春、春
(翼side)
高校に入学して、2回目の春を迎えた。
といっても、既に5月。
旧暦で言えば夏だ。
クラス替え直後の浮ついた雰囲気はとうに無くなり、各々が仲の良い友人と戯れている。
友人という言葉が挙がったので紹介しておくが、俺の両サイドで爆睡している二人、隼人と雅紀は俺の友人。
そして、そろそろ気になっているであろう現在の状況を説明しておこう。
俺たち2年生は、親睦を深めるために1泊2日のキャンプを行うことになった。
学校から少し離れた山へ行くんだと。
登山をして、BBQで腹を満たし、テントを張って寝るらしい。
よくある流れだな。
このキャンプは2年生の恒例行事らしく、プチ旅行気分でバスに乗っているというわけだ。
親睦を深めるためにキャンプというのは安直な気もするが、たまには悪くない。
というか、ひとつ言わせてもらいたい。
こいつら、ふざけてんのか?!
バスに乗る前は
「バスん中で荒野抗争しようぜ翼!!」
「翼君!色々お話しようよ〜!」
とか言ってたくせに、乗って5分と経たないうちに、俺の肩に頭乗せて、すやすや寝やがった。
まぁ、目的地はそう遠くないから構わないんだが…。
暇すぎるのでみんなを観察してみる。
あ、関係ないんだけど、バスの一番後ろって何か良いよな。
空いててラッキー。
男子はスマホでゲームしてたり、女子は自撮りで盛り上がったりしていた。
他の奴らは窓の外を眺めてるか、寝てるかってところだな。
うん、特に収穫はない。
そして、俺も目を閉じてバスが到着するのを待つことにした。