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転生したようなので好き放題やります。〜創造神とかいうチートを授かりました〜  作者: Rairo
第4章 ルミナス王国の確立

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第35話_効かないなら、壊せ

グラント商会の本部は、ハルディア王国の中心にあった。

石造りの外観は一見すると堅実な商館だが、

その中で動く金と情報の量は、一つの王国に匹敵する。


副会頭レイヴンは、帳簿と報告書の束を机に広げていた。

噂の流れ、商人の動き、冒険者の入退場――数字は嘘をつかない。


「……効いていないな」


隣に控えた部下が、言葉を選びながら答える。


「はい。確かに一時的に取引を保留した商人は出ましたが、戻り始めています。

冒険者の流入も大きくは落ちておりません。

ダンジョンの稼働率も維持されています」


レイヴンは指で机を軽く叩いた。


「雑に見える動きでも、普通の国なら揺れる。

だがルミナスは――」


紙面の数字に、細い線を引く。


「揺れない。最初から土台が違う」


噂に踊らされる者はいる。

しかし、それ以上に“現場の実利”が強かった。


ダンジョンは稼げる。

冒険者は満足している。

商人は利益を知ってしまった。


「……会頭に報告する」


部下が一瞬、表情を固くした。


「今、ですか」


「今だ」


レイヴンは立ち上がった。


――――――


会頭室は、贅を尽くしているわけではない。

だが無駄が一切ない。

見えるのは、整然と並ぶ書類と、壁一面の地図、

そして机の向こうに座る男の存在感だけ。


グラント商会会頭、ガルヴィス。


彼は顔を上げもせず、淡々と言った。


「で?」


レイヴンは一礼し、報告書を差し出す。


「ルミナス王国への揺さぶりですが、効果が薄い。

噂は流れましたが、稼働率も流通も大きく崩れていません」


ガルヴィスは報告書に目を落とし、数秒で読み終えた。


「つまり」


一言だけ、落ちる。


「失敗だな」


「……はい」


「で、次は?」


レイヴンは息を整えた。


「正面からは拒絶されました。

間接も効きにくい。土台が固い。

なので――もう一段、踏み込む必要があります」


ガルヴィスはペンを置いた。


「まだ“揺さぶり”などと言っているのか」


視線が上がる。

冷たいというより、温度がない。


「効かないなら、壊せ」


レイヴンは、微かに眉を動かした。


「……露骨に、ですか」


「あぁそうだ」


ガルヴィスは当然のように頷く。


「噂は“信じたい者”にしか効かん。

だが事件は違う。誰の目にも残る」


「ルミナスの弱点は何だ?」


レイヴンは即答した。


「評判です。

安全、管理、信頼――それが土台になっている」


「なら、そこを折る」


ガルヴィスは指を一本立てた。


「事故を作れ」


「事故……」


「ダンジョン内で死人が出た。

管理が甘い。運営が危険だ。

そう言える状況を“用意”しろ」


淡々とした口調で、吐き捨てるように続けた。


「冒険者同士の衝突でもいい。

規約違反の取引でもいい。

『ルミナスが止められなかった』という形にしろ」


レイヴンは数瞬、沈黙した。


噂とは違う。

これは一線を越える。


だが、この商会はそういう組織だ。

利益のためなら、線など最初から引かない。


「承知しました」


「もう一つ」


ガルヴィスは指を二本目に立てた。


「証言を買え。被害者を作れ。

ギルドに正式に抗議が届くようにしろ」


「さらに、商人の方にもだ。

『取引停止』をちらつかせろ。

ルミナスの流通が詰まれば、あの王も動かざるを得ない」


レイヴンは胸の奥で、冷たいものが滑るのを感じた。


(早い。決断が…容赦が無い)


だが同時に思う。


(これが会頭だ)


「最後に」


ガルヴィスは椅子の背に軽く寄りかかった。


「これでも動かないなら――」


言葉を切る。


「次は、奪う」


それ以上は言わなかった。

言わなくても分かる。


国を。ダンジョンを。

あるいは王そのものを。


「行け」


命令は短い。


「結果だけ持って来い」


――――――


同じ頃。


ルミナス大要塞の執務区画で、ミュリエルは暗い廊下を歩いていた。

歩幅は小さく、音も立てない。

だがその目は、研ぎ澄まされている。


彼女の手元には、薄い紙束。


表向きはただの請求書の写し。

だが、そこに紛れた数字と署名が示しているのは、別の動きだった。


「……妙ですね」


小さく呟く。


短期間で、金が動きすぎている。

冒険者ギルド周辺。

そして、ルミナスへ向かう物資の出入り。


「噂の流れではない……」


ミュリエルは目を伏せた。


「人を動かす準備です」


彼女は扉を軽くノックし、すっと執務室へ入った。

クロウが顔を上げ、アルトも視線を向ける。


「ミュリエル?」


「報告です」


彼女は紙束を差し出した。


「グラント商会。

次は“揺さぶり”の域を超えています」


アルトの表情が、ほんの少しだけ変わる。


「……大胆に来る?」


「ええ」


ミュリエルは淡々と言い切った。


「事故を作るつもりです。

ダンジョンで、何かを起こします」


ミュリエルは、整った顔立ちのまま、冷たく言った。


「準備が始まっています」


アルトは椅子に背を預け、軽く息を吐いた。


「……やっぱりね」


軽い声。

だが、目は笑っていない。


「じゃあ――」


アルトは指先で机を叩く。


「こっちも、準備しようか」


静かな部屋に、その言葉だけが落ちた。


次に起きるのは、噂ではない。

誰かの人生が、巻き込まれる“事件”だ。


そしてそれは――

金の論理が、表に出てくる合図だった。

※ここまで読んでくださってありがとうございます。

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