11.表具、表装のあれこれ
前回、落款のことを「化粧」と言いましたが、表具、表装はそのまま「装い」、「着物」や「ドレス」と言ったところでしょうか?
実は、中身がイマイチでも装いが立派だと、それなりに見えてしまうんですよね。
でもあまりに中身と装いがかけ離れていると、悪目立ちしてしまいます。
なので、いかに中身をセンスよく、品よく見せるかの腕が試されます。
あと、TPOにも合わせなければなりません。
特に、仏事や茶道で使用する掛け軸などは、決まり事が多いです。
掛け軸は元々、飛鳥時代に仏教の伝来と共に中国から日本に伝わったそうです。
起源は宋の時代に礼拝用に使用されていたことが始まりだとか……。
「掛けて拝する」という意味合いが強いそうで、桐箱に大切に保管されたりすることを考えると、とても神聖なものだと考えられていたことが伝わってきます。
その後、水墨画や茶の湯の発展などで、掛け軸もより芸術性の高いものへと変化していったようです。
私は掛け軸を一から作ってみたことがあります。
結果だけ言うと、シワシワになってしまい、失敗しました。
修業すれば、見られるものが出来るかもしれませんが、色々な手間を考えたら、やっぱり餅は餅屋、表具は表具屋にお願いするのが最善だという結論になりました。
とても良い経験にはなったので、挑戦したことに後悔はありません。
ものづくりが好きなので、とても楽しい時間でした。
ちなみに、本を見ながら独学で作りました。
シワシワですが、形は掛け軸です。
パネルなら、昔から美術の授業や部活動、趣味で絵を書くのによく作っていますから割りと得意なんですけど、掛け軸はさすがに難しかったです。
掛け軸にしろ、額装にしろ、作品本紙の裏に紙を貼り付けて、しわやたるみを防ぎ補強する、「裏打ち」が必要になります。
もちろん裏打ちも自己流でしたことがあります。
これは、失敗したものと成功と呼んでも大丈夫なものがあります。
ちなみに、今では簡単にアイロンで出来る裏打ちシートが販売されています。
説明書通りに使用すれば、失敗も少なく簡単に出来ます。
このシートを使ったものは、殆ど成功しています。
ご興味のある方は、ぜひ一度お試し下さい。
仏教と共に伝わった表具師のお仕事。
自分で体験して、その技術の素晴らしさを改めて実感しました。
これからも、表具師の方々に敬意を払って、可愛い子供達を託したいと思います。
「どうか、未熟な私の子供達を素敵に着飾ってやって下さい」と、他力本願なことを考えつつ、子供達が少しでも成長することを願って、精進します。
表具に失敗した自作の掛け軸です。
「こきりこ節」の一節を書いた調和体の作品。
(雅号が書かれているところは、隠させていただきました)
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お読み下さり、有難うございます。




