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第六節 よちよち歩きから自力歩行へ

 ある程度を任せたら徐々に独り立ちのトレーニングをしていく。

 当初はまんべんなく説明していたのが、ふっと楽になるタイミングが見つかるはず、それが兆候だ。

 教育者(=引き継ぎをする人間、つまり自分)はいずれ居なくなるので、それでも仕事をこなせるよう意識を育てていく。「こういうときは、どうする?」というのをQ&A方式で尋ね、どうするかを自力で考えさせる――当たった場合には褒める、外れた場合には「そうするとどうなるだろうね」破滅と自力回復のルートを見つけさせる。

 この辺りは何度やっても難しい。

 最終成果物を必ずや見て貰えるという、甘えめいたものを抜けさすのが、特に。痒い所に手が届くフォローを入れ過ぎれば本人の自立心が育たないし、突き放し過ぎてものちに考え違いなどを見落とす。


 引き継ぎが果たして効果的だったかは、結局のところ残された人々の実感によって判明するのだろう。


 引き継ぎの状況を記す資料については、引き続き更新していく。なお、筆者の場合には、資料の扱いや管理に慣れさすためにも、自分で行わず最初から後任に任せる。「今日はこの項目をしたから更新しといてください」と指示をし、徐々にどの項目を教わったのか自力で見つけ出せるようにしていく。のちに他の人間がフォローするにしても手取り足取りというわけには行かないので、長め早めに素地を育てていくのがベター。案外、資料の管理に不慣れな人は多い。

 どのくらいを引き継ぐ予定で、どの程度を終わらせるのか――後任の自覚を育てる目的もある。


 残された期間と、その期間でどのくらいの仕事を出来るのかについても、都度見直しが必要となる。見直しのタイミングはおおよそ週一くらいか。

 自力歩行を意識する頃にかかると、引き継ぎ者が引き継ぎ以外の仕事をする余力もできてくる。

 そこも計算したうえで、自分の手持ちの仕事を抜ける前にどこまで処理できるか、引き継げる範囲がどう変更しうるか、後任と共に処理できる仕事は他に無いのかを、検討していく。

 ……本音を言えば、少ないほうが有難いけどもしかしそうも言っていられない。こと引き継げる項目が少ない場合には、できるだけ片付けておくほうが得策。


 立つ鳥跡を濁さず。


 ところで、以後二度と働く気が無いのだろう、有給を全て消化してから退職する人も居る(当人の自覚されている通りで二度と働かぬほうが賢明に思える人が大半だ)。休暇を取り自分が不在となる際には、後任になにをすべきか指示を与えるべきなのは言うまでもない。仕事を多めに振っておくことと、終わらない作業があれどさして支障が無いことまでも伝えれば完璧。


 カウントダウンが始まる頃には精神的に余裕も出てくるだろう。

 即転職の方は準備で慌ただしいだろうが、休職退職の方は心待ち遠しい瞬間だ。

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