3.恋に落ちた日
久しぶりの投稿になってしまいました…
「水車を設置してから1ヶ月…本当に水車で力仕事が減るとは…」
ダリウス王子は水車の廻りに多くの女性が居ることに驚いていた。
水車を作ったことで作物への水やりが楽になり、脱穀や製粉の力作業が女性でも楽にできるようになっていたのだ。
水車を造るように進言してきたのはこの国一の豪商、キンス・フォスターである。
小麦の生産が盛んな国には必ず水車があり、人が手作業で行うのは時間も人件費も無駄であり時代遅れも甚だしいと国王に直訴してきたのは半年ほど前。
通常であれば国王に直訴した時点で死刑になってもおかしくないが、そこはハビフレア国の流通の約七割を担うフォスター商会会長のキンスである。
この国で一番他国の情勢に詳しいと言っても過言はない。
そしてフォスター家にはこの国一、二を争う程の美貌をもつご息女が居る。
ゲンリフ国王がそのご息女、エマ・フォスターをダリウス王子かイーノス王子にと考えている事からも、フォスター商会への処罰が無いことには頷ける。
◆
「凄いと思いませんか」
「え?」
「あ、急にお声をかけて申し訳ありません」
木陰に座っていた少女は立ち上がり綺麗に頭を下げ「エマ・フォスター」と名乗った。
「フォスター商会会長の御息女様でしたか、これは失礼いたしました」
ダリウス王子は自分を「旅商人のダン」と名乗った
「まぁ!ではウチの商売敵ですのね」
「そうなりますね」
笑いながら答えるダリウス王子を見ていたエマの表情は固まっていた。
それを見たダリウスははっとした
「も、申し訳ありません。俺なんかが話していい御方ではありませんね…しかもこんな見た目で…申し訳ありません」
エマはその言葉に身体をビクつかせた
「い、いえ違うのです!私は貴方を素敵だと思っただけで」
「いいんです、この細すぎる身体、二重で大きすぎる瞳、誰が見ても気味が悪い…」
エマは「いいえ!」とダンの手を取り
「気味が悪いなんて事ありません!見た目はその人の個性よ、それに貴方の瞳の色はとても綺麗だわ」
ニコリと笑って言ったエマにダリウス王子は見惚れ、握られた自分の手をじっと見つめた。
「有り難うございます…貴女ほど美しい女性にそのように言ってもらえて嬉しいです」
握られた手に少し力を入れて言うと、そっと手を離しダリウス王子はその場を離れた。
◆
ダリウス王子は珍しく自室のソファでボーッと自分の手を眺めていた
「エマ・フォスター嬢…とても美しい女性だったな…」
俺なんか相手にされない事は分かっている…分かっているが、素敵だと言ってくれた事に少し期待してしまう。
もし自分が第一王子だと名乗ったら…
「同じ王子ならイーノスを選ぶか…」
この日、ダリウス王子は初めて恋に落ちた。
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