表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

銀の羽と忘却の街

本編に入ります

夜の帳が降りると同時に、北方の古都レティシアは死んだような静寂に包まれる。かつては魔法文明の恩寵を受け、不夜城とまで謳われたこの街も、いまや崩れ落ちた外壁と、主を失った石造りの館が並ぶ亡霊の住処に成り果てていた。


ルナ・ミストウォーカーの足音は、その静寂を乱すことさえない。彼女の纏う黒いレザーのコートは、特殊な魔導加工により周囲の音を吸い込み、視線を逸らす性質を持っている。彼女が歩くたびに、コートの裾が微かに翻り、そこから零れ落ちる影が、夜の闇へと溶け込んでいく。


「……ここね、ホークアイ」


彼女の囁きに応えるように、肩に止まったフクロウが小さく嘴を鳴らした。ホークアイの琥珀色の瞳は、人間には見えない魔力の奔流を捉えている。彼が見つめる先、かつての王立図書館の跡地には、歪な形をした魔力の渦が渦巻いていた。


ルナは腰のベルトに並ぶポーチの一つから、細長い銀の小瓶を取り出した。中には、かつてルナの家系が代々守り続けてきた「銀月の滴」が満たされている。ルナがその栓を抜くと、周囲の空気が一変した。凍てつくような冷気と共に、純白の魔力が溢れ出し、ルナの紫色の瞳をより一層鮮やかに染め上げる。


「夜明けを拒み、闇に沈んだのは私だけではない……この街も、あの日の真実も」


彼女の手のひらで、銀色の光が刃の形を成していく。それは物理的な凶器ではなく、凝縮された魔力そのもの。魔導師としての智略と、アサシンとしての冷徹な技が交差する瞬間、彼女の瞳の奥に宿る孤独な決意が、一閃の光となって闇を切り裂いた。


彼女の行く手を阻むのは、物理的な門扉ではない。過去という名の重い鎖。それを断ち切らぬ限り、彼女に訪れる夜明けはないのだと、彼女が纏う空気が物語っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ