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引きこもりニートのコンビニ籠城生活 〜店から出たら即死な異世界迷宮に、なぜかWi-Fiがつながる店舗ごと転移しました〜  作者: autofocus


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第17話:店長、聖域の自覚と「ただいま」の笑顔

異世界にこのコンビニごと飛ばされてから、一週間が経った。


あのお尻に尻尾の生えたトカゲ風のおっさんを皮切りに、少しずつではあるが『一般(?)のお客様』も店にやってくるようになった。

品出し、レジ打ち、床の清掃、そしてバックヤードでの発注業務。まがりなりにもワンオペ店長としてバタバタと動き回っているうちに、あっという間に一日は過ぎていく。


夜。

バックヤードの床に敷いた寝袋に入り、暗闇の中で、静かに店舗の天井を眺める。

ふと、元の世界にあった、自分の部屋の天井を思い出した。


現実の世界にいた頃の俺は、完全なる引きこもりだった。

誰とも会わず、誰とも話さず、ただスマホとパソコンの画面だけを見て一日を終え、ベッドに入る。そして次の日も、その次の日も、全く同じ天井を見て過ごす。

それでいいと思っていた。それが俺にとっての最適解で、最高の幸せなんだと信じて疑わなかった。


だけど……。

この異世界に来て、朝起きて、規則正しい生活をしながら、誰かのために労働をして一日を終える。

そんな、元の世界では当たり前だったはずの『普通の生活』を送っていると、ふとした瞬間に──猛烈に、一人でいることが寂しく感じる時があるのだ。


暗いコンビニの天井を見つめながら、「ふぅ……」と小さくため息をつく。


「アラクネ……今頃どうしてるかな。リゼッタのやつ、お見合いは上手くいったんだろうか」


誰もいないバックヤードで、そんな独り言をぽつりぽつりと溢しながら、静かに夜が明けていった。


翌朝。

俺はストコンの発注画面を睨みつけながら、今日の仕入れの構成を考えていた。


「あ、からあげクンの新フレーバーが出てるぞ……。あいつ(リゼッタ)が来たらうるさそうだし、一応多めに仕入れておくか」


画面をスクロールしていく。


「おっ……この新商品のスイーツ、なんとなくアラクネが好きそうだな。……ま、まぁ、バイトの福利厚生ってことで、一個だけ仕入れておいてやるか」


──そこまで考えて、胸の奥がキュンと、妙な痛みを覚えた。


「なんだよ、俺……もしかして、本気で寂しがってんのか?」


俺は力いっぱい頭を振った。

違う。俺は好き好んで引きこもりをしていた男だ。一人でいることのプロフェッショナルだ。寂しいだなんて、そんな人間らしい感情を抱くはずがない。


「俺は……っ! 俺は一人が大好きなんだよぉぉぉーーーーーっ!!!」


誰もいない店内に、俺の魂の叫びが空しく響き渡る。


…………シーン。


返ってくるのは、冷蔵ショーケースの駆動音だけ。

そうだ。これでいい。俺は一人きりの静寂には慣れている。


俺は自分の心に生まれた寂しさを強引に吹き飛ばすように、届いたコンテナから商品を運び出し、黙々と棚への品出し作業に没頭した。手を動かしている間だけは、余計なことを考えずに済むから。


その時だった。


──ウィーン、ピロリオリーン♪


静かな店内に、軽快な入店音が鳴り響いた。


「いらっしゃいま……っ!?」


お弁当コーナーの棚にハンバーグ弁当を詰め込みながら、条件反射で自動ドアの方を向いた俺の身体が、完全に硬直した。


自動ドアの前に、立っていた。

銀色の髪を揺らし、小脇に、俺が発注してやった限定美少女の抱き枕をしっかりと抱き抱えたままの、蜘蛛の魔族の少女。


「店長……ただいま」


アラクネはそう言うと、ほんの少しだけはにかむように、ふにゃりと優しく微笑んだ。


その瞬間。

数日間、ずっと胸の奥におりのように溜まっていた重苦しい寂しさが、一瞬にして、信じられないほどの温かい感情で満たされていくのが分かった。


俺は、心の底からの笑顔を浮かべて、彼女を迎え入れた。


「……おかえり、アラクネ」

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