06 レインの仕事の実態
僕は家を出ると走りながら、まずは家の近くにあるマルダさんの家へ向かった。
「マルダさんおはよう御座います 」
ノックなんてしないで普通に声を掛けて入っていく。
「はい。おはようレインちゃん。じゃあ早速仕分けを頼むよ 」
「分かりました 」
にこやかなマルダさんと挨拶を交わしてから仕事を始める。
〔鑑定〕を念じて薬草を仕分けていく。
鑑定の良いところはログが他の人には見えないことだ。
その為〔鑑定〕→〔草 薬草C-アリオラ草〕
それから鑑定なのだが、やはり歳を重ねるとパワーアップすることが判明した。
(※注 スキルの使った回数)
ゆっくりと五十回ほどの鑑定しながら仕分けしていくと、体感で一時間ほどで終了した。
「終わったよマルダさん。」
「おやおや。本当にいつも早いね。今日も調合を見るのかい? 」
答えは分かっているのに聞いてくるそんなマルダさんに微笑みながら答える。
「はい。人の為になるものですから 」
「ひょひょひょ。じゃあ順番に説明していくよ 」
こうして機嫌の良いマルダさんは調合しながら講義をしてくれた。
「ほら。これでも食べてまた明日も来るんだよ 」
実はビリーさんの母であるマルダさんは、ビリーさんが森で取って来た果物を毎回くれる。甘味の少ない世界なので味わって食べる。
「美味しいです。」
僕がニンマリ笑うとマルダさんもニンマリして、美味しい時間を過ごすのだった。
おやつタイムをマルダさんの家で済ませると、今度は村の牧場とも呼べる場所にやってきた。
「こんにちわ 」
そう言って挨拶をして牧場の脇にあるた建物に入っていく。
「おう。良く来たな 」
マキナリさんが出てきた。マキナリさんは髭を剃れば間違いなくちょい悪なイケメンに変身しそうな風貌をしていて、最初に見たときは少し怖かった。
「じゃあいつも通りで頼む 」
「はい 」
マキナリさんは笑いながらそう言って仕事の合図をくれた。実はここでの仕事は非常に簡単なのだ。
僕は気を消していく。何故だかはわからないが、動物たちこれをすると一定の距離を保ってずっと僕に付いて来るので、その隙にマナキリさん達が厩舎や柵の中の糞を片付けていくのだ。
そう僕はただ歩くそれが仕事だ。
「散歩して牛乳がもらえると骨が丈夫になるなぁ 」
僕は笑いながらお昼を過ぎた辺りでこの作業は終わる。
「レイン助かったぜ。これも食えよ 」
捌いて少し経った肉で焼肉をしながら昼食を御相伴あずかり、牛乳で喉を潤した。
「じゃあ、今度はブラッシングするから頼むぜ 」
「はい。 いきます 」
昼食が終わると僕は体中の気を全開にする。
すると先ほどとは違って動物たちはマキナリさん達の元に逃げていく。
こうして大人しく順番にブラッシングするので重宝されている。
一度ストレスが溜まらないのかを聞いてみるとそれほどではないらしい。それよりも遊んでいる感じで健康状態が良くなったと言われた。
一日に四頭だけをマキナリさん家族で一斉にブラッシングするので、気を五分程度の時間、全開しなくてはならない為に結構疲れる。
「良し終わった。レインまた明日頼むぜ 」
「はい。じゃあまた昼寝させてください 」
「おう 」
それを四度繰り返すと牧場の仕事が終了する。
その後に僕は牧場で昼寝すると動物たちも気のプレッシャーから解放されるからなのか近くにきて一緒に昼寝する。だから僕は牧場で重宝されている。
昼寝を終えた僕は村はずれにある木こりのゴライさんの元へ向かう。
「こんにちは。レインです 」
「レイン遅いぞ~ 」
髭もじゃのゴラシさんが姿を見せると直ぐに工房に引っ張り込まれた。
「じゃあ早速始めるか 」
「はい 」
設計図を見ながら木を切り、それを組み立てていくと簡単な台車が出来た。
そう。薪を運びながら木で工作してミニチュアを作って、ゴライさんが村で活躍するものをここで作っているのだ。
ゴライさんは木こりで目つきが鋭く口下手な為に評判が悪かった。
村は広いけど人口は少ない村なので悪い噂も立つと孤独になってしまう。
そして目をつけたのが本職の大工がいないというところだった。
だから僕は前世を必死に思い出しながら、何度も宮大工の仕掛けをゴライさんと試行錯誤していった。
挨拶を毎日する子供にさすがの彼も話すことは出来たのだ。そして話をしてみたら純粋に職人だった。
それからは思ったことを伝えたり、こういうものが便利じゃないかと告げたら、彼は僕を認めて、工房への出入りを許可してくれた。
「レイン、お前さんは頭良いだろ?だったら将来は村長をやればいいと思うが何で断るんだ? 」
「あの兄ですよ? 将来を悲観して行商人の方が夢が広がるじゃないですか 」
僕は笑って言った。
「本当にお前さんは五歳で枯れてるな 」
仕事が終わるとゴライさんに呆れられながらも、薪を背負って二百メートル程の距離を歩いて帰る。
これが仕事の全貌であり、日課となっている。
ただ帰り道も気を全力で張りながら歩くので、家に着くころには疲れてお腹が空く。
そのときには丁度の夕食の時間になっているので、またたくさん食べるそんなことを考えていると家に辿り着いた。
「お帰り 」
母が笑顔で出迎えてくれた。
ゆっくりと夕食を食べてから、寝る前も身体に合わせた短い木の棒を二本使って双剣や体術を自分なりに考えて組み合わせた型で振り続ける。
いつか狩りにいくために弓はまだ無いので、訓練をする。
あと一回、もう一回と十回ほど繰り返したら、ストレッチをして身体を拭いて眠る。
体感だけど午後八時には完全就寝となって、まだ薄暗い朝に目を覚ましてから身体を解してランニングに向かう。
これが今の日常だ。
レインが家を出てランニングしに行くと両親は起きる。
「あいつは将来何になるのかね 」
「それよりもお嫁さんよ。もう申し込みがたくさんきてるのよ 」
レインは同世代からの人望はない・・・訳ではないのだ。
ただいつも大人たちと一緒にいるので、声が掛けづらくなっているだけだ。
そしてその親達はレインの将来性に期待して結婚をさせたいと思っていた。
「五歳なのにそれは凄いな。ラスターには? 」
「・・・」
「そうか 」
粗暴な兄と努力家の弟。自分の娘を嫁に出すなら自ずと答えは決まっていた。
「あいつは本当に行商人とかになりそうで怖い 」
「そっちの方がレインは幸せなのかもしれないわ 」
「「はぁ~」」
二人はレインの将来をレインが思っている以上に考えてくれていることをレインは知らない。
そしてラスターはそんな弟を気にする余裕がないまま、畑仕事の疲れを少しでも長く寝て疲労回復に努めるのだった。
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サクっといきます。




