表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したようなので好き放題やります。〜創造神とかいうチートを授かりました〜  作者: Rairo
第4章 ルミナス王国の確立

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/47

第36話_はい、準備完了と。

ルミナス大要塞、執務区画。


夜更けの廊下は静かで、遠くの灯りだけが石壁を淡く照らしていた。

その静けさを壊さないまま、扉が軽く叩かれる。


「入って」


アルトの声はいつも通り軽い。

だが、部屋の空気は張っていた。


入ってきたのはミュリエルだった。


「報告です」


差し出された紙束は薄い。

しかし、そこに詰まっているのは金と人の匂い――そして悪意だ。


クロウが受け取り、目を滑らせる。


「……やはり」


ミュリエルが淡々と続けた。


「グラント商会の資金が、ギルド周辺の複数の仲介を経由しています。

 買収対象は三つ。

 “事故役”の冒険者、

 “証言役”の商人、

 それと、ダンジョン内部で衝突を煽る案内人の類です」


アルトは机に肘をつき、少しだけ眉を上げた。


「露骨だね」


「露骨です」


ミュリエルは肯定した。


「ただし今回は、そこまで雑ではありません。

 噂の段階と違い、今回は『実際に起きたこと』に見せかける設計です」


クロウが静かに言う。


「つまり――“事故”ではなく、“事件”を作る」


「はい」


ミュリエルの声は平坦で、そこに恐れはない。

むしろ、結論が出た作業報告のようだった。


(陰の悪事は、彼女にかかればすぐ露見する)


アルトは改めてそう思う。

派手な力ではない。

だが、国を守る上で一番厄介な敵――“見えない手”に対して、ミュリエルほど頼れる者はいない。


「いつか分かる?」


アルトが聞く。


「明日のようです」


「なるほど」


アルトは軽く頷き、机の端に指を置いた。


「じゃあ――予定通りだね」


クロウが問い返す。


「予定通り、とは?」


アルトは笑った。


「相手が“事故を作る”ってことはさ、

 こっちは“事故が作れない仕組み”にするだけ」


「……仕組み?」


「うん。証拠が残る仕組み」


アルトは椅子の背に寄りかかり、天井を見上げた。


「ダンジョンって、特産物でしょ。

 だったら“品質管理”が必要じゃん?」


クロウは無言で頷いた。

アルトが言う“品質管理”は、普通のそれとは意味が違う。


「入退場、経路、戦闘、取引――」


アルトは指を折る。


「全部、記録してある」


クロウが目を細める。


「……最初からですか?」


「うん。作った時点で組み込んだ」


アルトは悪びれもせず言った。


「だってさ。運営するなら、ログが無いと困るでしょ」


淡々としている。

だが、それが一番怖い。


“事件を作る側”にとって、最悪の相手だ。


ミュリエルが一瞬だけ視線を動かす。


「しかし恐らく証言も、作られます」


「作らせればいいよ」


アルトは即答した。


「言った言わないは水掛け論。

 でも明確な記録は嘘をつかない」


クロウが低く言う。


「法と規約は既に整備済みです。

 虚偽申告、偽証、買収、暴力行為――

 すべて明確に違反として処理できます」


「うん」


アルトは頷いた。


「大事なのは、冒険者を巻き込まないこと」


そこだけ、声が少しだけ落ちた。


「悪意のない者たちにまで被害が出るのは、好きじゃない」


ミュリエルが言う。


「事故で使われる予定の冒険者たちは、全員把握しています。

 こちらで事前に保護可能です」


「助かる」


アルトは軽く礼を言った。


「巻き込まれる前に守る。

 仕掛けたやつは――」


一拍。


「徹底的に潰す」


言葉は静かだった。

けれど、その場の温度が一段下がった気がした。


クロウが続ける。


「今回の鍵は“誰が指示したか”です。

 末端を捕まえるだけでは意味がありません」


「そうだね」


アルトは、机の上の紙束を指で軽く弾いた。


「会頭まで、引っ張り出す」


まるで、当たり前のことを告げるように。


アルトは笑った。


「じゃあさ、こうしよう」


指先が机を叩く。


「相手には動いてもらう。

 でも、事故は起こさせない」


「作りかけた瞬間に、証拠だけを残させる」


クロウが理解したように頷く。


「自滅させる、と」


「そう」


アルトは軽く肩をすくめた。


「こっちが殴る必要ないよ。

 殴ろうとしてる手を、記録して、固定して、世に出すだけ」


それは、戦いですらなかった。

処理。

そして裁定。


ミュリエルが一礼する。


「引き続き監視を。

 動きがあれば即時報告します」


「うん頼んだよ」


彼女が去ると、部屋にはアルトとクロウだけが残った。


クロウは小さく息を吐く。


「……相手は、気づいていませんね」


「気づいてないから、来るんだよ」


アルトは窓の外を見た。

大要塞の灯りは落ち着き、街の灯が遠くに揺れている。


「グラント商会は、金で世界を回してきたんだろうね」


一拍置いて、アルトはいつもの軽い調子に戻った。


「でも――ここは違う」


「この国は、必要なものは自分で作る。

 余計なものは、いらない」


クロウが静かに言う。


「では、次に起きるのは――」


アルトは笑った。


「事故じゃない。

 “失敗”だよ」


その言葉が落ちた瞬間、部屋の静けさが、妙に気持ちよく感じられた。


準備は、もう終わっている。

あとは――相手が踏み込むのを待つだけだ。

※ここまで読んでくださってありがとうございます。

もし続きが気になりましたら、

ブックマーク・評価で応援いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ