表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/38

18 勝利の宴と中途半端な仕事

 ヒクヒクっと鼻を動かせば、とても美味しそうなニオイがしていた。

 ギュルルルとお腹が鳴り、レインが目を覚ますとテーブルにたくさんの料理が並んでいた。


 レインは料理に惹かれて歩く。しかしここで待ったの声がかかった。

「レイン、起きたか。悪いがこれを食べながらバルファー達を先に動かしてくれ」

 声をかけて来たマキナリを見て夢でないことが分かったレインは渋々だが、了承して果物を齧りながらマキナリさんの牧場までバルファー達を連れて行くのだった。


 道中でマキナリにレインは聞く。

「僕って気を失っていました?」

「ああ。十分くらいな」

「えっ? だってご飯用意してありましたよ」

「魔物が来るかも知れないと分かって、お前が早く帰ってくるように料理していたんだと。愛されてるね~」

 マキナリさんにそう言ってレインは肩を叩かれた。

 さすがにレインもそれには笑うしかなかった。

「完全に食いしん坊キャラが定着してしまった」

 あながち間違いではないので頭を抱えたい心境だった。


 バルファーをマキナリの牧場に入れてから戻ると、もう一仕事オークの魔石を取ることと内臓を取り出すことがあったのだが、それはビリーがやってくれているようだった。

 こうしてレインの食事タイムの時が訪れた。


 凄い量を食べる僕を見ながら昼だったこともあり、村全体でこのまま勝利の宴になるのだった。


「もう本当にレイン、お前は凄いぞ」

「うちの娘と結婚しない?」

(それを言った女性は他の大人たちから連行されていった。)

 とにかく村の大人たちからレインは褒めちぎられた。


 いや今回だけは村の子供達からも感謝の言葉をかけられるのだった。

「レイン君ありがとう 」

「守ってくれてありがとう 」

 顔を真っ赤にした女の子達から感謝された。


「お前はスゲエやつだ 」

「今度、俺にも弓を教えてくれよな 」

 男の子達からも話しかけられるのだった。



「本当に助かったぞレイン! 流石にワシの孫だ 」

「さすがは俺の息子だ 」

「レインは私似よ 」普段はそこまでべた褒めしない祖父と甘い両親が労ってくれた。


「ッッツ?!」

 そんな楽しい宴で、レインはゴンッと、突然頭に衝撃を受けた。

 そう拳骨を落とされた。

「矢が無くなる前に退け 」

 拳骨の主はビリーだった。


「痛いです。あの時はしょうが無かったんですよ。もし逃したら報復に来るかも知れませんでしたし…」

「狩人は命を取っても取られるな。それと蛮勇になるな! そう教えてたはずだぞ」


 レインは自分の行動を思い返して確かに物語の主人公張りに無双したけど、代えの弓も今回は持っていなかったと反省点が多く素直に謝った。

「すみませんでした 」


 それを見ていた周りからは揃って『はぁ~』とため息をつかれた。

「レインの半分でもラスターに謙虚さがあれば良かったのに 」

 レインは父が呟いたことはいつも通りなので、気にはしていなかったが、それより聞きたいことがあった。


「二日前にオークが来て、また直ぐにオークが現れるなんて生まれてからそんなことは記憶にありません。生態系に異常があったんでしょうか?」

 すると両親の顔が暗くなり、祖父が苦虫を噛みつぶしたような顔をして口を開いた。

「メイレナ村の村長の息子のマイラスとそのお供五人が逃走したのじゃ」

 レインは信じられないことを耳にする。そして両親の顔を見て嫌な予感がして聞く。

「もしかして 」

「そうじゃ。ラスターが余計なことをして逃がした」

「はぁ~。それじゃあ彼等の行方は? 」

「見つかっていないし、見つからないじゃろう 」

「もしかしたら死んでいる可能性もありますね 」

「そうなんじゃ 」

「さすがに疲れていますし、矢もないので今からはいけませんから明日の朝にでも行きます 」

「わかった。すまんがそうしてくれ 」

「はい 」


 祖父は一度頷くと話題を変えた。

「あのオークなのだが、また売りに行ってもらう。レインはまた街に行くか? それともマキナリに任せるか? 」

 そうレインは聞かれて答える。

「あれは血抜きをして、五日程経つと魔力が抜けていって美味しいらしいんで、食べてもいいですけど? あれを売ったらお金も稼げますからね 」


 祖父は食いしん坊め! そう笑って囁くとレインの手を握って頼んだ。

「悪いが、狩りの後で明日、街に行って酒や食料等を買ってきてくれ」

 そこにはいつもの祖父らしさが影を潜めていたこともあり、二つ返事で頷くのだった。


 その後村人達からも欲しいものを頼まれて、マキナリと一緒にまた辺境の街エレフェレンに行くことになった。

 但し、行くのは二日後に変更になった。

 さすがに魔物は来ないと思うが、森の様子を確認することや、矢の用意もしなければいけなかったのと、マキナリも動物達の世話があったからだ。


 翌朝レインが森に入ってみたが、人の死体は無かった。

 そのことに安堵しながら防衛の為に罠をいくつも作っていった。

 森も少し深めのところまでいったが、魔物とは遭遇しなかったので切り上げることにしたレインは、ゴランさんのところで新しい弓と矢を受け取って投石器の補強を話し合った。

 そして新たな武器の設計も頼むのだった。


 午後になると漸く時間が空いたレインは魔道具の設置をすることにした。

「じゃあ簡単な雨よけを作れば良いんだな」

「はい。村の中に設置すれば遠くまで水汲みに向かわなくて良いですからね」

 レインは持ち帰った湧水の水晶の設置をお願いしていたのだ。

 レインの頭の中には公園の水場を思い出して試しに作ってもらったのだった。



 そして本命の井戸掘りだが、掘削の螺旋結晶は祖父から許可を取り使うことにした。

 井戸があったら便利そうなところに設置の許可ももらえ、レインは遠い昔にテレビで見た井戸を作るプロジェクトを真似てみることにした。


 硬く乾いた場所を探して直径一メートルの円を描き、結晶を水平にして真っ直ぐ地面に向かうこと様に気をつけて「ボーリング」と魔言を発する。

 言葉を捉えた結晶は回転して地面を掘っていき、三メートル付近でパンっと軽く手を叩いたぐらい音を残しその役目を終えた。


 それを見てレインは感動していた。

 このままなら直ぐに井戸が出来るんじゃないか? そう思い始めていた。


 ビリー頼んだスコップは当分出来そうにないが、掘削の螺旋結晶を正しく使えば井戸が出来るのではないか? レインはそう考えて掘削の螺旋結晶を穴に落としては起動させてることを繰り返した。

 そして五回目、十五メートル程まで到達するとパンっという音では無く、ピシャンという音に変わった。

 その音でレインは正気に戻る。


「調子に乗りすぎたな。円柱のパイプもないし、もし井戸を作るなら固定する魔法も使えないといけないじゃないか」

 レインは自分の迂闊さには頭を抱えるのだった。


「どうしたんだ?」

 村の治安リーダーのドドンさんが声を掛けてきた。


「ここに井戸が作れることが分かったんですけど、材料も全く用意していなかった自分の浅はかさに頭を抱えていたところです。」

「へぇ。神童様でもそんなミスをするのか」

「これなら罰になるな」


 レインが正直に話すとドドンは笑ってから、罰といい残して祖父の家に歩いていった。


 レインはそれが気になったが、とりあえずここは封印して直径二十センチの穴を石で塞いで、マキナリさんの牧場の糞を拾う手伝いに向かった。

 その後久しぶりにマルダさんと薬草とハーブの話をしたりしてのんびりと過ごすのだった。


 そして翌朝、朝日が顔を出す前にレインとマキナリはオークの死体を載せて出発した。

 この時は井戸を掘ったことが原因で、新たな問題が勃発することになるのだが、レインはそれに気がつかなかった。


お読みいただきありがとう御座います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ