12 魔物、襲来の予感
早朝いつも通りランニングをして家に帰ってくると僕は見慣れない少年が、家を伺っている感じだった。
その怪しさから距離を一気に縮めて肩に手を置いて問う。
「うちに何か用か?」
いきなり手を置かれたことで、ビクッとしてから、少年は後ろに振り返った。
顔を見ると僕よりも少し小さくなった、悩みのタネが其処にはいた。
「ちっ、レインか。俺より大きくなりやがって、背が伸びないのは畑仕事しているせいだ」
全く変わらないラスターに、こいつは変わらないなぁと思いながらも久しぶりの再開に笑顔で声を掛けた。
「何しているのさ。自分の家なんだから入れば?」
するとラスターは胸を張りこちらに右手の人差し指を向け変わらないことばを告げる。
「俺に弟が指図するんじゃない」
その瞬間にバァンっと、家の扉が開らいた。
そこから出てきたのは、仁王立ちした父と昨日帰ってきた母がそこにはいて、ラスターは固まった。
「おはようラスター」
小さく低い声を出す父。
「ラスター? 今日も畑仕事でしょう」
母がラスター兄に優しく声を掛けた。ただ眼は全然笑っていなかった。
「お、おはよう。は、畑仕事には行くよ。それより俺の許婚って決まっているか?」
その瞬間、今度は両親の方が固まった。
「なぁってば。おじさんのところの二人は、もう直ぐ結婚するって言っていたんだ。それに十歳位で許婚が決まっているって聞いたぞ。」
えっ?何それ?僕も初耳ですけど。
「そ、その話は後だ。それにお前は十五までは、結婚出来ないだろう」
そう。狩人になるのであれば当分は先だ。
「いいじゃないか。俺だって十二だぞ」
ラスターは食い下がる。
「分かった。今度の休みになったら教えてやる」
そう言って父はこの話を切った。
「じゃあレインは食事の支度を手伝って」
母もそれに同意してこの話を意図的に打ち切った。
ただ、二人とも顔が引き攣っているのが丸分かりだった。
これはラスターだけでなく、僕にも関係があると思いながら、街に働きに行こうかと本気で考え始めるのだった。
朝食を済ませると兄と母が先に出かけるようで、今日は近くの畑仕事を手伝いに出かけた。
僕も出かける寸前、先に自分の気持ちを父に伝えた。
「お父さん、僕の結婚とかまだ決めないでね。僕は一度外の世界も見てみたいと思っているから」
父は少し間を置いてから頷き、了承してくれた。
「分かった」
「ありがとう。行ってきます」
それにしても結婚とか前世でもしていなかったのに、お見合いとかだと、きっと生活をしていくと相手を悲しませるだけだろうし、旅に出た先で奥さんを探しそう。
僕は家の入り口で父と別れて駆け出した。
いつものようにビリーさんの工房で弓矢を回収すると森に駆け出した。
レインは村の子供から話しかけられる経験がほぼ皆無だった。
その為に、同年代からはモテないと思っていた。
年上の人にはモテるのにな。
自嘲をしながら森に着いた。
レインはいつも通りに、まずは仕掛けた罠を確認しようと森に入った。
覚えているだろうか?ラスターを吊った罠を仕掛けた場所を。
レインはゴブリン達が襲ってきても良い様に、あの場所にたくさん罠を仕掛けていた。
村人は近づかないし、他の村から来るにしても街道を歩くので、森に人がいるなんてことはなかった。
しかし今回はどうやら違ったようだ。
「誰?いや、君達は何だ?」
レインはそんな言葉を呟く。
そう一人や二人ではなかったのだ。
あっちにもこっちにも罠に引っ掛かり宙吊りになった男達がいた。
「盗賊か?」
すぐにその考えを打ち消した。
さすがに盗賊でもここまで武装をせずに森に入るなんてことは無い。
実に罠に掛かって宙吊りの男達は六人名だった。
「よく魔物に殺されなかったな」
気絶しているのか?それとも眠っているのか?どちらにしても運が良かっただけに過ぎない彼らは何者なのかが分からなかった。
それでも魔物が来る場所なので、放っておくことも出来ず、罠を切って、彼らを落としながら縛って一箇所に集めた。
レインは思っていた。これは狩りどころじゃ無くなると。
罠から落としてグルグル巻きにしてから六人を手押し車に乗せて素早く退却することにした。
しかしさすがに彼らも起き始めて騒ぎ出した。
「止めろ」
「私が誰か知らないのか?」
「この方を……」
レインは既にこの時失敗したと感じていた。
だが、流石に魔物の餌にしてしまうのは気が引けたし、どのみち森で騒いでいたら魔物が村に来ていたと気持ちを切り替えた。
前世のように舗装はされていないが、歩き固められた道を転がしながら、強い口調で一言だけ発した。
「貴方達のせいで魔物が追ってきます。死にたければ止めますよ?」
彼らは途端に大人しくなった。
レインは急いで村に向かう。
「今日の狩りは十分で終わってしまったな」
そう呟きながら。
村に着くとレインには珍しい大声を出した。
「父さん御祖父ちゃん、男衆を呼んできてください」
そう頼みながら柵で村の入り口を塞いだ。
僕は見張り台について森を見守るが未だ魔物は現れていなかった。
「ビリーさんに聞かないと駄目だな。」
流石に前回のゴブリン戦以来の魔物の襲来なので、経験の浅いレインでは魔物が本当に来るのかが察知出来なかったのだ。
そのレインが目を離した隙に、逃げそうな自分より年上だと思われる少年を見つけてレインは見張り台から飛んで、少年の前に立つと足を払った。
「ちょっと大人しくにしていろ」
レインが高圧的に話すと少年はそのまま押し黙った。
十分ほどで村長と男衆が集まってきてくれた。
「皆さん、朝の忙しい時間帯からお呼び立てしてすみません」
レインは頭を下げてから話し始めた。
「実は今朝といっても半々刻ほど前に森に行くと彼等が私の罠に捕まっていました」
一気にザワザワと騒がしくなった。そこからビリーさんの声が聞こえてきた。
「本当かレイン?」
「はい。ビリーさんあの時と同じです。定期的に魔物は狩っていますので其処まで多くは無いでしょうけど魔物が現れる可能性があります。」
それを聞きまたざわざわし始める。
「それでこいつらは?」
「全く知りません。ただ其処の人は偉いのか、私を誰だか知っているのか?と口を開きましたが、皆さんの前で聞いたほうが良いと思い、今から誰かを聞くところです」
全員を御祖父ちゃんの前に転がす。
ここからは村長の仕事だ。
「僕は見張り台で、もしもに備えます」
「ああ。頼んだぞ、レイン」
僕は再び見張り台に駆け上がった。
魔物は来ていなかったので、下にいる口を割らない男を鑑定することにした。
〔人族 成人 マイラス 15歳 HP64/68 MP15/15 体調:良好 〕
やはり何処の誰かは分からないか。
そう呟きながら森の気配を僕は探り続けるのだった。
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