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転生したようなので好き放題やります。  作者: Rairo
第3章_素性を隠して、冒険者やります

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20/20

第20話_ローディア森林は、静かすぎた。

ローディア森林は、想像していたよりも開けていた。


木々の間隔は広く、下草も短い。

街道からそれほど離れていないため、

定期的に冒険者や猟師が入っているのだろう。


「……確かに、初心者向けって感じだな」


俺は小さく呟きながら、森の中を進んでいく。


足元の土は踏み固められ、

獣道とも街道とも言えない中途半端な道が続いている。


(この感じだと、普通は――)


ゴブリンが一、二体。

運が悪くて五体ほど。


それが、この森の“相場”のはずだ。


耳に魔力を集める。


風の音。

木々の擦れる音。

遠くで鳥が羽ばたく音。


……強力な魔物の気配は、近くには無い。


「……ん?」


だが、違和感はあった。


臭いだ。


湿った土と、森の匂いに混じって、

微かに鼻を刺す――鉄臭さ。


(血の匂い?)


しかも、新しい。


獣が狩られたというより、

何かが集団で動いた跡に近い。


俺は歩調を落とし、視線を巡らせる。


倒れた低木。

折れた枝。

無秩序に踏み荒らされた地面。


(数が多い……)


その時。


――ガサリ。


右前方、茂みが揺れた。


「……来たか」


最初に姿を現したのは、ゴブリンだった。


小柄で、痩せた体。

錆びた短剣を握り、

ぎょろりとした目でこちらを見ている。


一体だけではない。


左右、背後。


合計、六体。


「……多いな」


だが、まだ想定内だ。


俺は腰を落とし、構えを取る。


剣は使わない。


今回は、動きの確認だ。


一体目が、奇声を上げて突っ込んでくる。


遅い。


踏み込み、体を半身にずらし、

肘を叩き込む。


鈍い音。


ゴブリンが地面に転がる。


二体目、三体目。


連携……は、ない。


だが――


「……?」


違和感。


後方の二体が、

距離を取って動かない。


逃げない。

突っ込まない。


待っている。


(指示?)


四体目を倒した瞬間。


――笛の音。


短く、鋭い。


次の瞬間、

奥の茂みから新たな影が現れた。


「……装備が違うな」


体格が一回り大きい。


革鎧。

槍。


動きも、明らかに“兵士寄り”だ。


(ゴブリン兵……いや)


俺は目を細める。


「兵長クラス、か」


通常、こんな場所に出る個体じゃない。


しかも――


そいつは、俺を見て笑った。


知性のある笑み。


(……おかしい)


兵長が槍を振るう。


直線的だが、力はある。


俺は受けず、

足を払って転ばせ、

首元に掌底。


一瞬で意識を刈り取る。


周囲が、静まり返った。


残っていたゴブリンたちは、

一斉に森の奥へと逃げ出す。


「……逃がした、か」


だが、追わない。


理由は一つ。


逃げ方が、綺麗すぎる。


(統率されてる)


俺は周囲を見回す。


戦闘時間は、数分にも満たない。


それなのに――

森が、妙に静かだ。


鳥が鳴かない。

虫の音が消えている。


まるで、

何かを警戒しているように。


(この森、何かいるな)


ゴブリン討伐。


それ自体は、もう達成している。


だが、依頼内容と、

実際の状況が噛み合っていない。


(数が多い)

(階級個体がいる)

(統率されている)


そして何より――


(“奥に集めてる”)


俺は、森のさらに深部を見る。


ローディア森林は広くない。


にもかかわらず、

この地点まで、

“本命”が出てきていない。


「……なるほど」


嫌な予感が、確信に変わりつつあった。


これは偶然じゃない。


誰かが――

意図的にゴブリンを集めている。


俺は一度、踵を返した。


「今日は、ここまでだな」


無理に踏み込む理由はない。


Fランク冒険者としては、

すでに十分すぎる成果だ。


だが。


森を出る直前、

背後から――


視線を感じた。


振り返る。


当然、何もいない。


だが、確かに。


“見られていた”。


(……王、ね)


あの兵長ゴブリンの目。


あれは――

下位が、上位を見る目だった。


ローディア森林。


ここはもう、

ただの初心者向け狩場じゃない。


そう確信しながら、

俺は街への帰路についた。


この森の“本当の顔”を見るのは、

次の依頼になりそうだ。


――底辺冒険者、アルトとして。

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