャヌマンと申します」
ダリウス王子が部屋に入ると同時に頭を下げる女性がいた。
名前はルミーヌ・シャヌマン。
シャヌマン男爵の一人娘である。
『人は見た目ではない、中身が重要』だとお茶会で話す姿をみた王妃がダリウス王子の婚約者として声をかけたそうだ。
「ルミーヌ嬢、顔をあげなさい」
「はい」
国王の声で顔をあげたルミーヌ嬢であったが、ダリウス王子の姿を見て固まった。
「ダリウス・ハビフレア、この国の第一王子です。私の婚約者
「申し訳ありません!少し…具合が悪いので本日は失礼いたします…」
ダリウス王子の言葉を遮ると真っ青な顔で従者を連れて去ってしまった。
「父上…申し訳ありません。今回もまた…」
「…ダリウスすまない。彼女ならと思ったのだが」
「わたくしが…あの娘の言葉を信じたばっかりに」
「父上も母上も悪くありません…俺が、俺がこんなだから…俺なんかじゃなくてイーノスが長男だったら良かったのに」
「そんなことありません!貴方もわたくしの愛しい子です…優しく聡明な王子です」
ダリウス王子の婚約話は今回が初めてでは無かった。
過去に二人、婚約者候補を城に呼んだが、どちらも
身体が弱いので次期王妃にはなれません
と辞退されたのだ。
今まで誰も外見の事をいうものは居なかったが、乗り気だったはずの婚約をダリウス王子と会った次の日に辞退すると言うのはそう言うことなのだろう。
◆
ダリウス王子が去った部屋では両陛下が辛そうに話をしていた。
「どうして…わたくし達の子なのに…」
「病気では無いのなら…呪いの類いなのだろうか?」
「わたくしが悪いのです…ちゃんと産んであげられなかった…」
「ディーナ!お前は悪くない…」
両陛下は、見た目で判断されるこの国で、心優しいダリウス王子を中身で判断してくれるヒトがいることを切に願っていた。
◆
翌日、シャヌマン男爵家より謝罪の言葉と辞退する旨の書状が届いた事を両陛下から聞いたダリウス王子は、一人街へと出掛けていった。
あの水車の見える木陰にエマ・フォスター嬢が居てくれる事を願って。
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