表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転送屋スレイプニル  作者: 堀江すてる
3/19

戦闘

「転送術だと?お前も魔術師なのか?」

 俺を一瞥した女はそう言い放った。

「魔術師のくせに盗賊ギルドに身を落とすとは落ちぶれたものだな。このユズルナ様が一息に楽にしてやるからありがたく思うがいい」

 このユズルナと言う女は何かを勘違いしている。俺は盗賊ギルドの人間ではないのだ。しかし彼女は俺の気持ちに構うことなく俺の方に突っこんできた。

 彼女はさっき「お前も」魔術師か?と言った。ということは彼女も魔術師なのだろう。魔術師が戦闘に置いて敵に接近しようとするのはどうにも解せなかった。

 攻撃魔法の使い手であれば、離れたまま多彩な攻撃が出来るので、敵に接近するのは愚の骨頂と言える。自分の様な転送魔術師であればまだ敵に接近することは有効と言えるだろう。さっき自分を転送したように相手を転送すればよいのだから。遠くに転送して時間稼ぎをしても良いし、殺すつもりで行くのならば地面にでも転送すれば一瞬で終わらせることが出来る。

 彼女は俺が自分を転送したのを確認して俺を魔術師だと判断したのだろうが、転送魔法を見たうえで俺に接近戦を挑もうとするその姿勢は理解できなかった。

 走りながら彼女は右手を横に突き出している。

 反撃の姿勢を取っていた俺の目の前まで接近してきた彼女は、その右手を大きく横薙ぎに振るった。

 俺は何か嫌な予感がして、反撃には出ず、横っ飛びでその場を移動した。

 後ろからは高い金属音が響いていた。

 振り返ると、彼女の手には大振りの剣が握られていた。

「ほう、今のをかわすとはなかなかの判断だな」

 そう言いながら彼女は手に持った剣を至近距離から俺に向かって投げてきた。

 姿勢が乱れている俺にはかわせそうにない。

 精神を集中させ向かって来る剣に意識を集める。

 俺の鼻先数センチと言った所まで迫った剣の横っ腹を指で軽く撫でた。剣は俺の顔を串刺しにする軌道から、顔の横に突き刺さる軌道に転送された。

 今のは危なかった。なんとか上手くいったが少しでもタイミングが狂っていたら死んでいた。

 高鳴る心臓の鼓動を感じながらも、俺は怒りを覚えていた。

俺の話を全く聞かず、ここまでやられてはちょっとやり返す必要があるだろう。すぐさま立ち上がると、憮然と俺を睨み据えている彼女の腕にチョンと指先を触れさせた。

 何も殺す必要はないだろう。港の外の適当な場所にでも転送しようと魔力を発動させた。

 が、しかし彼女は何事もなかったかのようにその場所に立ちつくしていた。

 そんな馬鹿な……。この世に存在するものはある例外を除いて術者の意志に逆らう事は出来ずに転送されるはずだ。

 ある例外……。こいつはまさか召喚師か……!!

 彼女はその俺の考えを肯定するかのように、何も持っていない右手に、新たな剣を召喚する。

「まあ転送師にしては良くやった方じゃないか。だが相手が悪かったな……」

 彼女のその言葉を聞いた後、俺は後頭部に強い衝撃を受け意識を失ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ