パントマイム
君は無口で優しい男の子。わたしは素直じゃなくて意地っ張りな女の子。だからお互い、気持ちを言葉にするのが下手だよね。他の子はさ、「好きです」とか普通に言えるけどさ、君は言ってはくれないし、わたしも恥ずかしくて言えないんだ。
でもね、それって結構不安になるんだよ?やっぱりさ、付き合ってるって言えるのかな、とかもう気持ちが薄れてるんじゃないかなって、そう思っちゃうんだ。
わたしは素直じゃないからさ、そういうの気にしてないように周りに見せちゃうんだ。友達からは、冷めてるとか、ドライだよね、とか言われる。でもね、本当はいつも焦ってるんだよ?君の気持ちはもうわたしとは違うんじゃないかって、思っちゃうんだ。
だからあの時、あんな風に言ったんだ。
わたしが嫌になったら、無理しなくていいからねって。別れたくなんてない、好きでいてほしい。でもさ、君の気持ちがわからないからどうしようもなかったんだよ。
わたしの本当の気持ちを言ったら、君を困らせるんじゃないかって。だから、あれが精一杯だった。君がこれで離れていくなら仕方ないって。今日は沢山泣くかもしれないけど、それで終わりにしようって、思ってたんだよ。
だからね、君がわたしを抱きしめたときは、すごくビックリした。なんにも言わずに、ただ黙って強く抱きしめてくれた。
すごく暖かくて、優しかった。心臓の音、早かったね。顔には出さないけど、君もドキドキしてたんだね。
バーカ、君はそう言ったね。わたしはバカって言った方がバカなんだよって。可愛くなかったよね。でも君も、抱きしめといてバーカって、もっと他に言うことあったでしょ?
でもね、大丈夫。ちゃんと伝わったから。君が抱きしめてくれた時に、伝わってきたんだ。好きって気持ちが、いっぱい。
今日は君の誕生日。あれから君は変わらず無口、でも優しい。わたしも変わらず素直じゃなくて、意地っ張り。でも、今日くらい素直になろうかな、って思う。素直な気持ち、伝えようかなって。
でも、わたしも言葉にするのは得意じゃないんだ。だから君の真似してみるね。
今度はわたしが、君に気持ちを伝えるから。