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08 レインの弓の才

 

 レインがランニングにも満たないペースで村の入り口まで戻ってきた時、マキナリが馬に乗って駆け出していったところだった。


「お父さん」

「戻ったか。まだ子供なんだから、本当に遠くから弓で牽制してくれるだけでいいからな」

「はい」

 弓を僕がどれだけ練習しているか見ているのも父だったので、逃げろとは言われなかった。


「ちょっとグラスさん、まだレインは子供だぞ。さすがに邪魔になるだろ」

 僕の弓の腕前を知らない村の人が父に声を掛ける。


「大丈夫だ。さっき狼の眉間に矢を放って見事に殺して見せたんだぞ」

 そこに父ではない声が聞こえた。ビリーさんが現村長である祖父の家から戻ってきていた。


「本当か?」

「ああ。まぁ子供だから矢でしか援護出来ないけど、こいつの矢の命中力は保障するよ」

 僕の頭を撫でながら、村で唯一の狩人であるビリーさんが太鼓判を押してくれた。


「それなら安心だ。レイン頼むぞ」

「はい」

 僕は大きく頷き、村の入り口の柵を固めると僕達は森の方を見ながら警戒することにした。


 僕は今回魔物が来なければ良いと思っていた。しかしそれはさすがに虫が良すぎる話だった、

 森が騒がしい?ジッと見つめる森が徐々に騒がしく感じてきたのだ。


 次の瞬間、いくつかの野生の動物が何かに追われるように出てきた。

 その直後に現れたのは狼と人型の魔物であるゴブリンだった。



「ちっ、来やがったか。何としても村に入れるな」

「こっちには鍬とかもあるし、隙を突いて追い払うぞ」

『おう』


 村の男衆が二十人近く集まって防衛に専念する。

 対するゴブリンは三十と少しで、さらに狼が十数等確認することが出来た。


 村の見張り台に上がっていたレインはその数に流石に驚きを隠せなかった。

「・・・多い。何か考えないと被害が出るぞ。考えろレイン」


 目はそのまま魔物達に固定したまま考えていた時だった。レインはあることに気がついた。


「あれってリーダー?ならあれを潰せれば 」

 僕は念のために見張りの台から身を乗り出して、気になる魔物を一体ずつを鑑定する。

 〔鑑定〕→〔魔物 成体 ゴブリン 3歳 HP20 MP10〕

 〔鑑定〕→〔魔物 成体 ゴブリン 6ヶ月 HP12 MP10〕

 〔鑑定〕→〔魔物 成体 ゴブリン 2歳 HP25 MP6〕

 ログが出現するのも構わずに鑑定を急ぐ。


 七歳になって鑑定がまたパワーアップした・・・とは流石のレインも今は思っていなかった。

 スキルを使った方がパワーアップすると考えていた。

 鑑定のレベルアップが年齢じゃなかったことで、当時の自分を思い返して赤面したことを思い出しながら、レインスターは鑑定を続けたのだった。


「いた。あれか 」

 〔鑑定〕→〔魔物 成体 ゴブリンリーダー。 8歳 HP53 MP18〕と表示された。


「他よりも強いのに、他と背等も変わらないって詐欺だな」

 僕は弓を構えて気を全開にするとゴブリンリーダーの眉間に狙いを定めて矢を放った。


 グングン加速していく矢はスゥーと糸を引くように、ゴブリンリーダの眉間に吸い込まれていき、そのままゴブリンリーダーの眉間に突き刺さって倒れた。



「ふぅー良かった」

 一度息を深く吐いてから、僕はまだたくさん村にゴブリンが押し寄せてきていることに意識をし直して、まずは機動力のある狼に僕は矢を放ち始めるのだった。



 SAID ビリー


「くそ。多すぎるだろう。本当にラスターのガキには参るぜ」

 俺は悪態を吐きながら、もう一つの見張り台を見つめて呟く。

「レインお前は頼むぜ。何せ俺よりも弓が上手いんだからよ」

 自嘲するようにゴブリンに向けて俺は矢を放つ。


 少ししてから見張り台から身を乗り出すレインが見えた。

「ちっ、やっぱり子供には戦場は早かったのか」

 俺は矢を放ちながら、レインが怖がっていることを心配する。


「結局俺は、あいつに動物も魔物も殺させたことが一度も無いからな。・・・これを気に狩人を止めたいとか言わないでくれよ」

 レインは昔から人の話をちゃんと聞いて、それを実践する素直な弟子だった。


 始めてあったのは言葉もちゃんと聞けない二歳の時だ。

 自分で言うのも何だが、俺は強面な顔をしている。近所の餓鬼共は俺を見ると逃げ出していたからレインが俺を見た瞬間泣くと思っていた。

 だがあいつは違った。


「こんちゃ」

 俺に目を丸くした。まさか挨拶をしてさらに驚いたのはレインが笑顔だったからだ。

 それ以来いつも会うとちゃんと挨拶をしてくれる唯一の子供だった。


 三歳になると俺の家に遊びに来るようになった。まぁほとんど俺の母さんにだったけどな。俺は結婚もしていないから当然子供もいない。

 ただ挨拶をしてくれるレインに俺は何となく罠を説明するようになっていく。


 五歳になった日にレインがうちに来て言った。

「こういう罠なら便利じゃないですか?」

 そう。新しい罠を考え来たのだ。その罠はもう一端の罠師と変わらない完成度が高いものだった。

 そんなことを考えながら今度は弓を教えるようになっていた。


 最初は力で弦を引こうとして赤い顔になったり、矢が直ぐ目の前に転がったりして恥ずかしいのか赤面もしていた。

 矢が飛ぶようになってもとんでもない方向に飛んでいくので流石に早かったかも知れないと思い始めていた。


 だがレインの凄いところはここからだった。

 レインは毎日毎日練習し続けた。それも自分の仕事をちゃんと終えて、疲れた身体に鞭打って練習を続けていたのだ。

 そんな俺も熱心に教えてはいたが、何処までレインが頑張るのか分かっていなかった。


 指の皮は捲れて母さんに薬を塗ってもらっては、また次の日になれば弦を引いている。その姿に頑固というか負けず嫌いなところもあるが、俺を含めた大人たちはレインにとても感心していた。

 そして三ヶ月も経てば矢は真っ直ぐと飛んでいくようになっていた。今では動く的にも当てられる程の弓の才がレインにはあった。


 そんな努力家で、将来有望な狩人が、こんなことで潰れるなんてあっちゃ駄目なことだ。


 俺がそこまで無い頭で思考を巡らせていると次の瞬間俺は目を疑った。


 レインの見張り台から矢が放たれたのだ。それも五十メートルはあるゴブリンの眉間に直撃させたんだから仕方ないだろ?

 しかもレインがやったのはどうやらリーダーだったらしく、ゴブリン達の統率が一気に崩れ出した。


「はっはっは。あいつは本当に飛んでもない狩人だぜ。あいつのことで悩むのは俺じゃなくてグラス達だな」

 憂いの無くなった俺はゴブリンと狼に向けて矢を放ち続けた。


 SIDE END

お読みいただきありがとうございます。

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