第10話_国を作るって、何をすればいいんだ?
国を作る。
口に出してみると、ずいぶん大それたことを言った気がする。
「……で?」
玉座に座ったまま、俺は素直な疑問を口にした。
「国って、何すりゃいいんだ?」
一瞬の沈黙。
フィオナは目を瞬かせ、
ノクス・ガルムはゆっくりと首を傾げた。
「……主様?」
「いや、ほら。勢いで言ったけどさ。
国って言われても、正直ピンと来てないんだよね」
前世は一般人だ。
「王になる=偉い、くらいの認識しかない」
我ながら酷い。
だが、ノクスは不思議そうにしつつも、真剣な表情で答えた。
「国とは……主を中心に、人と土地と法が集まる場所です」
「ふむ」
「守るべき領域があり、従う者がいて、
主が“ここに在る”と宣言する。それだけでも、国は成立します」
意外とシンプルだった。
フィオナも一歩前に出る。
「アルト様には、もう全部ありますよ」
「そうなの?」
「はい。
拠点はルミナス大要塞。
土地は禁域の森全域。
従う者は……」
彼女はノクスを見る。
ノクスは胸に手を当て、静かに頭を下げた。
「この身、この森、この魔物たち。
すべて、主様の意思ひとつで動きます」
……あれ?
もしかして俺、
もうとっくに国を作る準備できてる?
「じゃあさ」
俺は少し考えてから言った。
「足りないのって、名前くらいじゃない?」
二人の視線が集まる。
「国の名前」
ああ、やっぱり。
一番大事なところだ。
「……うーん、どうしようかぁ」
悩んでいると、ノクスが一歩踏み出した。
「主様。
もし差し支えなければ、提案がございます」
「どうぞ」
「この国は、主様の力によって生まれました。
主様による守護と統治の国。
であれば――」
ノクスは一瞬だけ目を伏せ、そして告げた。
「《ルミナス》の名を冠するのはいかがでしょうか」
確かに要塞の名でもある。
統一感はあるな。
「ルミナス王国、とか?」
口にしてみる。
悪くない。
むしろ、かなりいい。
「うん。採用」
即決だった。
フィオナが目を丸くする。
「即決ですか!?」
「名前って、悩みすぎるとろくなことにならないから」
前世の経験談だ。
「じゃあ宣言しようか」
俺は玉座に深く座り直した。
背筋を伸ばし、視線を前へ。
「ここに、ルミナス王国の成立を宣言する」
言葉にした瞬間。
玉座の間が、静かに震えた。
魔力の流れが変わり、
要塞全体が“理解した”ような感触が伝わってくる。
「……おお」
ノクスが息を呑む。
「主様の言葉が、世界に刻まれました」
「マジで?」
どうやら、ただの宣言じゃなかったらしい。
フィオナが小さく笑った。
「もう後戻りできませんね、アルト様」
「望むところだよ」
どうせ好き放題やるんだ。
だったら、最後までやる。
「ノクス」
「はっ」
「最初の仕事だ。
この森にいる連中に伝えてくれ」
俺は笑って言った。
「国ができたってさ。
それと――」
一拍置いて、続ける。
「ここは、安心して暮らせる場所になるって」
ノクスは深く頭を下げた。
「必ず」
ルミナス大要塞の最下層。
玉座の間で。
俺は確かに、王として一歩を踏み出した。
――好き放題やる。
でもそれは、
誰かの居場所を壊すためじゃない。
守るための、好き放題だ。
10話到達!!
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