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第一節 見積もりはシビアに分量はゆるめに

 退職や休職をする際、一時的/永久に自分の仕事を誰かに引き継ぐ場面でのポイントを纏めてみる。

 なお、筆者は業界の未経験者に事務を引き継ぐ場合が多かったがために、そちらに観点が偏りがちであることを予めご了承頂きたい。

 仕事を抜けるにあたっては「いつまで」働くか期限を設定するであろう。依願退職の場合はことさらシビアに自身が決めることだろう。それを踏まえ上司なりが「いつから」後任を投入するかを決定する。後任が中々決まらぬケースも往々にして見られるが――最低限自分が「いつまで」勤務するかを同僚や後輩や上司なりに明言しておく。ここのところが定まらねば周りも自分も落ち着かぬ上に、職場に必要とされる人員の場合には「抜ける時期をもっと後ろに回せないのか」とずるずると交渉する余地を与えてしまう。

 抜ける時期を引き伸ばしたケースを幾つか知っている。その場しのぎの手立てとしてそこそこに有用ではあった。だが長期的に見てあまり好ましくはなかった。

 当人の仕事にかける意欲が落ちているのは見るに明らかだった。


 後任が決まれば手持ちの仕事の「どこまで」を渡すかを決めるであろう。後任に引き継ぐに厳しいようであれば同僚なりに――ここのところの線引も職場によって異なる。筆者が知っているのは主に引き継ぐ人間が「どこまで」引き継ぐかを決めた上で上司なりの判断を仰ぐケースであるが、別の人間が判断する場合もあるだろう。いずれにせよ、くれぐれも、残された職場の人間に不明点の残らぬようにしておきたいものだ。


 どんな誰が抜けようが必ずや迷惑はかかる。それを最小限に留めるのがすなわち「引継」の目的である。


「どこまで」を引き継ぐのかを引き継ぎを行う人間の判断に委ねられた場合――欲張ってあれもこれもと盛りだくさんにする人が居る。初心者に見られる失敗だ。後任者の習熟度によりけりだが、ぎちぎちのスケジュールを引くことなかれ。特に序盤は仕事量を少なめにしておくのが安全策だ。

 後任が新卒や転職者の場合には、会社の規則や職場の雰囲気に慣れさせる時間が要る。それと、説明には存外時間を食う。あなたが引継に不慣れならスタミナも相当食う(喉も超渇く)。初めの一週間はスケジュールがスカスカなくらいで良い。

 また、相手が実務経験者であれど、なにをどのくらいのスピードと精度でこなせるかは、実際仕事ぶりを見てみぬぶんには分からない。(事務職経験者がWordやExcelの操作を熟知していないなんてのはよくあるケースだ、それと自己申告ほど当てにならないものは無い)残された側としても、取りこぼしが増大するのは困りものだが、減る分には構わない。のちのちフォローする分量が減るほうが有難いのだ。


 ここまでで、抜ける人間ではなく残された人間の視点に筆者が偏りがちであることにお気づきであろうが、実際これは、残された人間のためのメモ書きなのである。


 引き継ぐ項目の整理に話を戻す。もし自分に線引を委ねられた場合は、自分が初めてその職場に来た頃前任者からどのように説明を受けたか、錆びつきかけた記憶を思い起こしながらスケジュールを組み立てていく。可能な限度よりかは心持ち、ゆるめに設定する。

 後任が未経験者の場合には特に注意が必要だ。不慣れな作業をさせる場合には、ゆっくり、辛抱強く本人に浸透させる必要がある。職場での考え方や立ち振る舞い、そして仕事自体を。言語化できぬ職場でのカルチャーというのはどこにでも存在するというものだ、そして自分が就職転職をした際を思い起こして欲しい。帰宅する頃にはクタクタだったはずだ。


「なにを」引き継ぐかはこれまた悩ましいところだろうが、自分が抜けたあとのことを想像してみよう。

 居なくなった場合に誰が後任の助けに入るだろう――なにが一番重たい仕事か。説明に時間がかかるだろうか。自分だけがしている仕事は無いだろうか。残されると重たい仕事からまずは片付けていく――引き継ぐ時間があるならばそれが望ましい。後任一人で考え行動せねばならない場面もあるだろうが、そのための手がかりを残しておく。この方法は後述する。


「どこまで」を引き継ぐかを決めたらいよいよ公表と実践だ。周りの人間に「ここまでは教えられると思う」だろうことと、取りこぼした分は「フォローをお願いするかもしれない」ポイントを早め早めに明らかにする。資料なり口頭で伝えるなり。言った言わないのトラブルを回避するためにも、後々残るもののほうが好ましい。筆者が以前に居た職場では、引き継ぎが曖昧な形だったので、各自受け持ちの作業を全て洗いだした一覧を作成した上で、引き継ぎの担当者に「終わった項目にはチェックを入れて欲しい」と依頼した。また誰にでも分かる共通フォルダに残し、適宜反映するようにも要請した。既にチェックリストのようなものがあれば利用すれば良いし、無い場合にはこのように一度作成しておいたほうが後々役に立つであろう。

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