潤いのサーバー
最終エピソード掲載日:2025/08/19
都心のマンションに一人で暮らす隆(たかし)は、「天然アルプスの奇跡の水」と謳われるウォーターサーバーを契約する。癖のないまろやかな水は非常に美味しく、隆はすっかりその水を気に入った。しかし、飲み始めて一週間が過ぎた頃から、奇妙な現象が起き始める。誰もいないはずの深夜に、サーバーの注水レバーが「ガコン」と下がる音がする。そして毎晩、深い井戸の底から何者かに見上げられるという同じ悪夢にうなされるようになった。不審に思った隆がサーバーの会社について調べると、採水地とされている山村で、数十年前に住民が集団で失踪する事件が起きていたことを突き止める。その村には、神への生贄を井戸に捧げるという古い風習があった。サーバーの水は、その呪われた井戸から汲み上げられていたのだ。解約を申し出ても「お客様の体は、もう我々の水で満たされていますから」と電話口で不気味に笑われるだけ。隆は、自分の体内の水分が、井戸に沈んだ無数の怨念と入れ替わっていく恐怖を感じ始める。