17.5 ラスターの企みとその結果……
「ふむ。レインは嬉そうに街に向かったか」
「はぁ~。何でレインを街に行かせたんですか?」とため息を着いたグラスに父である村長は
「あれだけの子がこの村だけで留まるのは神が許さない気がするのだ」と語る。
そのことについてはグラスに分かっていた。ラスターと比べるととんでもない傑物だと我が子ながら思う。
「今朝の話ですが、あの子は許婚の件を知りまして」
「なんと、秘密のはずじゃったろう」
「ラスターが明け方に現れまして…」
「本当に悪ガキじゃな」
「仰るとおりです」
村長は首を横に振り、グラスは頭を抱えていた。
「それでレインはなんと答えたんじゃ?」
「ラスターの前では口を開かずに、俺と二人の時に結婚相手は自分で見つけたいと言っておりました」
「はぁ~。ワシのところにたくさんの見合い話がきているのに」
「俺のところにもですよ」
「俺も奥さんから言われてます」
ここでビリーが合流して、今回騒動を起こした少年達を見て少しかわいそうな気がした。
「まぁ彼等がしたことは、この村の存続を脅かすことだった。だから納屋に閉じ込めておくか」
「縄はどうしますか?」
「仕方ないから見張りをつけるだけでいいだろう」
こうしてメイレナ村の村長の息子のマイラスとそのお供五人は納屋に入れられることとなった。
その日の夜に襲撃があったことを畑にいた者達は知らなかったが、レインが活躍したことを快く思わない人物が一人いた。そして彼は聞いてしまった。
昔、自分が村に危機を招いた行為と同じようにしてしまった男達が捕まっていることを。
「これはチャンスだ。そいつらを懲らしめれば、くっくっく」
そして夜が明けて、張り切って仕事をするラスターに母親のレイニーは勿論、伯父のグランバートとその妻ミルフィーは嫌な予感がしていた。
それでもちゃんとその日の仕事を済ませたラスターに漸くしっかりしてきたのでは?っと淡い期待を持った。
しかしそれはやはり淡い期待でしなかなく、泡となって消えてしまうことになる。
誰もが寝静まっているまだ陽が上る前、納屋には見張りがいない。
この時間に納屋の入口のつっかえ棒を外す人影があった。そう。ラスターだ。
ラスターは前日に男達が閉じ込められた納屋に見張りがいないことを確認していた。
周りを警戒しつつ下見をしてから行動に出たのだ。
「捕まっているやつ等を殴ればいいのか?それとも俺がこいつ等の村に行って巻き上げてくればいいのか?まぁいいか」
「ちっ、やっぱり寝てるか」
ガスッと蹴るとうめく声が上がる。
「起きろ貴様ら」
蹴った相手が立つといかにラスターが馬鹿だったかがわかる。
小学六年生に中学三年生がケンカを売るようなもので、それも一対多の状況を自ら作り上げてしまったのだが、ラスターはそんなことを気にも留めずに声を張る。
「よくもうちの村を襲ったな。お前達が来たおかげで俺の許婚の件を聞くのが流れたじゃないか」
ラスターは喋っべりながらそれにイラついて拳を振り上げた。
しかし殴ろうとした時、殴るはずだった男の左右から二人が飛び出してラスターにタックルを仕掛けた。
まともに受けたラスターは頭を打ち脳震盪を起こす。
「チビガキが舐めやがって」
蹴ろうとしたところをマイラスが止めた。
「おい。構うな。今なら逃げられる。起きると面倒だから行くぞ」
太陽が顔を出す前にマイラス達は逃げ出したのだった。
ラスターが起きると縄でグルグル巻きにされていて、大人たちに囲まれていた。
村長がゆっくりとした口調でラスターに訊ねる
「さて、ラスターここで何をしておった?」
と聞かれたラスターは
「俺はあいつ等を懲らしめてやろうと思って・・・あいつ等は?」と聞いた瞬間、
「皆のもの戦闘の準備じゃ」
村長が声を掛けて男衆が『おう』と声を揃えた。
投石器が三機、石も大量に用意されて魔物が現れても近づけさせない準備を整えた。そして誰も言わないが早くレインが帰ってきてくれることを村人たちは願った。
ラスターはぐるぐる巻きのまま台の上に繋がれて「お前がしでかしたことをその眼で見ていろ」
戦闘前の嫌な静けさが続いて太陽が上空に昇り始めたときにゴン、ドンっと轟音がなり魔物が現れた。
狼でもゴブリンでもなく「またしてもオークか」一人の村人が「あのオークたちは剣を持っているぞ」と叫ぶ。
「何故レインがいないときに」とラスターにレインを求める声が聞こえた。
「クォオオオオオ」とけたたましい叫び声が空気を伝わり村に響く。
大人たちは震えながらもレインの作った投石器を信じて近寄ってくるオークに投石を浴びせ始めた。
ヒューンと飛んでいく石が着弾するとドッゴーンと凄まじい音がしてオークの進撃が止まる。
着弾はオークたちの手前だったので警戒させるには十分なものだったのだ。
次弾を装填して待つが一回飛ばすのに男が束で入れないとゴブリンならまだしもオークにはダメージが与えられない。
そのことを村人は理解していたのだった。
何度か同じようなことがあったが、オークは石が空から降ってくる弾道を理解して笑うと端に移動して石を避けて柵まで押し寄せてきた。
「来たぞ」と鍬を振り上げた男達に武器を持ったオークが近づくと武器を振り上げた。
「チクショー」と呟いた男はこの世に残す妻と子供を思った。しかし一向に痛みは来なかった。
「あれ?」っと薄っすら眼を開けた瞬間オークが倒れ掛かってきた。
「俺にそんな趣味は無ねぇ」と避けるとオークの頭には矢が刺さっていた。次から次に大きい固体が倒れていく。
「レインが帰ってきたぞ」すると歓声が湧き上がった。その声とリーダーを失ったオークたちは後方から射られたことを理解すると矢を放ってくる人族が怖くなり、人の縄張りから離脱しようとして柵から離れる。
すると投石機から放たれた石が上空からオークを目掛けて飛んできた。ドスっと鈍い音が聞こえたあと地面に横たわったオークはその生涯を閉じたのであった。
村が湧く中でレインが倒れたのを見て、「飯の支度だ」という声と「勝ったぞ」と声が響き渡る中、台に縛られていたラスターはオークが柵に手を掛けた時にあまりの恐怖で失禁し気絶していた。
またもやレインの活躍を見ずに気絶してしまったラスター。
彼は勘違いしたまま、許婚が出来ない理由が自分の行動にあるとは露程も知らずにオークから蹂躙される夢をみるのであった。
お読みいただきありがとうございます。
作者は結構ラスターが好きですw




