15 Cランク冒険者のメリッサ
朝、目が覚めると知らない天井だったことで、初のお泊りをしたことをレインは思い出した。
「初のお泊り相手がマキナリさんかぁ 」
レインは苦笑しながら、隣を見ていびきを掻くマキナリを見て、複雑で何だか残念な気分になるのだった。
「それにしても習慣って凄いな。環境が変わっても目が覚める」
レインはストレッチを始めると部屋を出て階段を下りていく。
泊まった宿は民宿というか寮みたいな作りで、素材はコンクリートみたいなもので作られていた。
階段を下りると直ぐに声を掛けられた。
「おや、もう起きたのかい?」
声の主は宿の女将であるナズリーだった。
「おはよう御座います。いつもの習慣で起きてしまいました。この時間はいつもランニングしていているので」
ははっ。そんな感じでレインは笑った。
「感心な子だね」
ナズリーは頷きながらレインを褒める。それが照れくさくなったレインはナズリーに尋ねた。
「ここら辺で走ってもいい場所とかって有りますか?」
「う~ん。あるにはあるけど、ここら辺は治安が其処まで良い訳じゃないんだよ」
「あ~なるほど。分かりました」
ナズリーが心配してくれるのが分かったレインは諦めるか。
そう判断して移動する直前にバニーガールが横を通り抜けた。
僕は一瞬固まり、振り返って直ぐに鑑定をした。
〔兎人族 成人 メリッサ 19歳 HP121/121 MP10/10 体調:良好 〕
ログにはそう表示されていた。
「うん?」
メリッサと書かれた兎人族はこちらを振り返った。
「君?ん?何かした?」
何か違和感があったのか気付かれた。
レインは聞かれたことには答えずに謝りながら声を掛ける。
「すみません。人族の方ではないですよね?」
「うん。兎人族だけど」
そう言って首を傾げる。
「お姉さんみたいな人を初めてみました。人って人族だけじゃないんですね」
そうレインが聞くとメリッサは笑いながら口を開いた。
「あ~君は田舎者だね」
「はい。村には人族しか居なかったので」
「なるほど。じゃあ一つだけ言っておくけど、種族はいっぱいあるし、いるけど、むやみやたらに聞いちゃ駄目だよ」
ちょっとした威圧が込められた視線を向けられたのでレインはきちんと謝ることにした。
「分かりました。ごめんなさいお姉さん」
そう言ってレインは頭を下げた。
そこにナズリーが助け舟を出してくれた。
「メリッサちゃん。それぐらいにして上げておやり、彼はまだ十歳の子供だよ。」
「えっ?! そうなの? 私より大きいから同じ歳ぐらいだと思ったよ」
頭を下げていたところを撫でられた。
「そうだ、メリッサちゃん。今から出掛けるのかい?」
「うん。朝食までギルドで汗を流そうかと思って」
「じゃあこの子も連れて行ってあげてくれない?」
メリッサはレインを見ると口を開く
「得物は? 」
そう聞かれて咄嗟に言葉が出た。
「僕は狩人なんで弓です。日ごろは棒を振り回してます」
そう伝えるとメリッサは頷きながら了承してくれた。
「じゃあ支度できたらまた此処に来て 」
「じゃあ弓を取って来ます 」と
レインは急いで階段を駆け上がり部屋に戻った。
マキナリは相変わらす寝ていた。
「まだ寝てる。まぁ女将さに伝えておいて貰おう 」
レインはナズリーに出掛る事をマキナリに伝えてもらうようお願いしてメリッサと宿を出た。
うさ耳がピョコピョコ動くそれを目で追ってしまうが、レインは自己紹介していないことに気がつきメリッサに声を掛けた。
「あの僕はレインスターと言います。レインと呼んでください」
するとメリッサも自己紹介してくれた。
「私はメリッサ。これでもCランクの冒険者」
メリッサは胸を張っておおk……じゃなくて、Cランクだというが、レインにはその凄さがわからなかった。
「Cランクって強いんですか?」
そう素直に聞くと笑いながら答えた。
「一人前と認められるランクだよ」
メリッサがドヤ顔をするので、レインはとりあえず褒めることにした。
「凄いんですね」
あまりにもストレートな歩褒め言葉にメリッサは顔が赤くなるのだった。
「ついてきて 」
冒険者ギルドに着くと昨日とは違い人は数える程しか居なかった。
先を歩くメリッサさんの後を歩く。
受付には一人しかいなかった。さすがにこの時間帯は居ないのだろうとレインは思いながら、メリッサと受付のやり取りを見ていた。
話が終わり二人で地下に進むと、冒険者とすれ違ったが、メリッサさんは構わずに歩く。
地下はアイスホッケーの会場みたいに観客先はないが扉を開けないと進めない設計になっていた。
行き先はの訓練場の脇にある場所で扉を開けると弓の練習場だった。
「じゃあ弓であれを狙ってみて」
メリッサが指し示した先は二十メートル程先の大きな的だった。
「あの、あれなら十倍の距離でも当たりますよ?」
レインは面倒なので連続で三射飛ばすと的の中心に三本とも刺さった。
そしてレインが振り返るとメリッサの唖然とした顔があった。
「何したの?何で三本とも当たるの?」
「狩人だから当たり前です」
今度はレインがドヤ顔してみせると部屋から出て、手を引っ張られて闘技場に入った。
「じゃあ練習用の剣で打ち合おうか」
「目が怖いです。それと僕は対人も対魔物もしたことが有りませんから手加減してくださいね」
いつの間にか渡された刃が潰れた剣を二振り渡されて構えさせられていた。
「手加減は君次第。行くよ」
いきなり駆け出したメリッサさんは鋭く踏み込み数歩で剣が届く。
朝から疲れそうだな。
レインはそんなことを考えながら、向かって来た剣を左の剣で弾きながらもう一方の剣でメリッサの剣を打ち落とした。
「やるわね」
完全もスイッチが入ったメリッサだったが、さすがに鉄の棒で殴られるのも殴るのもごめんだ。
レインはそこから全ての剣をかわし、時には蹴ったり、殴ったりならそこまで痛くないだろう。
そう思いそれを実行する。
飛びかかって来たところを避けて足を引っ掛けたり、手を掴んで力の方向に流れる様に投げたりした。
「そろそろいい時間ですね。帰りましょう 」
朝食を食べる為に帰ろうと促すとポツリと何かを呟いた。
「・・・のよ。」
「すみません、聞こえませんでした」
メリッサはレインを睨みつけてヒステリックに叫ぶ。
「だから、なんで私の攻撃が当たらないのよ。って言ったのよ 」
「う~ん。対人戦をしたことが無いので何とも言えませんが、メリッサさんは確かに早いんですけど、動きが直線的でしたし、フェイントもありませんでした。だから最初は剣で受けてましたけど、ずっと攻め方が変わらないから避けられました 」
「・・・それだけなの? 」
「はい。動きに緩急やフェイントを入れられたら、戦える自信ありませんからね 」
「ふふふ。そうだったの。じゃあ帰るわよ、レイン 」
目を大きく開けて驚いたメリッサだったが、指摘した点を直せればもっと自分が強くなれることを知って笑顔になった。
「はい。朝食です 」
レインはお腹が減っていたので、朝食を楽しみに宿に向かうのだった。
二人が去って行った後、訓練場にいたギルドの職員は俊足兎の異名を取るCランク冒険者メリッサを圧倒した、まだあどけなさが残る少年を探すが見つけることが出来なかった。
こうしてメリッサを子供扱いしたレインは誰にもバレずに初の対人戦を終えた。
宿の入り口まで来るとマキナリが出迎えてくれた。
「おう。戻ったか」
「おはようごさいます。マキナリさん。あ、こちらメリッサさんって言ってCランクの冒険者さんで朝の訓練に付き合ってくれました 」
「おう、そうか。俺はレインと同じ村のものでマキナリっていう。朝飯にしようぜ」
そう誘ったがメリッサさんは首を振った。
「私もパーティーのメンバーを起こしてくる」
そう言って部屋に戻っていった。
その後メリッサのパーティが現れたが、挨拶しても返事されずメリッサに謝られた。
レインとマキナリは、商人ギルドに向い受付で商人登録をしようとしたが、カードを失くすと再発行に銀貨が十枚も掛かると言われて、結局成人になってから作ることにした。
「良かったのか?」
「はい。それに僕は親元にいますし、自立するなら親を説得してからです」
レインはそう言っては笑う。
「あ、書店もありますね」
本屋を眺めると気になるタイトルがあった。
〔生活魔法を極める〕
〔魔法百貨一覧〕
しかし買えるはずもなく、途方にくれていると破り捨てられた本が端のほうに置いてあった。
「すみません。あれっていらないんですか? 」
気になったレインは店主に聞きに馬車を降りた。
「あん ?あ~あ泥棒が入ってうちの本を盗っていった時に、本の外側だけ盗られちまったから安く売ってはいるぞ」
そう言ってと落ち込む店主。
「ああ、でも直す魔法ってないんですか?」
レインがそう聞くと店主はあると答えた。
「直す魔法はあるぜ。でも適正が無いとそういうのは使えないんだよ」
「その魔法の詠唱は?」
「なんだったけか?【リペア】は覚えているが、詠唱は忘れた。そんなことより何か買っていくか?」
【リペア】か、後でいろいろ模索しよう。
「空を飛ぶ魔法とか、透明になれる魔法や知っている場所に瞬間移動できる魔法とか荷物を運ぶのに便利な魔法とかの本はないですか? 」
「そんなものが載っている本はない。あっても全部が国宝、いや古代魔法にはあったけど今は現存していない。他にほしいものはないのか?」
「じゃあその切れて捨ててあるやつをください」
「はぁ~。それは……いいよ。兄ちゃんは稼ぎそうだからやるよ。但し今度来る時は何か買って帰れよ 」
「ええ本当ですか? ありがとうございます 」
レインは何かが書かれた本の端切れを貰って袋にしまうのだった。
本屋から戻ってきたレインをマキナリが不思議そうな顔をして聞いてきた。
「そんなものを欲しがった理由はなんだ? 」
「いつか僕にも魔法が使えるかもしれないから 」
「フッ そういうところは子供だな 」
マキナリは苦笑しながら市場を回る。
「うちの村は野菜も肉も取れるから食事には困らない。住む場所もある。あとは着るものと生活が便利になるものか 」
市場を観察する。あ、そういえば水は晴れた日が続かないと手に入らないんだっけか。
「水が出る道具とかないかな? それとも井戸を掘ったほうがいいのか」
「水を出す道具ならあの店にあるぞ。」
そう言われて看板を見ると「魔道具店リリィ」というお店があった。
「行ってみましょう 」
レインが入ったお店にいたのは魔法を教えてくれた魔導士のお姉さんだった。
お読みいただきありがとうございます




